コロナ禍を経て加速したテレワークや巣ごもり需要など、生活者のライフスタイルの変化に伴い、これまで以上に、インターネット環境に対する関心や課題が高まりつつある昨今。特に、5G (第5世代移動通信サービス)は、次世代の通信インフラとしての大きな技術革新と、私たちの生活の利便性向上が期待されていますが、電波の特性上、住宅やオフィスなどの屋内に効率的に電波を届けることが難しく、利用が進んでいないのが現状です。
そんななか、大東建託のDX推進部は、管理する賃貸建物の入居者さまのさらなる利便性向上に向けて、5G電波を屋内に引き込み、室内での高速通信を可能にする実証実験を開始しました。今回は、その具体的な取り組みをご紹介します。
5Gは屋内で通信環境が不安定になることが課題
企業や社会インフラにおけるDX実現の基盤として注目される無線通信規格、5G (第5世代移動通信サービス)。「高速大容量」「低遅延通信」「多数同時接続」といった通信性に優れている一方で、1つの基地局がカバーできる範囲がせまく、電波の直進性が高いのが特長です。そのため、外壁や窓ガラスなどの障害物があると電波が減衰しやすく、電波の届きにくい屋内では通信環境が不安定になることから、建物内での5G電波の利用は難しいとされてきました。
テレワークの利用者増で求められる、安定した自宅のネットワーク環境
“賃貸の未来”に向けた調査・研究を行う大東建託のシンクタンク「賃貸未来研究所」が2022年11月に発表した、「第7回 新型コロナウイルスによる意識変化調査」によると、コロナ以降も引き続きテレワーク利用を希望する人は全体の約4割に上り、そのなかでも、持ち家より賃貸入居者のほうが多いことが分かっています。コロナ禍以降に増加したテレワーク利用は、今後も継続されていくことが予想され、自宅にも安定したネットワーク環境が求められています。
こうした背景から、入居者さまのインターネット利用のニーズやライフスタイルに合わせたサービス拡充のため、5G電波の減少防止を目指し、首都圏エリアにある管理建物の住戸を使ったネットワーク構築の実証実験を開始することとなりました。
大東建託が2016年7月より提供している、通信速度最大2Gbpsの高速無料インターネットWi-Fiサービス「DK SELECT ネットサービス」。サービス対象の建物では、入居後すぐに無料で部屋に備え付けの無線LAN機器を使い、インターネットをいつでも利用することが可能です。また、既存の管理建物についても、サービス提供に向けた導入工事を順次進めており、サービスを利用できる賃貸建物を増やしていくことで、入居者さまの暮らしの利便性向上につなげていきます(画像:設置されたインターネット機器の一例)。
電波の減少を防ぐため、5G電波を直接引き込むことに成功
実証実験にあたっては、有線LANケーブルを用いてバルコニーに設置した機器「ODU(無線LANとアンテナが一体化した屋外ユニット)」から、室内側の機器「IDU(無線LANとアンテナが一体化した屋内ユニット)」に、5G電波を直接引き込むことで、建物による電波の減少を防ぎ、室内で5G電波をWi-Fi利用できるようにしました。
商用利用や量産化に向けて、屋内外の5G電波の通信速度の比較
また、屋内外の5G電波の通信速度を比較することで、電波減衰の影響も調査。将来的な商用化も見据え、検証には受信する電波改善の他、商用利用が可能な機器構成や量産化の検討なども段階的に行っており、第1段階の導入シーンを想定した機器設置工事と商用機器の動作を確認しました。
第1段階/実証実験1
実施時期 | 場所 | 実証内容 |
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2021年12月 | 神奈川県横浜市の当社管理建物 | 5G基地局に近い当社管理建物で仮組の機器構成(検証用5G電波受信装置)により5G電波を受信し、電波減衰対策の有効性を確認 |
第1段階/実証実験2
実施時期 | 場所 | 実証内容 |
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2022年10月 | 社宅利用する当社管理建物 | 検証用の技術基準適合認定取得後、商用構成の機器(5G電波受信装置)を用いて実入居者(当社グループ社員)による実証実験を実施し、商用機器の動作を確認 |
時代の変化に合わせた、暮らしの利便性と価値提供を目指して
DX推進部は、これまで「オンライン・セルフ内覧」や「家賃AI 審査」「入居者さま向けプラットフォーム『ruum(ルーム)』などを導入し、これからの日本が目指すデジタル社会に合わせたビジネスの変革を推進してきました。今後も、時代の変化に合わせた入居者さまの暮らしの利便性向上と、これまでにない新たな体験・価値を提供を目指します。
※DX認定制度