PROFILE この記事の登場人物
遠藤 勇紀 事業戦略部(大東建託)
学生時代から新規事業の立ち上げを経験し、以降「社内新規事業」の立ち上げに特化したキャリアを歩む。2023年4月に大東建託へ中途入社。イノベーションリーダーとしてミライノベーターの運営に携わり、社内起業家を目指す社員の伴走を支援する。事務局としての活動の傍ら、オープンイノベーションによる新規事業の立ち上げにも取り組んでいる。
現在、多くの企業が社内起業制度を導入し、新規事業の創出を加速させています。大東建託グループの全社員が参加できる「ミライノベーター」は、社員の新規事業アイデアをていねいにサポートし、成長を促す社内ベンチャー制度。
その伴走メンバーとしてイノベーションリーダーを務めているのが、事業戦略部の遠藤勇紀。創設から4年の活動を振り返りながら、ミライノベーター制度の特徴や成果を生み出すための仕組みづくり、今後実現したいことについて伺いました。
(本メディアのリニューアルに伴い、2024年11月30日に編集しています)
毎年応募件数は100件超え。30〜40代中堅層も積極的に参加 する、全社員に開かれた挑戦の舞台
──そもそも大東建託グループの「ミライノベーター」とは、どのような制度なのでしょうか?
2点目の特長は、『社内にいながら別のキャリアプランを立てられること』。ライフステージが変化していく過程で、応募者は当社グループに所属しながらも新たな可能性をひらける。こうした社員の成長によって、会社も成長できる仕組みになっているんです」
社員の “やりたい!”を喚起する、盤石なバックアップ・マネジメント体制
──100件超えの応募数を維持するための工夫として、運営事務局ではどのような取り組みを行なっているのでしょうか?
遠藤「最終審査を通過した際の賞金や事業化後の利益分配といったインセンティブ※を提供し、エントリーへの動機づけを行なっています。さらに、当社独自の支店評価制度である『みなし評価』にミライノベーターの評価を連携させることで、新規事業に挑戦する社員の頑張りが支店や事業部でもしっかりと評価される仕組みを整えています。これにより、応募者を取り巻く他の社員も少しずつですがミライノベーターを前向きに受け入れてくれるようになり、社員が新規事業の提案に割ける時間と環境も確保されてきました。
また、サポートの際に最も大切にしているのが、応募者との相互コミュニケーションです。
例えば、ミライノベーターの制度を紹介するセミナーなどに参加した社員に対して個別に相談会を実施し、
『なぜミライノベーターに興味を持ったのか』
『どんなアイデアを持っているのか』
『エントリーに踏みとどまっている場合、その理由は何か』
といったことをヒアリングしています。こうしたコミュニケーションを通じて、応募者の潜在的な思考を整理・可視化し、応募へのモチベーションアップを図っています」
──モチベーションマネジメントまでやっているのですね。
「はい、事業創出には “やりたい!”という強い思いが不可欠ですからね。他にも、社内起業家の育成を目的としたワークショップの開催や、外部の事業立ち上げの専門家に相談ができる事前相談会の実施などをしています。ワークショップでは、経験者である事業オーナーが経験したエピソードを応募者に直接共有するので、新規事業開発キャリアの可能性を体感することができるんですね。
また、最終審査通過後には社外メンターを伴走者として迎え入れ、事業性と市場性を判断しながら実証実験を進めます。このように、社内外の支援で、応募者が着実にステップを踏めるようなバックアップ体制を整えているんです。
イノベーションが生まれやすいカルチャーを目指す。
──2024年2月に公募を開始した第6回目のミライノベーターでは、当社グループの主力事業である「建設・不動産、生活インフラや暮らしサービス」に特化した大規模な事業案の募集をされています。このテーマに至った背景や、ミライノベーターを通じてどのような未来を見据えているのか教えてください。
「まず、『新しい利益を生み出す事業を創ること』は、当社グループが総力を上げて取り組むべき事柄であり、『ミライノベーター』でも一貫して意識してきたことです。これを踏まえ、第5回までは特定の領域に限定せずアイデアを募集してきました。これにより、多様な社員が積極的に参加してくれて、それぞれの得意分野を活かし、アイデアの幅が広がる機会になりました。またその結果、社内で一定の認知を得ることができたと考えています。
第6回となる今回は、さらなる飛躍に向けたフェーズとして、レベル一段を引き上げ、アイデアの質をこれまで以上に向上させていく必要があると考えています。そのためには、当社グループとのシナジー(相乗効果)が見込まれる事業領域や資源に注力し、より早く、より大規模な事業創出を推進していくことが求められます。
こうした背景から、当社グループの本業をより強固に、あるいは拡大するアイデアを募集したいと考えたんです。応募者はこれまでの業務経験を活かした提案ができるはずなので、当社グループのリソースを最大限に活かした、より質の高いアイデアがたくさん生まれることを期待しています。
第6回目では、セミナーの運営を見直し、量と質の改善にも取り組む予定です。例えば、応募期間中のみだったセミナーを年間通じて運営し、新規事業を考えるために必要なスキルを体系的に学べるようにする予定です。こうした学びの場を提供することで、社員の自発的な行動を促していければと思っています。
また、ビジネスの基本スキルをコンテンツ化して提供することは、社員のスキルの底上げにもつながります。今後は人事部とも連携を図りながら、新規事業に挑戦できる人材が育つ土壌を作り、ミライノベーターに参加してくれる積極的な社員を増やしたいと考えています。さらに、この見直しに合わせて、ミライノベーターのリブランディングも進める予定です。社内の制度改善だけでなく、社内外に向けた情報発信を強化していく予定で、専用のWebサイトの準備も進めています。ミライノベーターの活動や成果を積極的に発信し、より多くの人々に知ってもらうことで、社員の意識向上にもつなげたいですね」
「新規事業の創出によって、今後5年間で会社の柱となる事業を創っていきたい」 と話す遠藤さん。 目標に向けて、今後も貪欲にミライノベーターのレベルアップを追求する姿勢を見せてくれました。
「『あなたも社長になれる!』がキャッチコピーの『ミライノベーター』は、当社グループの事業をさらに推進するために、社員が事業を興せる制度です。2020年の導入以降、これまでに5回実施してきましたが、毎回応募件数は100件超え、延べ約10%の社員が参加済みで、社内外で注目されています。なかでもこの制度には大きな特長が2つあり、1点目は『応募者の多くが中堅社員であること』が挙げられます。一般的に、このような制度は現状を打破したいと考える若手社員の参加率が高いように思いますが、当社では30〜40代の応募者が多いんです。これは、当社グループの『挑戦する』という企業文化が社員に根付いているからかもしれません。