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住まいと暮らし

家賃上昇、空き家問題、年収1,500万超のパワーカップル 〜賃貸住宅ニーズ最前線を賃貸未来の研究者が語る〜

2024.12.02
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家賃上昇、空き家問題、年収1,500万超のパワーカップル 〜賃貸住宅ニーズ最前線を賃貸未来の研究者が語る〜

PROFILE

宗 健

宗 健 麗澤大学教授 博士(社会工学・筑波大学) ITストラテジスト/賃貸未来研究所 フェロー

1965年北九州市生まれ。1987年九州工業大学工学部卒業、株式会社リクルート入社。通信事業部、求人系インターネットサービス企画マネジャー、ForRent.jp編集長、ISIZE住宅情報編集長、R25式モバイル編集長などを経て、2006年株式会社リクルートフォレントインシュア代表取締役社長。2012年リクルート住まい研究所長、2018年7月大東建託株式会社賃貸未来研究所長、2020年4月AI-DXラボ所長(兼担)、2021年4月麗澤大学客員教授を経て、2023年4月より麗澤大学教授、大東建託株式会社賃貸未来研究所フェロー。

消費者物価指数は上昇を続け、賃貸・分譲住宅・マンションの価格も高騰し続けています。決して好景気なムードではないはずなのに、賃貸住宅は高価格物件のニーズが高まっているといいます。大東建託 賃貸未来研究所フェローの宗健さんに、最近の賃貸住宅事情を聞きました。

この記事のポイント
  1. 慢性的な賃貸住宅不足により家賃が上昇
  2. 住まいの快適さを求めて、賃貸・持ち家ともに支出を惜しまない傾向に
  3. 1人暮らし世帯の増加を踏まえ、高齢でも借りやすい賃貸住宅の整備が課題

物件探しで必ず言われる「今決めないと物件がなくなる」の真実とは……?

宗 健(そう・たけし) :麗澤大学教授 博士(社会工学・筑波大学) ITストラテジスト/賃貸未来研究所 フェロー(大東建託)

なぜ住宅不足に陥っているのでしょうか。

「人口は減っていますが、世帯数は増えている。だから住宅需要も増え続けているんです。不動産屋に部屋を借りに行ったとき、『今決めないとなくなりますよ』と言われたことがあるかと思いますが、大げさではなく本当になくなるんです」

人口と世帯数が反比例しているのは、1人世帯が増えているということですよね。

「そうです。人口も1世帯当たりの人数も減っているのに、多くの地域で世帯数が増えている理由はそこにあります。その結果、1人あたりの居住面積が増えて、求められる間取りも広くなって、世帯あたりの支払い家賃も上がっています。今は1人世帯でも最低25平米の広さがないと厳しいですね」

物価高でも、家賃は妥協しない方が多いんですね。

「この20年間で、日本人の平均年収が減少していると言われていますが、これも平均という数字のマジックに惑わされているからなんです。年金受給者が増えているから、全体の平均年収が下がるのは当たり前で、20代・30代と年代ごとに比較すると、むしろ上昇傾向です。若い世代の給料は上がっていますからね」

年齢階級別賃金(男女計)

年齢階級(歳) 2021年 2022年 2023年
20〜24 213万1千円 218万5千円 224万6千円
25〜29 246万2千円 251万2千円 258万3千円
30〜34 275万8千円 281万千円 286万円
35〜39 305万円 312万5千円 314万8千円
出典:令和3年賃金構造基本統計調査令和4年賃金構造基本統計調査令和5年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)から作成

「特に都市部では、若い世代の自動車の保有率も下がっていますから、家にお金をかけるようになって、家賃の絶対額もじりじりと上がる。それは統計にも表れています。不動産情報サービスの『アットホーム』の調査によれば、東京23区における賃貸マンションの家賃は、シングル向き(30㎡以下)・カップル向き(30〜50㎡)・ファミリー向き(50〜70㎡)がいずれも2015年1月以降で最高値を記録していることが分かっています(2024年8月時点)。また、今勢いのある福岡でいうと、古くて安い物件はガラガラで、新築はすぐに契約が決まります。今の若い人たちで、『快適性が低くても家賃が安ければいい』という人は少なくなっている印象がありますね」

世帯年収1,500万円以上のパワーカップルは購入派が多い? 経済力や価値観から見える住宅ニーズの違い

収入が増加したことによって、分譲住宅・マンションの購入も増えているのでしょうか。

「増えていますね。特に共働きで世帯年収が1,500万円以上のパワーカップルは、持ち家のほうが快適だからと購入している人が多いです。一方で未婚率も高まっていて、未婚者は賃貸住宅に住み続ける人が多いので、賃貸の需要も堅調に推移しています」

パワーカップルのニーズはどういう地域に多いのでしょうか。

「東京でいえば、千代田区・中央区・港区の中都心3区、加えて渋谷区・目黒区・品川区・世田谷区など、城南と呼ばれる地域が多いです。その延長線上で、神奈川方面だと東横線沿線、みなとみらい、鎌倉。千葉方面は浦安、埼玉方面は浦和と、昔から高所得者が多く住んでいる地域です。所得によって住む場所が決まっちゃっているんですよね。だから同じ若い世代でも、パワーカップルと、そうではない若い人たちとでは社会が分断されている傾向が見られます。年々、多様性(ダイバーシティ)が重視されていますが、住まいのダイバーシティ化は進んでいないんです」

世帯年収1,500万円以上のパワーカップルは購入派が多い? 経済力や価値観から見える住宅ニーズの違い
東京23区にパワーカップルが集中するワケ

東京23区の新築マンションの平均価格がバブル期を超えた要因の一つは、高年収の共働き夫婦が多いことです。特に、年収1,000万円以上で両方が大卒の「パワーカップル」が集中しています。この傾向は、社会的習性によるもので、居住地域における人々の属性が不動産価格に影響を与えています。

東京の街は〈多様化〉が進むけれど、住まいは〈分断〉が進む…東京23区にパワーカップルが集中するワケ【専門家の助言】)
宗 健(そう・たけし):麗澤大学教授 博士(社会工学・筑波大学) ITストラテジスト/賃貸未来研究所 フェロー(大東建託)

なぜ分断化が進んでいるのでしょうか。

「ダイバーシティ化が声高に叫ばれているとはいえ、本音としては、自分と同じような人たちが住んでいる場所に住みたいんですよね。だから所得の高い人たちは、所得の高い人たちが住む所に住む。逆もしかりで、自分と同じような属性の人たちが住んでいる場所を自然と選ぶ。それは変えがたい現実です」

家賃が安くて住みやすい地域でも、高所得者がそこに流れるのは難しいんですね。

「都心で家賃や物価が安くても、治安の面で不安な地域もあります。例えば世田谷は金銭的な面でコスパが低いといわれていますが、別の見方をすると、教育のコスパはすばらしいんです。そういう場所で子どもを育てたいのが親心ですよね。もうすでにほぼ解消されていますが、世田谷は教育にいいから、子育て世帯が集まって、待機児童がどんどん増えていったという過去もあります」

加速する高齢化社会を見据えて、住宅メーカーにできることとは

賃貸の未来を研究されている立場として、今注目している問題があればお聞かせください。

「大きな社会問題になっているのが高齢者の住居です。例えば、1人暮らしの高齢者がアパートの立ち退きを迫られたとします。アパートが解体されて新築マンションが建っても、その高齢者は高い家賃を払えないから部屋を借りることができない。でも古いアパートはどんどんなくなっているので、次に借りる物件を探すのも一苦労です」

65歳以上の1人暮らしの者の動向

その問題を解決するのは難しいのでしょうか。

「難しいですね。高齢者が部屋を借りられない大きな理由が『借地借家法』です。一般的に知られていないのですが、賃貸借契約は相続されます。お年寄りが亡くなったとき、借りていた部屋も相続されるので、相続人全員を探し出して、全員から解約通知をもらう必要があります。厳密にいうと、相続手続きが終わらない限り、その部屋には大家さんでさえ指一本触れられない決まりがあるんです。保証人がいない高齢者の方に部屋をお貸ししない不動産会社もあります。そういう制度のひずみは、不動産屋が悪いわけではなく、法律に基づいた問題なので、借地借家法を改正しない限り是正されないんですよね。高齢者の賃貸住宅問題は今のところ解決の糸口はなかなかつかめていませんが、これからも業界全体で考えていくことが必要です」

大東建託が「賃貸住宅に強い建設会社年間完工数ランキング2024」で1位獲得

週刊全国賃貸住宅新聞(2024年6月24日発行号)で発表された、「賃貸住宅に強い建設会社ランキング」の大手ハウスメーカー部門において、4年連続となる第1位を獲得しました。

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