
PROFILE この記事の登場人物

松下 紗也 東大阪工事部(大東建託)
大学で建築環境デザインを学んだ後、2016年に大東建託の横浜支店へ入社。3年後に故郷の大阪へ戻り、鶴見支店、大阪支店、南大阪支店に勤務。取材時は、RC5階建て65戸の集合住宅を担当。愛猫との2人暮らし。

山口 恵望華 世田谷工事部(大東建託)
大学の土木学科で構造や土質力学などを学んだ後、2019年に大東建託へ入社。1年目から現在まで世田谷支店に勤務。取材時は2×4の3階建て木造物件を担当。実家で両親と愛犬と暮らす。
大東建託は、「ジェンダー平等」「多様な人材の活躍」「働き方改革」「ワーク・ライフ・バランス」を主軸にDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)推進に取り組んでいます。男社会といわれている建設業界において、いわゆる現場監督と呼ばれる建物の施工管理を担当する職種にも、女性が就き始めています。本記事では、実際に施工管理として活躍する2名の女性社員に、働きがいやプライベートと仕事の両立などについて聞きました。
Diversity(多様性)、Equity(公平・公正性)、Inclusion(包括性)それぞれの頭文字を取った言葉。性別や年齢、出身地や価値観などの違いを認め合い、一人ひとりが最大限に能力を発揮できている状態を指します。
忙しく働きながらもプライベートを充実させて、オンもオフもパワフルに
まずは、お二人が建設業界に飛び込んだ理由や普段の業務内容、プライベートの過ごし方など、施工管理の基本的なことを聞いてみました。
お二人が大東建託へ入社した決め手は何だったのでしょうか?

「私は、建物の完成までを最初から責任を持って見届けられるような仕事がしたいと思い、建設業界を志望しました。大学時代の友人たちはゼネコンを志望する人が多かったのですが、ゼネコンでは建設の最初から最後まで関わることが難しいと思ったんです。私はコンクリート研究室の出身。大東建託は木造建築がメインではあるものの、一部コンクリート造も取り扱っているので、学んだことが生かせるかもしれないと思ったのも入社動機のひとつです」


現在就いている施工管理は、入社当初から希望していた職種なのでしょうか? 施工管理とはどんな仕事なのか、簡単に教えてください。

「そうですね。入社時から施工管理として独り立ちすることを目指して工事課に配属されました。最初は先輩の下で仕事を学び、3年目から担当の物件を1人で任されています」

「私も入社の時点で施工管理を希望していました。2年目の半ばぐらいのタイミングで初めて自分が担当する物件を割り当てられました」

「施工管理の仕事は、建築物が完成するまでの工程・品質・原価・安全を管理する仕事です。本当にいろいろな業務があるのですが、1日の動きはだいたいこんな感じでしょうか」
施工管理のある日のスケジュール
8:00 | 朝礼(職人さんへの安全指示や工程の説明)、現場内の確認(安全設備や工程の進捗など)、工事現場写真撮影 |
10:00 | 工程の調整、協力業者への連絡、図面チェックなど |
12:00 | ランチタイム、昼礼(午前中の進捗を見て、再度指示を出すなど) |
13:00 | 他部門対応、書類整理、翌日以降の工程確認、工程表や予算管理表などの更新 |
17:00 | 現場作業終了、帰社して報告書の作成など事務作業 |
19:00 | 終業 |

「今は1人で1物件を担当していますが、場合によっては2物件を担当することもあって、その場合は午前と午後で別の現場に行くことが多いですね」
休日のスポーツや推し活が仕事の励みに
毎日とても忙しそうですが、きちんとプライベートの時間は取れていますか?

「順調に進んでいるときは17時に終業して帰ることもありますし、土日祝はお休みなのでプライベートも楽しめています。入社して数年ほどは覚えることが多く、なかなかオンとオフを切り替えるのが難しかった時期もありました。ただ、それではいけないと感じ、夏から秋はサーフィン、冬から春はスノーボード、たまに船釣りもして、アクティブに休日を過ごすようにしたんです。そうしたら、リフレッシュできて仕事も一層頑張れるようになりました」



「私は社会人になってからハマったK-POPアイドルのコンサートを見に、韓国まで遊びに行くのが息抜きです。フレックスタイム制を利用して、金曜の15時くらいまで働き、そのまま空港へ直行して渡韓することもあるんですよ。推し活が仕事への励みにもなっています」


「絶対に認めさせてやる」という意志で、人間力を磨きながら邁進
建設業界の中でも、施工管理はとりわけ“男社会”のイメージが根強くあります。男女差による弊害について聞いてみたところ、意外な答えが返ってきました。
そもそも、男性が多い職場へ飛び込むことに抵抗はなかったのでしょうか?

「高校も大学も男子が圧倒的に多い学校だったので、私は特に抵抗がありませんでした」

「私も同じです。大学の土木学科はほとんど男性で、男性比率の高い環境に4年間もいたので慣れていましたね」

学生時代の経験が活きているんですね。男性社員側の反応はどのようなものでしたか?

「私が入社したのは、当社が工事課に女性社員を採用して2年目の年でした。同僚に女性がいることに対して既存の男性社員が慣れておらず、『結婚したら辞めるんでしょ?』とか『出産したら別の課に異動しないと』といったことを、悪気なく言われることもありました。施工管理は体力的にもメンタル的にも簡単な仕事ではないので、それを女性ができるのかと思って言っていたんだろうなと。それに対して、私は『絶対に認めさせてやる』とやる気に火が付いて、成長できたように思います。最近はどんどん女性社員が増えてきて、そういった声は聞かれなくなってきました。時代の変化とともに、性別ではなくいち社員として個を見る雰囲気ができています」
なるほど。もし、ご自身が感じている現場の課題感があれば教えてください。

「女性が少ないのは寂しいといえば寂しいですが、特に仕事のやりづらさは感じていません。職人さんも含めて女性が少ないので、自分のことを覚えてもらいやすいメリットがあるかなとプラスに捉えています。ひとつ挙げるなら、男性用の小便器しか置けないような狭小地の現場は、トイレ問題が発生しますね。公園や商業施設のトイレを探さないといけないので」

「確かに。トイレの話に関連しますが、女性は働く場所を快適にする視点に長けているのではと感じることがあります。例えば、男性だとトイレの真横に休憩所を設置してしまうことがあるんです。そうすると入りづらい……。トイレの横は手洗い場にして、少し離れた日陰になる場所を休憩所にして、なおかつ分煙にするといった発想をするのは、女性が多いのかなと。先輩や後輩を見ていて感じています」
大東建託では、2016年より、関東地区のハウスメーカーの女性技術者を中心に構成される業界横断プロジェクト「じゅうたく小町」へ参画しています。女性技術者が一堂に会し、女性活躍について意見交換を行うなど、社外技術者との交流を推進しています。本活動を通じ、男女共に快適に使用できる仮設トイレの試行運用を行うなど、建築現場環境の改善提案にも積極的に取り組んでいます。
じゅうたく小町
地図に残る建物。現場への愛。いい人間関係から生まれる、いい仕事
施工管理の仕事のやりがいは、どんなところですか?

「地図を見て、自分が担当した建物が載っているのを見つけるとうれしくなりますね。関わった物件が残り続けることにやりがいを感じるんです。一番好きなのは、工事の足場を外した瞬間。頭ではどんな仕上がりになるのかイメージはできていますが、実際に足場が外れて建物が見えると完成間近なことを感じられます。近隣にお住まいの方から『すてきな建物ができたね』と声をかけてもらえることもあって、とても励みになりますよ」

「私は、1日1日きちんと想定したとおりに作業が進んでいくことに喜びを感じます。工程が過密になるほど工種が増えますし、何かエラーが起きると、その後の工程に影響してしまう。そんななかで職人さんそれぞれが、しっかり自分の仕事をこなしてきれいにバトンをつないでいってくれたときに、現場への愛を感じます。1つの建物をチームで作っているんだと実感できるし、その現場を自分が率いているんだと責任も沸いてきます」
仕事をするうえで、大切にしていることは何ですか?

「現場での職人さんなどへの指示の伝え方です。同じことを伝えるにも、人によって伝わり方が違うので、誰に伝えるかで言い方を変えるように心がけています。そのためには一人ひとりの人間性を知っていないといけない。どう伝えると、その人が100%の力を発揮してくれるかなど、いろんなことを考えながら仕事を進めるので、施工管理を務めながら自分自身の人間力まで成長しているように思います」

「松下さんのお話に共感します。私よりも年上の男性が多いなかで、何をどう伝えるのかはとても重要です。伝え方次第でうまくいくことも、逆に悪くなることもある。最初の頃はよく伝え方が悪くて怒られていましたが、失敗を積み重ねてだんだんとコツをつかめてきたように思います。現場では10時と15時に休憩を取るのですが、そのときになるべくたくさん話しかけて、一人ひとりの性格を知るようにしています。コミュニケーション力が磨かれている実感がありますね」
「大学へ入学した時点では、教師になるか建設関係の仕事に就くかで迷っていました。卒業後、社会人経験を積もうと建設業界を目指すなかで、大東建託は学生を学歴で判断せず、人柄で選んでくれる会社だと感じ、そこに惹かれて入社を決めました」