
PROFILE この記事の登場人物

マリエ 環境省 森里川海アンバサダー/デザイナー/アクティビスト
ファッションの観点から環境問題に積極的に取り組み、数々の循環型社会に向けた取り組みの講演・イベント・フェスプロデュースを担当。
大東建託のグループ会社である大東バイオエナジーは、2024年4月より兵庫県朝来(あさご)市にある「朝来バイオマス発電所」の営業運転を開始しました。間伐材や端材といった地域の森林資源を有効活用し、CO2排出量を実質ゼロ(カーボンニュートラル)に抑える再生可能エネルギー発電所となっています。
タレントのマリエさんは、ファッションの観点から環境問題に積極的に取り組んでおり、数々の循環型社会に向けた取り組みの講演やイベントプロデュースを行っています。今回はマリエさんが実際に朝来バイオマス発電所を訪れ、最近よく耳にするバイオマスについてレポートしていきます。
全編は動画でご覧ください
2020年ごろから世界的に木材価格が高騰する「ウッドショック」と呼ばれる現象が発生しました。その影響により、バイオマス発電の燃料となる木質バイオマスの調達コストが高騰し、一時は発電停止をせざるを得ない状況でした。
コロナ禍の影響によって木材の価格が高騰している状態。1970年代に起きた「オイルショック」になぞらえて名付けられており、日本では2021年3月から表面化してきました。
その後、大東建託グループが2023年7月に株式会社関電エネルギーソリューション、兵庫県森林組合連合会から事業譲受して今にいたります。同発電所がある兵庫県朝来市は、雲海で有名な竹田城のある場所として知られています。

発電所内で材木から電気ができるまでの流れを見学
マリエさんが発電所の敷地に入ると、まず目に飛び込んできたのは大量の材木の山でした。バイオマス燃料となる丸太は、近隣の山から伐採された木材とのことで、マリエさんは「あまりの迫力に感動しました!」と驚きの表情を浮かべました。

朝来バイオマス発電所で所長を務める丹菊泰志は、「バイオマス発電の燃料になる丸太は近くの山の伐採現場から切り出したもので、適切に保管したうえで発電に利用しています」と説明しました。

その一方で、マリエさんは「木材チップを燃料として燃やすと結局はCO₂の排出につながるのではないでしょうか?」と疑問を投げかけました。
実はバイオマス発電は一般的な火力発電と異なり、化石燃料ではなく再生可能な木材を燃料としています。つまり、木が成長する過程で吸収したCO₂を排出するだけで、実際には大気中のCO₂総量に影響を与えないのです。朝来バイオマス発電所でも、「丸太をつぶした木のチップを燃料とすることで、カーボンニュートラルの発電を実践しています」と丹菊所長は話しました。

次にマリエさんは、大きな丸太をチップに破砕するマシン「チッパー(木材破砕機)」を見学しました。大きな丸太を破砕したあと、バイオマス原料の規格にあったチップが「ふるい機」に落ちてきて、ベルトコンベアを通じて専用の保管庫に保管されていきます。朝来バイオマス発電所では、1日でチップ置き場に保管されたチップ二山分を燃料として使うそうです。



その後、フィーダーに投入したチップは一旦「サイロ」という施設に貯蔵されます。

次にバイオマス発電のボイラーを見学したマリエさん。ボイラーの中でチップが燃えている様子を目の当たりにし、「すごく圧倒されました」とコメントしました。また、ボイラーの燃焼によって作られた蒸気が配管を通り、タービンに送られてきます。


中央監視室では、ボイラーがしっかりと動いているかを確認する役目を担っているそうです。蒸気タービン発電機によって生み出された電気は、送電線を通じて西日本エリアの大東建託グループ事業所に供給されていきます。



大東バイオエナジー 大久保 ✕ マリエが循環型社会の未来を語り合う

一通り発電所内の見学を終えた後、大東バイオエナジー 代表取締役社長の大久保孝洋が登場。

「バイオマス発電が、今までの放置されてきた木や枝葉などに新たな価値を与えていることに気づきました。丸太ばかりではなく、自社の建物を建てるときに出てくる製材の端材も使っているそうですね」

「大東建託グループは、市場に供給する建築物の約9割が木造を占めており、国内で最も木材を構造材として消費している企業です。そのため木材を余すことなく、無駄なく活用していきたいという考えとともに、林業の活性化にもつながることから、バイオマス発電に着目しているのです」
マリエさん自身も、サステナブルをテーマにしたファッションブランドを立ち上げ、「既存の自然サイクルを壊さないように、エシカルな素材を使うように気をつけている」そうです。まさに、カーボンニュートラルという考え方も、マリエさんが日々の暮らしの中で実践していることに近いもので、「とても親近感が湧いたからこそ、れからも、循環型社会の未来を見据えながら、自分にできることを考え、行動していきたいです」と目を輝かせていました。

朝来バイオマス発電所を訪れたマリエさんは、「本当にいろんなところに気配りが施されており、工夫もたくさん見受けられたのですごく勉強になりました」と感想を述べていました。バイオマス発電はCO2排出の削減や安定的な電力供給にとどまらず、林業の再生や森林の健全な管理、防災対策など、さまざまな社会的課題の解決にも寄与しています。こうした取り組みが、持続可能な社会の実現につながっていくのです。

また、朝来バイオマス発電所は朝来市と防災協定を締結しており、災害時には物資の保管や真水の無償提供、さらには電力の供給も行える体制を整えています。これにより、地元住民にとっての安心感にもつながっています。
取材を通してマリエが感じたこと

今回の取材を通して、マリエさんは「朝来バイオマス発電所ではグループを挙げて循環型社会に対応することはもちろん、災害時には地域の電力を賄う“頼もしい存在”」であることを実感したそうです。朝来バイオマス発電所が目指す「自然環境の配慮」と「地域社会への貢献」の両立は、 森林の持続可能性や地域防災に貢献して循環型社会を実現させる一つのモデルケースになるのではないでしょうか。
「バイオマス発電がない時代では、森林伐採時に出る未利用材が山林に放置されてきました」