
PROFILE この記事の登場人物

仲宗根 昌則 総務部 総務課 課長|防災士(大東建託)
10年間プログラマーとして勤めた後、大東建託の沖縄支店に入社。本社異動後は総務部総務課に所属し、通達・通知や一般申請、事務基準細則などの文書管理やペーパーレス・業務効率化を目的とした電子契約の促進、防災ビジョンの策定などに携わる。2023年に防災士の資格を取得し、BCP訓練や防災イベントなどの企画・運営・活動PRなどグループ会社全体の防災力強化に努めている。
地震や台風、豪雨など、災害はある日突然起こります。2024年元日に発生した能登半島地震では、道路や水道、電力といったインフラに甚大な被害がありました。当たり前の暮らしが、当たり前でなくなったときに備えて、私たちが今できることは何でしょうか?
大東建託グループでは、防災配慮型賃貸住宅の提供や、防災イベントを通じて「もしも」に向けた備えを呼びかけています。今回は、防災士の資格を持ち、防災ビジョンの策定にも携わった総務部総務課の仲宗根昌則さんに話を聞きました。
賃貸住宅でできる防災は? 日頃の備えが命を守るカギに
日本は地形・地質・気候の特徴から、自然災害が起きやすいといわれています。日本周辺だけで4枚ものプレートがひしめきあう地形から地震の発生が顕著です。東北から関東にかけ広範囲での被害をもたらし、国内最大規模の影響を及ぼした2011年の東日本大震災をはじめ、観測史上初めて2日のうちに2度も震度7が発生した2016年の熊本地震、北海道全域がブラックアウトした2018年の北海道胆振東部地震が代表的。また、2024年元日の能登半島地震は記憶に新しいでしょう。下のグラフを見ると、増減はあるものの少しずつ自然災害の発生件数が上昇傾向にあることが分かります。
そのため、家庭での防災は命を守るカギとなります。非常時でも家族全員が安全に過ごせるように、日頃からしっかりと準備をしておきましょう。賃貸住宅ですぐに実践できる災害対策としては、「食料や水、防災グッズの備え」「家具の転倒防止のための対策」「避難経路の確認」の3つが挙げられます。それぞれについて、仲宗根さんに詳しく解説してもらいました。

備え① 食料や水、防災グッズの備え
災害時は、電気や水道、ガスなどライフラインが停止する可能性があります。そんなときでもできるだけストレスなく生活を送るには、日頃から食料や水、防災グッズをしっかり備えておくことが大切です。
仲宗根「有事の際は人命救助が優先されるため、行政の支援が被災地に届くのは、災害発生からおおむね3日後です。そのため、食料と水は最低でも家族の人数×3日分備えておきましょう。ただし、災害の状況によっては支援が遅れる場合も。万一に備えて、家族の人数×7日分備えておくことをオススメします」

仲宗根さんいわく、備蓄をする際に意識したいのは「分散して置く」こと。一カ所にまとめると、水害によって1階が浸水したり、地震によってドアがゆがんで開けられなくなったりして、いざというときに備蓄品を取り出せなくなる恐れがあるためです。では、自宅の収納スペースが少ない場合はどうすればいいのでしょうか?
仲宗根「東日本大震災以降に広まってきたのが、“ローリングストック”という考え方です。これは、災害時に必要となる食品や消耗品を日頃から多めに購入し、使った分だけ新しいものを買い足す備蓄方法のこと。無駄なスペースを使わずに備蓄ができるだけでなく、有事の際もいつも食べているものを口にできるため、被災生活のストレスが軽減できます」

非常時を想定し、カセットボンベや電池交換式バッテリーなどの防災グッズを備えている人も多いでしょう。さまざまな防災グッズの中でも、重要なのが「携帯トイレ」だと仲宗根さんは言います。
仲宗根「能登半島地震の際もそうでしたが、断水時に困るのがトイレです。トイレが使えないまたは衛生面を気にして使いたくなくなると、水分補給を我慢したりして、エコノミークラス症候群になり体調を崩してしまいます。最悪の場合は死に至ります。そこで頼りになるのが携帯トイレです。ところが、携帯トイレはいざ使うとなると抵抗を感じるもの。すべての備蓄品にいえることですが、ただ備蓄しておくだけでなく、実際に使ってみることで、本当に必要なものの精査や不足しているものを洗い出すことにもつながりますし、非常時でもストレスを軽減できます。防災グッズを使って、休日に家族で避難訓練をしてみるのもいいですね」
在宅避難に必要な防災グッズ

備え② 家具の転倒防止のための対策
地震で家具が倒れると、ケガをしたり、避難経路の妨げになったりする恐れがあります。阪神・淡路大震災では、転倒してきた家具で口をケガして声が出せなくなり、助けを呼ぶことができなかったケースも。「いざというときの備えとして、家具の転倒対策は欠かせません」と、仲宗根さんは話します。
仲宗根「家具の転倒防止グッズとして効果が高いのはL型金具ですが、原状回復が必要な賃貸住宅にお住まいの方は、壁に穴を開けることをためらわれるかもしれません。最近は、ポール式やマット式、ストッパー式などさまざまなグッズが販売されています。例えば、ポール式とマット式を組み合わせるなど、グッズを併用することでL型金具と同程度の効果が期待できます」

また、食器棚の開き扉や引き出しに飛び出し防止器具を設置したり、本棚の本が飛び出さないよう落下抑制シールや留め金で対策をしたりするなど、小さな対策を重ねることで、災害時の物の散乱を防ぎ、避難経路を確保することにつながります。
リビングの安全対策

仲宗根「家具の配置によっては、寝ている間に倒れてきたり、ドアが封鎖されたりして避難の妨げになるなど、命の危険につながることも。引っ越しや模様替えの際は、災害時も念頭に置いて家具の配置を検討しましょう。また、タンスなど背の高い家具の上に重い物を置くと、頭の上に落下してくる恐れがあるため避けてください。お金をかけなくてもできる防災がたくさんあるので、ぜひご自身や大切な人のためにも普段からちょっとした備えを心がけてみてください」
このほか、シャッターや雨戸が設置されていない賃貸住宅では、窓ガラスの安全対策も必須です。
仲宗根「台風の際は、風圧だけでなく、暴風で飛ばされたものが窓を直撃して窓ガラスが割れることもあります。台風の接近に備えて、ベランダの植木鉢や物干し竿、サンダルなどすべて室内に入れておきましょう。また、窓自体の補強効果はなく万全ではありませんが、窓ガラスに養生テープでダンボールを貼り付けたり、飛散防止フィルムを貼ったりすることで、窓ガラスの飛散を防ぐことができます。念のためカーテンも閉めておくと良いでしょう」
備え③ 避難経路の確認
防災グッズの備えや家具の転倒防止など、物理的な対策以外に必要なのが「避難経路の確認」です。「災害が起きたときはこの経路で避難しよう、と想像しながら、実際に避難場所までの経路を歩いてみることで、思わぬ発見につながることもあります」と仲宗根さんはいいます。
仲宗根「例えば、道路が浸水していると足元が見えません。段差につまずいたり、側溝に落ちてしまったり、マンホールのフタが取れていたりすることもあるため、実際に歩いてみて避難場所までの経路にどんな危険があるか確認しておくといいと思います。特に普段車でしか通らないような道は歩いてみると思ったよりも勾配があったり、歩道がなく回り道が必要であったり、アンダーパスや危険な塀があったりなど歩くことで物理的に目にする情報も多くなるため、有事に備えたリスクの発見があるかもしれません。ただし、被災状況により、周囲の環境は刻々と変化するため、最新の情報をキャッチして一番安全な避難場所に避難できるように備えてください」
また、災害発生時に家族全員が同じ場所にいるとは限りません。安否確認のためにも、家族間の連絡ルールを決めておきましょう。
仲宗根「NTTでは、被災地への通信が増加した場合に備えて、災害用伝言ダイヤル(171)を提供しています。これは、既存の電話番号を起点にして、メッセージを録音したり再生したりできるサービスです。家族の中で、誰の電話番号をキーに伝言を登録するかなど、事前に相談しておくといいですね。毎月1日・15日など体験利用できる日もあるので、一度体験してみてほしいです」