
PROFILE この記事の登場人物

佐々木 康祐 データアナリスト(Red Frasco)
2022年に入社。データアナリストとして「いい部屋ネット」のデータ分析を担当。サイトの問い合わせ数の最大化のために、ユーザーの行動データや事業データなどを分析し、関係チームと連携しながら問題発見から解決までを実行。

石山 雄大 エンジニア(Red Frasco)
2021年に入社。「いい部屋ネット」開発チームに所属。データチームと連携しながらユーザーの課題を分析し、どのようなページや機能が必要なのかをデザイナーと共に設計、プロダクトの成長に向けた施策の立案・開発を推進。
時代とともに人々のライフスタイルや価値観が変化し、それに伴って賃貸物件に求める条件も多様化しています。今回は、物件検索サイト大手「いい部屋ネット」の企画・開発を手がけているベンダー・株式会社Red Frasco(以下、レッドフラスコ社)の佐々木さんと石山さんに「賃貸物件における検索条件の変遷」と「ユーザーの行動変化」についてお話を伺いました。
平成から令和にかけて変わった物件検索ニーズとは?

不動産テックに特化したプロダクトの成長支援を手がけるレッドフラスコ社。2020年頃から「いい部屋ネット」のサイトリニューアルプロジェクトにジョインしました。現在は事業成長をともに目指すパートナーとして、日々開発に取り組んでいます。
ここ数年で「いい部屋ネット」を使って物件探しをする顧客のニーズはどのように変化していますか?

ちなみに、物件探しにおける検索条件の傾向や、利用されるコンテンツの変化は何かありましたか?

「いろいろとデータを調査してみると、絞り込み検索条件の利用率が想定よりも低いことが分かりました。例えば、間取りの条件を設定して物件一覧を閲覧する人は、全体の約20%程度にとどまっていました」

意外なデータですね。絞り込み条件を使わない代わりに、どのような検索方法があるのでしょうか?

「例えば、トップページから都道府県を選択すると、各都道府県の『人気駅・エリアランキング×家賃相場』が表示されます。ここからスムーズに物件一覧ページへ遷移できる仕組みにし、ユーザーの手間をできるだけ省けるように工夫しました。ほかにも、ユーザーのニーズに合わせた特集ページなどの制作に取り組んでいます」

このようなユーザー行動から、どのようなことが読み取れますか?

「スマートフォンの普及により、あらゆることがスマホ1台で完結する時代になりました。データ分析からも、細かく条件を絞り込むより『素早く物件を確認したい』というニーズの高まりが読み取れます。だからこそ、検索の手軽さや便利さ、そしてユーザーのストレスを極限まで減らすために『検索結果がいかに速く表示されるか』にこだわっています」
物件探しにワクワクする! ユーザーに優しいサイト設計の裏側

「いい部屋ネット」での物件探しをもっと楽しく、スムーズにするために、どのような工夫がされているのでしょうか。開発を担当している石山さんに、サイト設計の裏側を詳しく教えてもらいました。
「いい部屋ネット」のUI/UXや機能の改善策はどのように考えていますか?

「いい部屋ネットは『ユーザーにとって優しいサイトでありたい』を意識してデザインしています。使いづらさが原因で、本来巡り会えたかもしれない良い物件を見逃してしまうことがないように心がけてきました。サイト改善の施策を考える際には、必要に応じてページ遷移率や滞在時間といった指標を分析しています。定量的なデータの分析や定性的なユーザー調査など、いろいろな角度から仮説が正しいのかを検証しながら課題を特定し、新しい施策の立案・実行を進めています」
ユーザーの検索行動の変化に合わせ、UI/UXに落とし込んでいくうえで工夫していることはありますか?

「先ほどお話ししたように、細かく条件を絞り込むよりも素早く物件を確認したいというニーズが高まっています。ユーザーがサイト内でスムーズに情報収集し、スピーディーな検討を進められるように、直感的なUI/UXやサイトの動作速度にこだわっています。また、物件検索サイトは単調でドライな印象を持たれがちなのですが『いい部屋ネット』ではサイト上に公式キャラクターのいいへやラビットを随所に登場させ、アニメーションを取り入れることで物件探しにワクワクできるような体験を演出しています」

ここからは、具体的なUIや機能のこだわりポイントについて聞きました。
UI・機能のこだわり① スクロールするほど情報の深度が高まる詳細ページ

「物件の詳細ページは、検討の深さに応じて適切な順序でコンテンツを配置し、自然な流れで意思決定をサポートできるように工夫しました。ファーストビューでは、物件選びに必要不可欠な情報を厳選して掲載し、その次に、あるとうれしい部屋の特徴を紹介しています。さらにスクロールを進めて検討が具体化してきた段階で、お気に入り物件との比較や、同じ建物内の他の部屋との比較ができるコンテンツを配置。このような構成にすることで、今見ている物件への納得感を徐々に高めていくユーザ体験を実現しています」

UI・機能のこだわり② 気になる物件の周辺環境が分かる「地図で確認」機能

「さらに詳細ページの下部には、物件の周辺環境情報を距離順で表示し、コンビニやスーパー、薬局などの施設が近くにあるか一目で分かるようになっています。検討の最終段階では地理的な情報も重要になるので、『地図で確認する』機能を提供し、ユーザーがGoogleマップなどで別途調べる手間を省きました。複数の外部データを統合する必要があるため、この機能の開発は容易ではありませんが、ユーザーの利便性を最優先にしながら細部まで作り込んでいます。特にこだわって開発した、ぜひ注目してほしい機能の一つです」


UI・機能のこだわり③ サイト独自の機能や難しい専門用語を説明する「お役立ち」吹き出し機能

「サイト独自の機能にユーザーが初めて触れる際には、使い方を説明する『お役立ち』の吹き出しを表示しています。また、不動産業界ならではの専門用語には『?』アイコンを付け、クリックすると解説が表示される仕組みも取り入れました。そのほかにも、初めて住む地域で賃貸物件を探す場合に、どうしても読めない地名や駅名が出てくるので、振り仮名を表示させて読みやすくしています」



ユーザーが理想の物件を一つひとつ探すのは大変。ユーザビリティーを重視し、物件詳細ページで『こちらの物件もどうですか?』と近い条件の物件をレコメンドする機能を実装しています。1つの物件だけを見て問い合わせるユーザーも少なくありませんが、サイト内を回遊しながら気に入った物件を探せるように促すことで、ユーザーの比較検討をサポートしています。また、レコメンド機能には「間取り図表示」のON・OFFトグルがあり、外観写真と間取り図のどちらか見やすい方に切り替えられます。
「まずは実店舗の話になりますが『いい部屋ネット』フランチャイズ店舗は100店舗を突破し(2025年3月時点)、大東建託グループ直営店を含めると全国に360店舗以上を展開するなど、大きく成長しています。これに伴い、いい部屋ネットのサイトに掲載する物件数も大幅に増え、2021年と2025年を比較するとその差は約2倍です。物件の増加により、ユーザーの多様化するニーズに応えられるようになったと感じています。
物件が増えた一方で、ユーザーがサイトに訪問してから物件の問い合わせをするまでの期間についても変化が見られました。2021年時点では、約8割のユーザーが1週間ほどかかっていたのに対し、現在ではその期間が4~5日程度に短縮されています。ユーザーの意思決定が早まっている中で、サイト側には多くの物件の中から、より早く物件を探せる仕組みが求められているのではないでしょうか」