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廃棄物からエネルギーを生み出す「バイオマス発電」とは? メリットや普及に向けた課題、将来性について解説

2025.03.26
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廃棄物からエネルギーを生み出す「バイオマス発電」とは? メリットや普及に向けた課題、将来性について解説

PROFILE

松澤 勇士郎

松澤 勇士郎 取締役(大東バイオエナジー)

2008年大東建託株式会社入社。大東建託が供給する木造集合住宅、RC賃貸マンションの施工管理業務を担当。2020年技術開発部 環境企画課に異動を機に木質専焼バイオマス発電所開発の専任担当者として、新規再生可能エネルギー電源開発プロジェクト・既存バイオマス発電所のM&Aを担当。2023年、大東建託の100%子会社となる、大東バイオエナジー株式会社を設立、取締役に就任。

地球温暖化やエネルギー資源の枯渇が懸念されるなか、持続可能な社会を実現するための選択肢として、近年「バイオマス発電」が注目されています。バイオマス発電は、廃棄物を有効活用しながらエネルギーを生み出し、地域活性化にも貢献できる画期的な再生可能エネルギー。一方で、燃料の確保や発電効率などの課題もあります。

「バイオマスってよく聞くけど、実際どうなの?」「環境にはいいけど、コストは?」そんな疑問を持つ方に向けて、この記事では、バイオマス発電の基本からメリット・課題、そして日本での現状と今後の可能性まで、分かりやすく解説します。

SDGsの目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに

地球上のエネルギー問題を解決するために、「2030年までに安価かつ信頼できるエネルギーを普及させる」と掲げられた持続可能な開発目標(SDGs)。

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捨てられるはずの生物資源が燃料になる! 「バイオマス発電」とは?

そもそもバイオマスとは、石油を除く動植物由来の資源を指し、生物資源を表す「バイオ(bio)」と量を表す「マス(mass)」が組み合わさった造語。農林業で発生する木質資源、食品廃棄物、家畜の排せつ物などがこれに当たり、本来廃棄される資源を適切に活用することでエネルギー源として利用できるようになります。バイオマス発電は、こうしたバイオマス資源を燃やしたり、分解するときに発せられる熱エネルギーを電力に変換したりして発電する方法です。この発電方式では二酸化炭素(CO₂)が排出されますが、原料となる植物が成長過程でCO₂を吸収しているため、理論上、CO₂排出量はプラスマイナスゼロとなります。そのため、バイオマス発電はカーボンニュートラルを実現する、環境にやさしいエネルギー供給手段のひとつとして世界各国で注目されています。

捨てられるはずの生物資源が燃料になる!「バイオマス発電」とは?

日本の発電量に占めるバイオマス発電の割合

環境政策エネルギー研究所の調査によると、日本のバイオマス発電は2023年時点で総発電量の5.7%を占めています。この数字は再生可能エネルギー全体の中では比較的高いシェアを持っており、太陽光発電(11.2%)や水力発電(7.5%)に続くシェア率です。

他の再生可能エネルギーとバイオマス発電の違い

再生可能エネルギーには、太陽光発電や風力発電、水力発電、地熱発電などさまざまな種類があります。太陽光発電や風力発電は、気象条件に大きく左右され、日照時間や風の強さによって発電量が変動する特徴がある一方、バイオマス発電は燃料を確保できれば安定的に発電を続けることが可能であり、供給の安定性が高いといえます。

水力発電は、長期的に安定した電力供給が可能な一方で、大規模なダム建設などが必要であり、適した地形でないと設置が困難です。また、地熱発電は、地熱の豊富な地域でしか設置できず、設備投資が高額になる傾向があります。これに対し、バイオマス発電は設置場所の制約が比較的少なく、既存の火力発電施設を活用することも可能なため、導入のハードルが低いといえるでしょう。

乾いていても、湿っていてもOK。バイオマスの分類と発電のしくみ

ここからは、バイオマス発電に使用される資源の種類と、その発電方法について詳しく見ていきましょう。

バイオマスの分類

バイオマス発電に使用される資源の種類

バイオマス発電で燃料として使用される生物資源は、「乾燥系」と「湿潤系」の大きく2つに分類されます。

  1. 乾燥系:余った木材や、収穫後に残る茎や草・根、建築廃材などの乾燥した生物資源
  2. 湿潤系:食品廃棄物や水産物の残りかす、家畜の排せつ物、下水の汚泥など、水分を含む生物資源

この他、古紙や木材パルプをつくるときに発生される黒液、食用・産業用の油なども含まれ、さらに細かく分類されます。また、一般的にバイオマス発電で最も多く使用されるのは木質系の資源で、燃焼させやすいよう木質チップや木質ペレットとして加工されます。

バイオマス発電のしくみ

バイオマス発電の方式には以下の3種類があります。用途や発電効率によって使い分けられており、生物資源の特性に応じた発電方式を採用することで、より効率的なエネルギー供給が可能になります。

方式 内容
直接燃焼方式 石炭や廃棄物を燃やす場合と同様に、バイオマスを焼却炉でそのまま燃焼させ、その熱エネルギーで蒸気を発生させてタービンを回し発電する方法です。最も一般的な方式であり、多くのバイオマス発電施設で採用されています。
熱分解ガス化方式 バイオマスをガス状の成分に変換する「ガス化」を行い、この可燃性ガス(合成ガス)を燃焼させて発電する方式です。燃焼しづらい湿潤系の生物資源に適しており、発電効率が高い点が特徴です。
生物化学的ガス化方式 家畜の排せつ物や生ごみなどを微生物の働きで発酵させ、そこから生じるバイオガス(メタンガスなど)を燃焼させて発電する方式です。食品廃棄物や下水汚泥の活用に適しており、メタン発酵で生じた微生物の食べ残し(発酵残渣)は肥料としても活用できます。

【メリット】地球温暖化対策はもちろん、バイオマス発電は循環型社会や地域活性化にもつながる

【メリット】地球温暖化対策はもちろん、バイオマス発電は循環型社会や地域活性化にもつながる

ここからは、バイオマス発電のメリットを見ていきましょう。代表的なものを6つ紹介します。

メリット01 カーボンニュートラルである

バイオマス発電は、燃焼時にCO₂を排出しますが、燃料となる植物が成長過程でCO₂を吸収しているため、カーボンニュートラル(実質的にCO₂の排出量がゼロ)とされています。これにより、温室効果ガスの排出を抑えることができ、地球温暖化対策に貢献できます。

メリット02 廃棄物の有効活用ができる

食品廃棄物や家畜の排せつ物など、通常は処分される生物資源を活用することで、廃棄物の削減につながります。特に、家畜排せつ物や下水汚泥をバイオガス化することで、廃棄物処理の問題を解決しながらエネルギーを生み出すことが可能です。

メリット03 エネルギーを安定供給できる

太陽光発電や風力発電は天候によって発電量が変動しますが、バイオマス発電は燃料そのものを確保できれば常に一定の発電が可能になります。特に、日本では化石燃料の輸入依存度が非常に高いため、国内で確保できるエネルギー源としてバイオマスの重要性が高まっています。

メリット04 既存の火力発電所・ごみ処理場などの施設を活用できる

バイオマス発電は、既存の火力発電所の設備を一部改造することでも導入可能なため、新規の発電施設を建設するよりもコストを抑えられます。

メリット05 貯蔵・発電量の調整がしやすい

バイオマス燃料は一定期間の貯蔵が可能であり、電力需要に応じて発電量を調整しやすいというメリットがあります。これは、風や日照時間に依存する風力発電や太陽光発電にはない特性であり、エネルギー供給の安定性を向上させます。

メリット06 農山漁村の活性化・花粉症の症状軽減につながる

バイオマス発電の燃料となる木質資源や農業廃棄物は、地方の農山漁村から供給されることが多いため、地域経済の活性化にも貢献します。特に、間伐材の活用は森林管理の促進にもつながり、持続可能な森林資源の利用が可能となります。また、花粉症の主な原因であるスギ・ヒノキを有効活用し、再造林の際に少花粉に品種改良された苗を植樹することで今後の花粉症の発症患者の発生抑制や、花粉症患者の症状軽減につなげることもできます。

【課題】燃料の安定供給とコスト削減が、バイオマス発電普及のカギ

バイオマス発電には多くのメリットがあるものの、全国的な普及には至っていません。その背景には、以下のような課題が存在しているからです。

課題01 原料調達にコストがかかる

バイオマス燃料は地域に広く薄く存在しており、収集・運搬にコストがかかります。そのため、原料の効率的な収集・運搬システムを確⽴する必要があり、化石燃料と比べると経済的に不利な場合があります。

課題02 燃料の安定確保が難しい

バイオマス発電に使用できる国内の資源は限られており、燃料供給を安定させるためには輸入に依存するケースもあります。これにより、国際的な燃料価格や為替変動が発電コストに影響を与える可能性があります。

課題03 発電効率が低い

バイオマス発電は、化石燃料を使用する火力発電と比べると発電効率が低く、より多くの燃料を必要とします。そのため、効率向上のための技術開発が求められています。

2030年、2050年に向けてどう変わる? バイオマス発電の現状と将来性

政府は、2030年までに総発電量に占める再生可能エネルギーの割合を36〜38%に引き上げる目標を掲げ、バイオマス発電の普及を推進しています。地方の資源が有効活用できることから、地域ごとの取り組みは進んでいるものの、燃料供給の安定化や発電効率の向上といった課題が依然として残っています。一方、一般社団法人バイオマス発電事業者協会によると、2050年にはバイオマス発電が総電力の15%を担う存在になるとも予想されており、期待もできるエネルギーです。

バイオマス発電に関する大東建託グループの取り組み

大東建託はRE100(企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ)に加盟しており、2040年までに事業活動で消費する電力を100%自社発電の再生可能エネルギーにすることを目標として掲げています。グループ会社の大東バイオエナジーでは2024年4月より朝来バイオマス発電所の営業運転を開始し、地元の木材資源を活用したエネルギーを当社グループの事業所に供給。本発電所からの電力供給により、当社グループの国内再生可能エネルギー導入率は50%を超える見込みです。

木質バイオマス発電所
バイオマス発電に関する大東建託グループの取り組み

【まとめ】バイオマスをエネルギーにして、循環型の未来をつくろう

バイオマス発電は、生物資源や廃棄物を有効活用しながらカーボンニュートラルが実現できるエネルギー。バイオマス燃料の安定確保や発電効率の課題はありますが、政府の支援や技術革新により普及が進んでいます。持続可能な社会の実現に向けて、今後の政策と技術開発が、このエネルギーの将来を左右するといえるでしょう。

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