
PROFILE この記事の登場人物
引っ越しの際、欠かすことのできない「物件の内見」。理想的な住まいを見つけるためには、物件の内見を通して、細かい部分まで確認することが大切です。しかし、忙しい日常の中で何度も物件を見に行く時間を確保するのは簡単ではありません。
そんななか、手軽に物件の詳細を確認できるYouTubeでのルームツアー動画が人気を集めています。なかでも、不動産内見系YouTuberの先駆けとして注目されるのが「不動産屋ラムエイ」こと家村将矢さん(通称:ラムエイ)です。2019年にYouTubeチャンネルを開設して以来、独自の視点と見せ方で物件紹介を続けており、チャンネル登録者数は8.9万人を突破。
企業からの撮影依頼も増えるなど、不動産業界にも影響を与える存在となっています。今回は、チャンネル運営の裏側や動画制作のこだわり、さらに自身も住んでいた賃貸住宅「DK SELECT」の魅力について、ラムエイさんに語ってもらいました。
自社集客の目的で始めたYouTube「半年間は全く再生数が伸びなかった」
まずはラムエイさんのこれまでのご経歴をはじめ、YouTubeチャンネルを始めたきっかけについて教えていただけますか?
ラムエイ「私は大学を中退後、運送業や不動産賃貸業、携帯電話の販売員など、さまざまな職種を経験しました。そして、2019年7月に親が営む株式会社家村組に入社したんです。YouTubeチャンネルを始めたのは、不動産事業部の自社集客をするためでした。もともと家村組は建設業が中心でしたが、2019年から不動産事業部を立ち上げて、物件の仲介や買い取り、再販といった新たな事業を進めていくようになりました。私自身、賃貸の仲介営業の経験が少しだけあったこともあり、動画によるアプローチの必要性を強く感じていたんです。

当初は『SUUMO』経由で問い合わせがあっても内見に繋がらないという状況が続いていました。また、家村組という名前では信用がなかったので、フランチャイズに加入しようとも考えましたが、『YouTubeでチャンネル登録者数を増やせば同じことができる』と思い、YouTubeチャンネルを開設したのが『不動産屋ラムエイチャンネル』の始まりです」
なぜ「物件の内見」にこだわった動画を中心に発信しているのでしょうか?
ラムエイ「YouTubeを始めた頃は、ルームツアー動画をアップしているチャンネルをそのまま真似していたんですけど、半年経っても全然再生数が伸びませんでした。売上も全然伸びていなくて、正直YouTubeの活用に対しても疑問を持ち始めていました。うだつが上がらないなかで、最後の最後で『自分の好きな形式でやろう』と決めて、ゲーム実況などでよく使われる『ゆっくりボイス※』を使って動画を作ってみたんですね。
そうしたら、3本目の動画が予想以上にヒットし、なんと140万再生を超えるまで再生数が伸びたんですよ。それまで、200人ほどしかチャンネル登録者数が増えていなかったのに、1つの動画がバズったのがきっかけで1万人を超えるチャンネル登録者数となり、問い合わせも多く来るようになりました」
※物件の「裏側」にある背景やこだわりを届けて、ファンになってもらいたい
現在は企業案件の撮影依頼が70社を超えるなど、「不動産屋ラムエイ」チャンネルは人気を博しています。こうしたなか、単に物件の特長だけでなく、ルームツアー動画を通して「住宅会社のファンになってもらいたい」と、ラムエイさんは思いを語りました。
ラムエイ「ルームツアーをやり続けて5年目に突入し、今は戸建て住宅をメインに扱っていますが、建売住宅になると正直どれも同じように見えてしまう部分があります。また、賃貸物件は1LDKから3LDKが多く、キッチンやお風呂のデザインも似通ってくる傾向にあります。そのため、単に物件を紹介するだけでは差別化が難しいと感じています。そこで、ルームツアーでは物件の特長だけでなく、住宅会社やメーカーのこだわりやストーリーを伝えるようにしています。家がどのような考えで作られているのかを視聴者に届けることで、物件そのものだけでなく、住宅会社のファンになってもらうことを目指していますね」
物件の表面的な部分だけでなく、その裏側にある背景や普段見えにくい部分までしっかり伝えることを意識しているんですね。
ラムエイ「そうなんですよ。例えば、大東建託さんの技術教育部の方とお話ししたときのように、設計士さんや関係者の方々が語ると、物件へのこだわりやエピソードがダイレクトに伝わってくるんです。それを映像として残したいなと思うようになり、最近では機械音声をやめて、僕自身が画面に登場するスタイルに変えました。 ルームツアーを行った後、住宅会社の方にも登場してもらい、インタビュー形式で『どういうこだわりがあるのか』『どんな経緯でこの家ができたのか』といった内容を紹介するようにしました。その結果、以前よりも再生数は落ちましたが、視聴者からの反響は確実に増えています」
間取り図ではわからない「リアルな暮らし」や「住みやすさ」を映像で伝える工夫
今まで手がけた動画撮影の中で印象に残っているものがあれば教えてください。
ラムエイ「特に印象に残っているのは、美大生とコラボした賃貸物件です。収益性を重視する賃貸物件では珍しく大胆なデザインが特長でした。建物の中央には中庭があり、それを囲むように部屋が配置され、各部屋には大きな窓が設けられているんですが、中庭から見ると、各部屋がショーウィンドウのように見えるんですよ。

また、料理好きな人はキッチンをディスプレイしたり、アート好きな人は作品を飾ったりと、入居者が個性を表現できる空間になっているのも印象に残りました。長年実績のある不動産会社が、これほど挑戦的なコンセプトの物件を手がけることに正直驚きましたね」
動画では「内見のポイントを解説する」というよりも「オンライン上でお客様と一緒に内見する」ような感覚に近いそう。実際の部屋に住んだ場合にどんな生活が送れるのかなど、「暮らしのイメージが伝わるように心がけている」とラムエイさんは説明しました。
ラムエイ「影方法に関しては、視聴者が迷子にならないようにすることを意識しています。例えば、玄関から入ったらすぐにリビングへ飛ぶのではなく、その間にある廊下やトイレ、他の部屋などを順番に見せるようにしていますね。また、間取り図はあえて表示せず、カメラの動きやカット割りで部屋の位置関係や距離感を自然に伝えるようにしています。
視聴者が実際に物件の中を歩いているかのような感覚を大切にしながら、動画作りに工夫を凝らしています。撮影は一定のルールを決めており、空間ごとに縦・横・スライドの動きを使い分けながら撮影するようにしています。今は2人体制で役割分担しながら撮影しているので、動線の確認や内見の流れを事前に打ち合わせしてから撮影に入っていますね」
天井の高さや奥行き、光の入り具合、床材の質感…… 間取り図では見えない感覚
間取り図ではわかりにくい「住みやすさ」、「暮らしやすさ」を伝えるコツはありますか?
ラムエイ「やはり、間取り図だけでは物件のイメージがつかめませんので、実際に現場へ出向いて『立体的にその空間をどう感じるか』というのが重要です。天井の高さや奥行き、光の入り具合、床材の質感など、間取り図では見えてこない感覚を映像で伝えたいと常に考えながら撮影しています。また、家族が居住スペースとしてどんな距離感で過ごすのかといったリアルな生活感も伝わるように意識していますね。『何LDK、何畳』という数字だけではなく、実際に住んだときにどう感じるのかを映像で表現するのが僕の目指すところです。
その一方で、僕の作るルームツアー動画はあくまで『行きたいと思わせるきっかけ』にしか過ぎません。匂いや近隣の雰囲気、街の感じなど動画ではわからない部分を確かめるために、現地へ足を運ぶことが最も重要だと考えています」
実はラムエイさんも住んでいた「DK SELECT」の魅力とは
大東建託の賃貸住宅ブランド「DK SELECT」。実はラムエイさん自身も2〜3年ほど住んでいた時期があり、デザイン性や雰囲気の良さは以前から感じていたそうです。
ラムエイ「最近の賃貸住宅は、どちらかというとシンプルでスタイリッシュなデザインが多く、見た目がすっきりしているぶん、少し面白みに欠けることもあります。そういう点でも、『DK SELECT』シリーズの物件は映像映えするというか、撮影する側としても魅力的だなと思っていますね。見た目だけじゃなく、内装も綺麗で住みやすかったですし、そういった理由もあって、撮影対象として選んでいましたね」

「DK SELECT」について、プロの視点から見た利点や長所、他の物件との違いを教えてください。
ラムエイ「毎回、撮影を通じて大東建託の方にお話を伺っているなかで感じるのは、単に土地の相場や予算に合わせて建物を建てているのではなく、その後の管理や客付けまで見据えた設計になっているという点です。オーナーさんと長く付き合っていくからこそ、常に満室を維持するために、設計や共用部分の作り方に非常にこだわりを持っているのが伝わってきます。特に、設計士の方々とお話しすると、そのこだわりが内装にも反映されていることが見て取れるんですよ。
例えば、大東建託の物件はペット可の部屋が多いんですが、特に工夫されていると感じたのが、腰壁のクロスの設計です。通常、ペットが壁を傷つけるとクロスを全面張り替えなければなりません(写真:ペットのひっかきキズがはいっても、原状回復時見切り下部分だけのクロスの貼替が可能)。

それが、大東建託の物件では壁の中間あたりでクロスを区切っているので、傷ついた部分だけを張り替えれば済むようになっています。結果的に修繕コストが抑えられ、メンテナンスもしやすくしている配慮は、普通の戸建て住宅ではなかなか見られない発想だと思います。賃貸だからこそ、住む人が入れ替わることを前提に、ペットがいる人もいない人も快適に過ごせるように考え抜かれている。そうした細やかな配慮に、とても感動しましたね」

YouTubeを通じて物件の販売促進を目指す未来へ。
最後に今後の展望をお聞かせください。
ラムエイ「チャンネルを始めた当初からの目標は、YouTubeを通じて家が売れるようにすることです。気づけばYouTubeのことばかりやっているんですが、本来、僕がやりたかったのは建売住宅の事業を進めていくことなんですよ。そのためには、僕のチャンネルを見てくれた人たちに『ラムエイさんのチャンネルで紹介している家なら住みたい』と思ってもらえるような状況を作りたいですね。
今までは他の工務店の物件をPRして送客することが多く、そういう会社のことを知るのも楽しいし、素敵だと思っているんです。でも、これからはお客様が住宅会社で家を買ったり建てたりするところまで関わる仕組みを作りたいと考えています」
ラムエイさんのルームツアーは、単に物件のスペックや特長を伝えるだけでなく、「作り手」のこだわりや思いを届けようとしているのが印象的でした。
「どんな思いでその建物が作られているのか」
という、作る裏側に想像を膨らませながら、物件探しをしてみるといいかもしれません。