
PROFILE この記事の登場人物

山本 魁人 川越工事部 工事課(大東建託)
大学在学中から当社インターンシップに参加し、2021年新卒入社。さいたま支店工事課に1年半所属したのち、2022年10月から現在に至るまで川越支店工事課に所属。2024年1月に1級建築施工管理技士を取得。取材時は、木造(2×4造)物件を5件担当。最近は新婚生活と現場管理を楽しく両立している。

小川 龍二 安全品質管理部 次長 兼 品質管理課長(大東建託)
2008年入社。岐阜・愛知エリアで工事課の業務に従事したのち、2011年に本社の品質管理課に異動。その後、再び岐阜・愛知エリアで工事課・発注管理課・品質管理課の課長に就任し、現職に至る。
「働き方改革関連法」をはじめとする法案の影響で、深刻な人手不足が問題となっている建設業界の「2024年問題」。超高齢化社会による「2025年問題」も相まって、業界全体の存続を揺るがす大きな問題になっています。
大東建託では、建設現場の施工管理業務の効率化を目指し、遠隔支援アプリ「SynQ Remote(シンクリモート)」を活用しています。2022年の導入から約3年が経過した現在、その社内普及率はなんと95%超えとのこと。そこで今回は、ケンタクアイ編集部が工事現場に訪問し、実際の活用場面や使い勝手を見せてもらいました。「シンクリモート」が切り拓く建設現場の未来について、工事部の山本魁斗と安全品質管理部の小川龍二が語ります。
2019年4月から始まった「働き方改革」に伴ういくつかの法改正のなかでも、特に業界へのインパクトが強かったのが、時間外労働の上限規制。しかし、物流・建設・医療の3業種は、時間外労働を前提としている上に、上限規制が社会に多大な影響を与え、対策も用意ではないことから5年間の猶予が設けられました。2024年4月から、この3業種の時間外労働の上限規制がスタートしたことで生じたさまざまな問題の総称を「2024年問題」といいます。
2024年問題の解説記事遠隔検査はスマホの時代! 「シンクリモート」、現場でどう使われている?
訪れたのは埼玉県さいたま市の建設現場。落ち着いた雰囲気の住宅街に、今回の訪問先となる工事現場があります。大東建託が本格的に「シンクリモート」を導入したのは、この現場の施工管理を務める山本さんが入社3年目の時。現場ではどのように活用されているのか? 導入前と比べて業務はどのように変化したのか? 実際に「シンクリモート」を使いながら紹介してもらいました。
【ポイント01】管理現場件数が1.5〜2倍に。移動・スケジュールの手間が大幅削減
まずは「シンクリモート」の導入で「ここが変わった!」というポイントを教えてください。
山本「私たちは、基本的に一人で複数の現場を管理しています。導入前は、1日にいくつかの現場を移動して状況を確認することが多く、移動時間が大きな負担となっていました。そんな中、『シンクリモート』が導入されたことによって遠隔で現場を管理できるようになり、作業効率が圧倒的に高まりました。また、検査の中には現場監督・検査員・管理建築士が立ち会うものもあるのですが、これまでは全員が現場に集まっていたため、日程調整にも手間がかかっていました。『シンクリモート』導入後は、現場に赴くのは現場監督一人だけでよく、検査員や管理建築士とはリアルタイムで映像を共有しながらの検査が可能に。これにより、優先順位の高い現場に集中しながら、他の現場の対応も進められるようになったんです」

それまで移動に割いていた時間を、有効に使えるようになったんですね。
山本「はい。その結果、残業時間の削減にも繋がりました。肌感覚ですが、月平均で4、5時間は残業時間が減ったのではないでしょうか。時間に余裕ができた分、管理できる現場件数も増え、以前は3現場がマックスでしたが、今は5現場ほど管理しています。全体的に1.5倍から2倍ぐらい増えていますね。上司や担当者に判断をあおぐ場面でも、その場で問題点を映して相談できるので、現場での判断が早くなりました。使い方によって、スピーディーで中身の濃い打ち合わせができるツールだと思います」
【ポイント02】「画質の良さ」と「ポインタ機能」で、スムーズなやりとりを実現
「シンクリモート」を使ったやりとりはどのように行っているのでしょうか? 実際の様子もぜひ見せてください。
山本「まずは『シンクリモート』のスマホアプリを開いて、他のSNSなどで通話するのと同じように相手に連絡します。1対1のやり取りはもちろん、複数人の参加も可能です。例えば壁のパネルのジョイントを確認する検査では、私が今当てているスケールを映すことで、相手の画面にも映像が表示されます」


山本「特に気に入っているのは、画質が良い点です。スケールのメモリも1mm単位で確認できるので、遠隔で参加する時も現場にいるのと変わらないくらいでストレスは一切ありません。他にも、画面を指でなぞると表示された矢印ポインタが動く仕様で、細かな指示もしやすいんです」

山本「検査で気になる箇所があればその場で写真を撮影したり、画面共有で図面を見ながらやりとりしたりすることもあります。また、試行導入しているウェアラブルカメラを併用する人もいて、両手が空くので作業しやすそうですね」


【ポイント03】現場に浸透させる工夫。使い方に慣れるための配慮も
現場監督さんの中には、「シンクリモート」の使用に慣れない方もいらっしゃるのではないでしょうか? 現場に浸透させていくための工夫などはありましたか?
山本「検査員の中には60歳を超える方もいらっしゃるので、確かに最初は戸惑いも見られましたね。でも、スマホや電子機器に触れる機会の多い私たち世代が使い方を説明したり、勉強会を開いたりしていくうちに、あっという間に慣れていかれたように思います。開発元のクアンドさんのマニュアルの他に、当社専用のマニュアルも作成しているので、それらを活用しながら今は不備なく円滑に進んでいます。もちろん、『シンクリモート』を使いこなすには現場での知識も必要です。そのため、当社では入社3年目まではリモートの検査ではなく、『現地に行って直接見る』という社内ルールで運用しています」

「遠隔支援ツール『シンクリモート』は、導入後の運用定着が鍵になります。大東建託さんとは導入前からしっかりと連携し、どの業務で効率化できるかを一緒に検証。そこで見えてきた課題を改善したうえで導入しました。また、その後は各現場のキーマンへの説明会や操作説明会を実施し、セキュリティ対応や利用データの共有方法の調整など、環境整備にも力を入れて進めてきたので、スムーズな定着が実現できました。現在も月1回の定例会で、利用状況の確認や、より良い活用に向けた意見交換ができていますね」