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「朝起きた瞬間から体が重い」「しっかり寝たつもりなのに、日中ずっと眠い……」そんな悩みを抱えていませんか? 現代人の多くが感じている「なんとなくの不調」は、実は毎日使っている寝具が原因かもしれません。
寝具選びは、単なる買い物ではなく、明日の自分への「投資」です。しかし、いざ買い替えようと思っても、枕の高さやマットレスのかたさなど、自分に何が合うのかを判断するのは意外と難しいもの。
そこで今回は、老舗寝具メーカー・nishikawaで「スリープマスター」として活躍する森さんに、科学的根拠に基づいた寝具選びの極意を伺いました。寝具が体に与える影響から、具体的な選び方のステップ、そして意外と知らないお手入れの落とし穴まで、森さんから伺った「心地よい眠りのためにできること」をお届けします。
マットレスの選び方:体の一部に負担が集中しにくいものを選ぼう

マットレス選びで大切なのは、体の重さを分散させる「体圧分散性」と、正しい姿勢を保つ「寝姿勢保持性」の2つを両立させることです。
POINT01:自分のBMIを目安にする
西川では、身長と体重から算出される「BMI」を一つの基準としています。
森「体重があってガッチリしている人は体が沈みやすいので、しっかり支えてくれるかためのタイプを、そうでない人は普通〜柔らかめのタイプが体に合う傾向は多いです。ファッションとは違い、好みよりも『自分の体に合うかどうか』、体のコンディションに合わせることが重要です」
店頭では、BMIを目安にしたチャートや、体重がどこにかかっているかを視覚化する体圧分布の機械を使って選んでいく(出典:nishikawa公式サイト)POINT02:「寝返り」のしやすさを確認
マットレス選びにおいて、素材そのものよりも重要なのが「体に合うかどうか」です。その判断基準の一つが「寝返り」です。マットレスの上で実際に横になり、寝返りをしてみましょう。
森「腰の部分には体重の約44%がかかっています。マットレスが柔らかすぎるとこの重い腰の部分が沈み込み、寝返りを打つ際に『よいしょ』と力を入れなければならなくなります。逆にかたすぎても背中が浮いてしまい、ブリッジをしているような状態で腰に負担がかかります」
出典:nishikawa最小限の力でスムーズに寝返りが打てるものが、体への負担が少ないマットレスです。
| 素材 | 特徴 | 適している人 |
|---|---|---|
| スプリング | 体をしっかりと支え、耐久性が高い | 体重が重めの方、仰向けで寝ることが多い方 |
| ウレタンフォーム | 体にフィットし、圧力を分散させる・静音性が高い | 横向きで寝ることが多い方、パートナーの寝返りで起きやすい方 |
| ラテックス | 耐久性と弾力性が高く、通気性も良好 | 寝汗をかきやすい方、アレルギー体質の方 |
(出典:nishikawa公式サイト)
なお、ウレタンフォームのマットレスは、反発力によってその種類が分かれています。
森「高反発マットレスは、 寝返りは打ちやすいものの、人によってはかたさを感じやすいかもしれません。一方、低反発マットレスは、 触り心地は良いものの、沈み込みすぎると寝返りに力が必要になることも。大切なのは、自分の体に合うマットレスを選ぶことです」
【豆知識】本質的な改善のためには、枕を買い替えるだけじゃダメ?
マットレスは高価な買い物だけに、買い替えに踏み切るのは勇気がいります。しかし森さんは、「全身はつながっているため、やはり枕とマットレスを合わせて考えるのが理想」と指摘します。体の一部に無理が生じれば、他でかばおうとして連鎖的に不調を招くこともあるからです。また、マットレスのかたさによって必要な枕の高さも変わるため、両者のバランスは不可欠です。
もし今のマットレスが体に合わないと感じるなら、まずは手軽な工夫から始めてみましょう。かたすぎる場合は、ベッドパッドやトッパーを重ねることで、体への当たりを柔らかくできます。それでも改善されない場合は、長く付き合える新しいパートナーへの乗り換えを本格的に検討すべきタイミングかもしれません。

掛け布団の選び方:心地よさを決める「5つの機能」

意外と見落としがちなのが掛け布団です。森さんによれば、良い掛け布団には5つの条件があるそうです。
- 保温性:適度な温度を保つ
- 吸湿性:汗を素早く吸い取る
- 放湿性:湿気を逃がす
- 軽さ:寝返りを妨げない
- フィット性(ドレープ性):肩口に隙間を作らず、冷気を防ぐ
これらの機能をしっかり備えているかどうかが、掛け布団選びの大きなポイントになりますが、そのなかでも、特にオススメの種類を森さんに伺いました。
森「特にオススメは羽毛です。羽毛は吸放湿性に優れているため、冬はもちろん、実は夏場もエアコンの冷え対策として使えます」
夏場は薄手の羽毛布団(肌掛け)のみ、冬は中厚手の布団をボタンで着脱することで、一年中快適に過ごせる「オールシーズンタイプ」もあります。綿素材には「洗える」「手頃」という魅力がありますが、眠りの質という機能面で見れば、羽毛のメリットは非常に大きいのです。
【豆知識】寝具は何年で買い替えるのがベスト?
「一生モノ」と思われがちな寝具ですが、実は明確な寿命があります。一般的に、中素材のへたりによって高さが変わりやすい枕は2〜3年、体重がかかり腰の部分が凹みやすいマットレスは6〜7年、羽毛の掛け布団は10年程度が買い替えの目安です。
年数だけでなく「状態」を見極めることも大切です。枕であれば、弾力性やボリュームがなくなったり、形状が保てなくなったりしたときは寿命のサイン。衛生面での変化や、体重増減などによる体形の変化で必要な高さが変わった際も検討時期と言えるでしょう。また、朝起きたときに首や肩に重さや痛みを感じるなら、それは寝具からの切実な「引退サイン」かもしれません。
寝具を長持ちさせるコツについて、森さんは「カバーをこまめに洗い替え、本体は陰干しなどで湿気を逃がすこと」を推奨しています。日々のていねいなメンテナンスを心がけ、体を支える機能が失われていないか定期的にチェックしてみてください。
寝具選びだけじゃない。心地よい眠りのためにできる工夫をご紹介

最後に、日々の習慣のなかで眠りの質を高める「快眠のコツ」を伺いました。
① 浴びる光をコントロールする
森「朝起きたら、まず太陽の光を浴びましょう。これによって分泌されるセロトニンが、約15時間後に眠りのホルモンであるメラトニンに変わります。つまり、朝から夜の準備が始まっているのです」
夜はスマホやPCの強い光を避け、寝室を「眠るための環境」に整えます。
森「寝室の照明は、直接光源が目に入らない間接照明が理想です。豆電球をつけて寝る場合も、目に光が入らない工夫を。明るさは0.3〜1.0ルクス(手元がぼんやり見える程度)が目安です」
② 入浴で体温のリズムを整える
人は「深部体温」が下がるときに眠気を感じます。
森「そのため、寝る1時間前くらいに入浴して体を温めると、その後の放熱によってスムーズに眠気がやってきます。寒い時期なら、あらかじめ布団を温めておくのも効果的です」
③ 五感をリラックスさせる
森「寝室での『香り』も有効です。夜はラベンダー、朝はレモンなどのすっきり系でオンオフを切り替えるのがオススメです。室温は、夏場は28℃以下、冬場は10℃以上を目安に季節に合わせて調整しましょう」

「明日の自分」のために、今できる最高の投資を
寝具とは、今の自分の体を正しく、かつ正確に支えるためのパートナー。
自分に合った寝具を選ぶことは、体本来のメンテナンス機能を最大限に引き出し、明日へのエネルギーをチャージすることに直結しています。「自分ではなかなか判断しづらいからこそ、ぜひプロのアドバイスを頼ってほしい」と森さん。
毎日をすっきりと健やかに過ごすために、まずは今の自分の寝姿勢や寝返りの感覚に、少しだけ意識を向けてみてはいかがでしょうか。





















