
PROFILE この記事の登場人物

薗部 あゆみ ブランド推進部(大東建託)
2016年2月入社。CSR・サステナビリティ担当として、マテリアリティ特定やサステナビリティ体制構築などのサステナビリティ経営推進業務に従事。2023年からは企業版ふるさと納税制度を活用した地方創生支援の企画業務を担当。
最近、活用する企業が増えていると言われている「企業版ふるさと納税」。個人向けのふるさと納税を利用したことはあっても、企業版の活用経験はなく、自社で活用すべきか悩んでいる方もいるかと思います。個人向けのふるさと納税と比べてどういった点が違うのでしょうか。
この記事では、企業版ふるさと納税の仕組みや活用するメリット、注意点などの基礎知識について解説します。活用を検討しているなら、ぜひ参考にしてみてください。
企業版ふるさと納税とは

まずは、企業版ふるさと納税の概要や創設された背景、税制優遇の仕組みなどの基本情報を解説します。
企業版ふるさと納税の概要
企業版ふるさと納税(正式名称は「地方創生応援税制」)は、地方公共団体の地方創生プロジェクトに対して企業が寄付を行った場合に、法人関係税から税額控除される制度です。
活用の流れは、まず地方公共団体が、策定した地方版総合戦略をもとに地域再生計画を作成します。その後内閣府によって、計画の認定を受けた地方公共団体のなかから寄付先が選定されます。企業は社内で調整を行ったうえで地方公共団体と調整し、寄付を行います。企業版ふるさと納税の寄付実績は、税額控除割合の引き上げが行われた2020年度に大きく増加し、その後も年々金額だけでなく件数も増加しています。2024年度は寄付額が631.4億円、寄付件数が18,457件と、いずれも前年度の約1.3倍となりました。
こうした顕著な成果により、企業や地方公共団体から延長を求められる声が多数寄せられるようになりました。そして2025年度の税制改正にて、企業版ふるさと納税の活用企業が増えていることから、2027年度(2028年3月31日)まで延長されることが決定しました。
企業版ふるさと納税による税制優遇の仕組み
企業版ふるさと納税の活用が増えている理由としては、活用することで法人関係税が最大9割も軽減されることが挙げられます。その内訳について以下の図を参考にしてください。
企業版ふるさと納税の控除の内訳(出典:内閣府ホームページ)通常の寄付の場合、損金算入※によって寄付額の約3割に相当する法人関係税の負担が軽減されます。企業版ふるさと納税が開始された当初は、ここに最大3割の税額控除を上乗せし、最大6割の税額軽減を実現していました。
2020年度には税額控除がさらに最大3割拡大され、現在は約3割の損金算入と最大6割の税額控除を組み合わせ、最大9割の税額軽減が適用されます。つまり、企業が負担する法人関係税を、最小1割に抑えることができるようになったのです。
例えば、企業版ふるさと納税を活用して1,000万円寄付をした場合、最大900万円の法人関係税が軽減されます。
※企業の法人税を計算する際に、収益(益金)から差し引くことが認められる費用や損失(損金)として計上すること
企業版ふるさと納税で税額控除を受けるための条件
企業版ふるさと納税は、1回あたり10万円以上の寄付が対象です。10万円未満の寄付は本制度の対象とならず、税額控除も受けられないため注意しましょう。
なお、寄付額の上限は、自治体の事業計画に記載され、内閣府が認めた事業費の範囲内と決められています。社内で調整し、事業費を上回らない適正な金額に設定してください。
企業版ふるさと納税が創設された背景
企業版ふるさと納税は、官民連携によって地方創生を進めるため、2016年度に創設されました。人口減少や少子高齢化の深刻化により、地方公共団体が単独で地域の課題を解決するのは困難です。そのため、官民の「民」である企業の力を活用し、地方公共団体と企業が協力して地方創生を進める必要性が高まっています。
とはいえ、地域経済は縮小が進んでいるため、地域内の企業の協力だけでは地域の活性化を図るのは現実的に難しいという問題がありました。
近年ではCSV経営(企業が事業を通じて社会課題の解決に取り組み、社会的価値と経済的価値を同時に追求する経営手法のこと)サステナビリティへの関心の高まりに伴い、企業は地域の社会課題の解決に積極的に取り組む傾向があります。そこで、全国の企業が地域を選んで支援できる公的制度である企業版ふるさと納税が創設されたのです。
人材派遣型の企業版ふるさと納税も
通常の金銭の寄付だけでなく、人材派遣型の企業版ふるさと納税もあります。人材派遣型は、2020年10月13日に創設されました。企業版ふるさと納税の仕組みを活用し、専門知識やノウハウを持つ企業の人材を地方公共団体などに派遣することで、地方創生の強化を図るのが目的です。
企業は寄付金に派遣した職員の人件費や経費を含められるうえに、寄付金に対して最大9割の税額控除が受けられます。また、企業が持つノウハウを活用して地域に貢献できたり、人材育成の機会を得られたりといったメリットもあります。地方公共団体は、実質的に人件費の負担なく有能な人材を受け入れることができ、地方創生の取り組みを充実させることが可能です。
企業版ふるさと納税を活用するメリット

企業版ふるさと納税を活用することは企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。主なものについて見ていきましょう。
社会貢献(企業としてのPR効果)
制度を活用した企業は「社会貢献に取り組む企業である」とPRできるため、イメージアップにつながります。例えば、企業版ふるさと納税を通じて寄付を行った場合、地方公共団体の公式ホームページや広報誌などに企業名が掲載される場合があります。「地域課題解決に貢献している」とアピールになるので、取引先や金融機関からの信用力向上や、未来の働き手である地域の若者へのアプローチにつなげることができるのです。
地方公共団体との新たなパートナーシップの構築
制度を活用した結果、連携協定を締結したり、事業の展開先である自治体との対話機会を創出したりすることができ、地方公共団体と新たなパートナーシップを構築できるのもメリットの一つです。また、資金面の支援に加え、企業がノウハウや人材を提供することで、ともに地方創生に取り組むことができます。
地域資源などを活かした新事業展開
制度を活用して地域への寄付を行った結果、企業は自社では達成できない社会課題や周辺課題の解決に貢献することができます。
企業版ふるさと納税を活用する際の注意点

企業版ふるさと納税を活用する際は、いくつか細かい点を確認しておく必要があります。以下の注意点を押さえたうえで、企業版ふるさと納税を活用しましょう。
返礼品を受け取れない
ふるさと納税=返礼品というイメージが強いと思いますが、企業版ふるさと納税を活用する場合、企業は返礼品(経済的な見返り)を受け取れません。
個人のふるさと納税では、地域の特産品をはじめとする返礼品を受け取れるのが一般的です。しかし、企業版では寄付をする代わりに経済的な利益を受け取る行為は禁止されています。品物に限らず、寄付の見返りとして補助金を受け取ったり、有利な利率で貸付を受けたりする行為も禁止です。
一定の自己負担が生じる
企業版ふるさと納税を活用する際は、一定の自己負担が生じることを理解しておきましょう。企業版ふるさと納税を活用して寄付をすると、企業は法人関係税を最大9割軽減できるため、最小1割の自己負担が発生します。寄付をした全額分が軽減されるわけではないため、活用前に寄付金額をよく確認することが大切です。
また、のちに控除されますが、一旦は寄付金額全額を支払わなければいけないので、経常利益が減ることについても事前に認識しておきましょう。
赤字企業は負担割合が増加する
赤字企業が企業版ふるさと納税を活用した場合、寄付した金額に対する会社負担の割合が増加します。企業版ふるさと納税の大きなメリットは、税額控除を受けられることです。しかし、赤字企業は法人関係税をほとんど支払っていないため、寄付をしても税額控除の恩恵を受けられません。
寄付した金額が単純な支出となり、財務状況が悪化してしまうおそれもあります。赤字経営の状態で地方公共団体への寄付を優先させるべきかどうかは、慎重に考えましょう。
寄付先に制限がある
企業版ふるさと納税は寄付先に制限があるため、寄付先を選定する前に必ず確認しておきましょう。まず、企業の本社が所在する地方公共団体には、企業版ふるさと納税を活用した寄付を実施できません。寄付先を選ぶ際は、本社が存在する都道府県や市区町村は候補から外してください。
また、以下の都道府県や市区町村への寄付は、企業版ふるさと納税の対象となりません。
- 地方交付税の不交付団体である都道府県
- 地方交付税の不交付団体であり、全域が地方拠点強化税制における地方活力向上地域以外の地域に存する市区町村
上記の2に該当するのは、首都圏整備法で定められている既成市街地や近郊整備地帯などです。地方公共団体であればどこでも寄付先に選べるわけではない点は、あらかじめ理解しておきましょう。
【事例紹介】大東建託も企業版ふるさと納税で自治体への寄付を実施
大東建託は、2023年度から企業版ふるさと納税を活用した地方創生支援を行っています。ここでは、企業版ふるさと納税の活用事例として、大東建託が地方の自治体への寄付を実施した3つのケースを紹介します。
事例01.岩手県一戸町
企業版ふるさと納税を活用して大東建託が実施した支援の一つが、岩手県一戸町への寄付です。
再エネ発電を行う大東建託グループ株式会社一戸フォレストパワー(バイオマス発電所・岩手県一戸町)大東建託はRE100※に加入しており、2040年までに事業活動で消費する電力を100%自社発電の再生可能エネルギーにするという目標を掲げています。目標達成に向けた取り組みとして、2025年2月に当社のグループ会社となった株式会社一戸フォレストパワーは、岩手県一戸町にある施設でバイオマス発電を行い、東日本エリアの事業所に電力を供給しています。
そこで、大東建託は企業版ふるさと納税を通じて同市に寄付を行い、地域産業、特に地元林業の活性化をサポートしています。
※企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ(積極的な取り組みの枠組み)
事例02.石川県能登町
2024年元日に発生した「能登半島地震」により、石川県能登半島を中心とした地域に大きな被害がもたらされました。大東建託は「地域の“もしも”に寄り添う」という防災理念を掲げていることから、能登半島の復興支援活動を継続しています。
金沢支店に支援物資を集約し、被災地へ駆けつけたその支援活動の一つとして、企業版ふるさと納税を通じた寄付をし、被災された方への物資の配布や賃貸住宅の無償提供などに加え、石川県能登町に寄付を行い、復興支援をサポートしています。
事例3.富山県高岡市
富山県高岡市にある高岡古城公園は、木が密集して生い茂っているため歴史的な価値が伝わりにくく、植物の育成にも悪影響を及ぼしていました。30年かけて公園内の木々を整える「高岡古城公園景観再生プロジェクト」を2023年3月にまとめましたが、市の予算だけでは実施スピードが緩やかになってしまいます。
そこで、大東建託はそのプロジェクトを支援するため、企業版ふるさと納税をはじめとする制度を活用し、寄付を募りました。その結果、予定よりも早く伐採が行われ、景観の整備が進み、間接的な街の美化に貢献しました。
木々が整理された高岡古城公園(画像提供:高岡市)寄付先を選べる企業版ふるさと納税の仕組みがあったからこそ、大東建託は共感するプロジェクトに支援ができ、プロジェクトの進行に貢献できたといえます。
【まとめ】企業版ふるさと納税は企業にも地域にも良い影響がある制度
企業版ふるさと納税を活用することで、企業は税額を軽減できるとともに、社会貢献や新たなパートナーシップの構築などにつなげられます。また、寄付を受ける地方公共団体は地方創生の取り組みを活性化できるため、企業にも地域にも良い影響がある制度といえるでしょう。
企業版ふるさと納税に興味がある企業の方は、メリットや注意点を十分に理解したうえで、活用を検討してみてください。























