
PROFILE この記事の登場人物

濱田 宏彰 リスクインテリジェンスグループ 上級研究員(セコムIS研究所)・シニアリスクコンサルタント・防犯設備士・防災士・日本市民安全学会常任理事
「信頼される安心を、社会へ」を実現するため、犯罪情勢を中心とした情報の収集・分析・検証・蓄積・活用に関する研究と、その実践に取り組む。併せて、地域の自主防災会では常任委員を務め、日々の防災活動にも注力。書籍『セコムが教える防犯プロのアドバイス』『タイプ別にみる働く女性の防犯対策 ライフスタイルWoman360°』の執筆・監修にも携わる。

ケンタクアイ編集部
大東建託グループのニュースメディア「KENTAKU Eyes(ケンタク アイ)」の編集部。暮らしを豊かにする知識やアイデア、最新技術、大東建託で働く人々の想い・取り組みの裏側まで、さまざまな情報をお届けします。
「いつも通る道だから大丈夫」——そう思っていても、帰り道で背後に人の気配を感じ、不安になった経験がある人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、“防犯のプロ”であるセコムの濱田宏彰さんにケンタクアイ編集部が直撃インタビュー。帰り道に潜むリスクや不安を感じたときの適切な行動、さらにオススメの防犯グッズについて詳しく伺いました。安心して暮らすために知っておきたい、防犯の基本をお届けします。
帰り道のリスクはどこにある? まず知っておきたい「防犯の基本」
セコムIS研究所 濱田宏彰(はまだ・ひろあき)職場や学校、最寄り駅から自宅までの帰り道。夜遅い時間になると、道によっては暗かったり人通りが少なかったりと、不安を感じた人も多いはず。そんな帰り道には、どのようなリスクが潜んでいるのでしょうか。濱田さんに帰り道の防犯の基本を聞きました。
濱田「令和8年2月に警察庁が発表した『令和7年の犯罪情勢』によると、街頭犯罪※の認知件数は増加していることが分かります。ただし、ひったくりやスリなどは劇的に増えてはおらず、横ばいか減少傾向に。一方で、路上での暴行や傷害事件は、高止まりが続いている状況です。その背景は、明確には特定されていないものの、わずかな接触などでもトラブルに発展しやすくなっている社会傾向にあると考えています」
街頭犯罪・侵入犯罪の人気件数の推移
参考:令和7年の犯罪情勢(警察庁)歩きスマホ・イヤホンの使用を控えるべし
編集部「怖いですね……。ほかにも考えられる理由はあるのでしょうか」
濱田「歩きスマホをしたり、イヤホンで音楽を聴いたりしながら夜道を歩く人が増えたことも一因だと思います。こうした行動は注意力の低下につながり、犯罪者にとって狙いやすい状況を生んでしまいます。特に駅から自宅までの帰り道では、これらの使用は控えるべきなんです」
編集部「帰り道でイヤホンしていました……」
振り返りや「見せる防犯」で、周囲への警戒アピールを
編集部「犯罪者はターゲットを定める際、どこを見ているのか教えてください」
濱田「犯罪者が『この人はやめておこう』と諦めるのは、防犯意識の高そうな人です。ときどき後ろを振り返ったり、周囲をキョロキョロと確認したりして、『私は周りを警戒している』という雰囲気を醸し出している人は避けられやすいです」
編集部「“警戒アピール”が有効なんですね。ほかにも狙われにくくする方法はありますか?」

濱田「防犯ブザーをバッグの外側の見える位置につけている方も、狙われにくいです。いわゆる『見せる防犯』ですね。普段はバッグの中にしまっていても、人通りの少ない道に入る前にバッグの外側に出すことで、犯罪者への警戒アピールになります」
「光が途切れない」「逃げ込める場所がある」ルートを選ぶ
編集部「帰り道のルートはどのように選ぶべきでしょうか」
濱田「なるべく、コンビニやスーパーなど、いざというときに逃げ込める場所があるルートを選んでください。交番や警察署、警備員が監視している場所を通るのもオススメです。昼間のうちに帰り道のルートを歩いてみて、死角になるような場所がないか、防犯カメラがどこに設置されているかを確認しておくのもいいですね」
編集部「なるほど。夜の帰り道を選ぶ際は、やはり街灯が多くて明るい道が安心ですか?」

濱田「街灯が多くても、LEDの街灯は照らす範囲が狭い傾向にあるため、街灯と街灯の間が極端に暗くなっていることがあります。こうした『一瞬暗くなる場所』は狙われやすいので、光が途切れないルートを選ぶほうが安心といえます。どうしても暗いところを通らなければいけない場合は、スマホのライトで足元を照らしながら歩くのも一つの手です」
マンションの共用部や玄関前こそ油断は禁物!
編集部「自宅マンションの共用部に着くとホッとするんですが、そこにもリスクが潜んでいるのでしょうか……」
濱田「もちろんです。オートロックの場合、一緒に建物内へ入ってきた人が住人とは限りません。見慣れない人とは、エレベーターで二人きりにならないよう注意してください。また、玄関前で鍵を探しているときに、背後から襲われるケースも発生しています。玄関に着いたらすぐに使えるよう、あらかじめ手元に鍵を用意しておきましょう。さらに、家に入ったらすぐに鍵をかけることを徹底し、一人暮らしであっても『ただいま』と声を出すようにしてください」
帰り道で後ろに人の気配を感じたとき、それが不審者なのか、ただの通行人なのかは判断が難しいもの。しかし、もしも違和感を覚えたり「嫌な予感」を感じたりした場合は、自分の直感を信じてください。たとえ勘違いだったとしても、警戒するに越したことはありません。

「危ないかも」と感じたら。身を守るためのアクション
では、実際に背後に気配を感じたり、声をかけられたりした場合はどのように行動すればいいのでしょうか。シチュエーション別の対処法を伺いました。
「違和感」を察知したときのファーストアクション
編集部「帰り道で背後に人の気配を感じたとき、まずはどう行動すればいいのか、教えてください!」
濱田「気配がまだ遠くにある場合は、周囲をキョロキョロと見回したうえで、自然に振り返りましょう。なかには『振り返ったら相手に失礼かも』とためらう方もいますが、背後が見えない状況で不安を感じ続けるよりも、相手の存在に気づいていることを示したほうが安全です」
「近くにいるかも……」と感じたら、まずは早歩きで“人のいる場所”へ
編集部「近くにいると感じた場合、走って逃げたほうがいいのでしょうか」
濱田「相手が自分より速ければ追いつかれてしまうので、走って逃げるのは必ずしも安全ではありません。いきなり走り出すのではなく、早歩きで誰かの助けが得られる場所へ逃げ込んでください。コンビニやスーパーなどに逃げ込むのが理想ですが、近くにない場合は、非常事態ですから、知らないマンションの共用部に入ってしまってもやむを得ないでしょう。日頃から『ここで何かあったらあのコンビニへ』『次の角を曲がったらあのスーパーへ』というように、複数の逃げ込み先を想定しながら歩く習慣をつけておくと、いざというときに役立ちます」
コンビニやスーパーなど、“いざというときの逃げ込み先”を把握しておくことが、安心な帰り道の基本シチュエーション別の回避術3選

「人の少ない場所で距離を詰められたとき」「怪しい人に声をかけられたとき」、そして「恐怖で声が出ないとき」。こうしたシチュエーションに直面した際、どのような対応を取るのが適切なのでしょうか。濱田さんに伺いました。
回避術01|人の少ない場所で距離を詰められたとき
濱田「防犯ブザーを見える位置に出す、あるいは手に持って『いつでも鳴らせるぞ』というアピールをしましょう。後ろから距離を詰められている場合は、相手を刺激しないよう、振り向かずに進んでください。相手との距離が近すぎる状況で急に振り返ると『何見てるんだ!』と逆上されるおそれがあります。まずは相手の手が届かない距離感を保ちつつ、少しずつ距離を取ることを意識してください。防犯ブザーが手元にないときは、スマホのライトで周囲を照らし、『警戒している』と示すのも効果的です」
回避術02|怪しい人に声をかけられたとき
濱田「少なくとも2メートル程度の間隔を保ってください。相手がさらに距離を詰めてきた場合は、後ずさりして距離を保ちます。この場合は『相手に失礼かも』と考える必要はありません。例えば道を尋ねられたとしても、『道を尋ねるフリをした変質者』の可能性もあります。特に誰もがスマホで地図を見られる現代において、道を尋ねてくる人は少数派です。困っている人を助けてあげたい気持ちをグッと抑えて、しっかりと警戒しましょう」
編集部「つい親切心から対応してしまいそうです……。もし相手にどうしても受け答えをしなければならない場合は、どのような態度で接すればいいのでしょうか」
濱田「何かを尋ねられた場合は、けんか腰にならず、落ち着いた態度で対応してください。かといって、過度ににこやかにする必要はありません。『好意がある』と勘違いされないためにも、毅然とした態度で接することが大切です」
“2メートル”の目安は、向かい合った相手同士がそれぞれ腕をまっすぐ伸ばすくらい。これが“一撃が届かない距離”回避術03|恐怖で声が出ないとき
濱田「男女問わず、相手からいきなりつかまれたりすると、恐怖と驚きで声が出なくなるものです。そんなときのために、防犯ブザーなど、自分の代わりに音や声を出してくれるツールを準備しておくことをオススメします。防犯ブザーはバッグの持ち手につけて、いつでも鳴らせるように外側に出しておきましょう。また、何かあったときにすぐに対応できるよう、普段からイメージトレーニングをしておくのもいいと思います」
つきまといか、ただの通行人かを判断する明確な基準はありません。ですから、「なんとなく怖い」「これ以上近づかれたくない」といった自分の感覚を大切にして判断してください。間違っても自分から立ち向かったりせず、逃げることを最優先に考えてください!

日常の安心を支える。オススメの防犯アイテム・アプリ
濱田さんに、いざというときに役立つ防犯アイテムやアプリについても伺いました。ポイントと併せてご紹介します。
防犯アイテム01|防犯ブザー

濱田「まず買うなら、防犯ブザーがオススメです。小型で持ち運びやすく、価格も手ごろで使いやすいというメリットがあります。緊急時にパニックになっても使えるように、『引っ張るだけで鳴る』など、操作が簡単なものを選んでください。あまりにも安価なものは粗悪品である可能性があるため、信頼できるメーカーの製品を選びましょう」
編集部「『いざというときに電池切れで鳴らなかった』という話もよく耳にします……」
濱田「そんな事態を防ぐためにも、定期的に作動チェックを行うことが重要です。自宅で実際に引っ張って、音が鳴るかどうかを確認してください。その際は、近隣の方を驚かせないためにも、あまり遅くない時間に行うのがいいでしょう」
防犯アイテム02|護身用ライト

濱田「『フラッシュライト』や『タクティカルライト』と呼ばれる護身用の特殊な懐中電灯は、一般的なものと比べて非常に明るく光るのが特徴です。夜の帰り道を歩く際は、すぐに使えるよう手に持って歩くか、ポケットなどに入れてすぐに取り出せる状態にしておきましょう」
防犯アイテム03|ココセコム

濱田「『ココセコム』は、専用端末を用いたセコムのサービスです。ココセコムには、駅から自宅までの帰り道など、特に不安を感じる区間だけ設定して利用できる機能『みつめてセコム』モードが搭載されています。この機能は、設定した時間ごとに端末が振動し、ユーザーがボタンを押して応答します。もし応答がない場合は『ユーザーに異変が起きた』と判断され、セコムの隊員が急行する仕組みです」
防犯アイテム04|警視庁公式防犯アプリ「デジポリス」

濱田「警視庁が提供する公式の無料防犯アプリ『デジポリス』は多機能で、東京都民以外でも利用が可能です。『デジポリス』以外にも、各警察が同様の防犯アプリを配信しています」
編集部「具体的にはどのような機能があるのでしょうか」
濱田「マナーモードにしていても、ライトを点滅させながら大音量でブザーを鳴らす『防犯ブザー機能』や、自分の代わりにスマホが『やめてください』と発声してくれる『痴漢撃退機能』などがあります。こうした機能は、防犯ブザーの代わりとしても使えるでしょう。住んでいる地域の防犯アプリを入れておくと、近隣で発生した犯罪情報や不信者の出没情報を把握でき、『今日は別の道を通ろう』といった判断材料にもなります。加えて、多くのスマホには緊急通報機能が備わっています。いざというときのために、自分の端末でどのように緊急通報ができるのかを事前に確認しておきましょう」
護身用品といえば、高電圧で相手の動きを封じる「スタンガン」や、相手の目に吹きかけて強烈な痛みを引き起こす「催涙スプレー」を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、これらは威力が強い反面、過剰防衛や傷害罪に問われるおそれがあるほか、使い慣れていないとパニック時に誤って自分を傷つけてしまう危険性があります。そのため、安易に取り入れることはあまりオススメできません。

特別な対策より、“ちょっとした防犯意識”を日常に
「防犯は、日々のちょっとした意識の積み重ねが大切です」と濱田さん。今回紹介した対策は、どれも特別なものではありません。しかし、その「ちょっとした意識」の差が、いざというときの安全を大きく左右します。駅から自宅までの帰り道では歩きスマホをしない、イヤホンを外す、周囲に目を配る、逃げ込める場所を把握しておく——こうした積み重ねが、自分の身を守ることにつながります。「自分の身は自分で守る」という意識を、日常のなかに取り入れてください。


















「路上で起きる犯罪には、近年どのような傾向がありますか?」