PROFILE この記事の登場人物

宇那木 崇広 企画開発部長、兼プロジェクト推進部長(アスコット)
「ASTILE広尾」担当時はマネジャーとして在籍し、設計から施工までのプロジェクトマネジメントおよび設計企画業務を担う。2025年より現職。

河本 光正 企画建設本部長(アスコット)
「ASTILE広尾」では、部門長としてプロジェクト全体を統括。
大東建託グループの一員である株式会社アスコットが手掛けた広尾の都心型レジデンス「ASTILE (アスティーレ) 広尾」が、2025年度グッドデザイン賞を受賞しました。箱を組み合わせたような特徴的な形状や配置は、見た目の美しさのみならず、心地よく暮らすための機能性にあふれています。そんな「ASTILE広尾」の企画・開発を担当したアスコットの宇那木さんと河本さんに、物件の魅力を伺いました。
見た目の美しさだけではない、住み心地にこだわった都市型レジデンス
グッドデザイン賞を受賞した「ASTILE広尾」とは、どのような物件なのでしょうか? その魅力をたっぷりご紹介します。

全戸が角部屋に。特徴的な“雁行形状”
「ASTILE広尾」は全19戸の賃貸集合住宅で、広尾の閑静な住宅地と、恵比寿の商業オフィスエリアの間に位置しています。「ASTILE広尾」では、建物の軸を45度振って配置する、独特な雁行形状を採用しました。
「ASTILE広尾」最大の特長ともいえる“雁行形状”
河本「全戸が角部屋になっているため、すべての住戸で、2面以上の開口部を確保できています。多方向から光が入り、風が通り抜けやすいのが大きな魅力です」
オンとオフを分けられるメゾネットタイプのSOHO
SOHOを想定して作られた兼用住宅「ASTILE広尾」には、メゾネット住戸とそうではない住戸があります。メゾネット住戸は、主にSOHO(住居兼オフィス)としての使用を想定しており、ワークスペースと居住スペースがはっきりとフロアで分けられているところが特長です。
宇那木「ワークスペースは、来客者が外から直接出入りできる『ダイレクトアプローチ』を採用。土足での使用を想定し、床はタイル張りになっています。一方、居住スペースの床はフローリングを採用し、住まいとしての温かみを感じられるデザインで、オンとオフのメリハリがつくようにしています」

河本「1階のSOHO部分は街とのつながりを意識し、すりガラスのように目隠しをしない透明で大きな窓を設けています。これにより、ワークスペースとしての活気を街に発信しながら、室内からは都市の躍動感を感じられるところが特長です」
光や風を取り込みプライバシーを守る“小さな庭”
「ASTILE広尾」では、雁行形状によって生まれた三角形の隙間を、“小さな庭”と呼んでいます。

屋内・外それぞれに、さまざまなメリットが期待できる“小さな庭”
宇那木「雁行形状によって生まれた隙間を生かし、隣地との間に“小さな庭”を設けることで、プライバシーを守り、隣地に接していながらも開放感を得られるような工夫をしました」
河本「この“小さな庭”は、地下住戸に自然光を届け、風を通す役割も担っています。これにより、地下特有のジメジメ感を解消する目的もあります」
「第2のリビング」であるテラス
非常に広々としたor開放的なテラスも、「ASTILE広尾」の特長の一つ。雁行形状によって隣同士のテラスの位置がずれているため、テラスに出た際に、他の入居者と顔を合わせることはありません。
自由な使い方ができる、ゆとりのあるテラス
宇那木「テラスに椅子を置いてくつろぐなど、第二のリビングのような感覚で、ライフスタイルに合わせた使い方をしていただければ。テラスで植物を育てるのもオススメです」
河本「テラスの柵は、場所によってコンクリートの壁と縦格子を使い分けています。プライバシーの確保と開放性の両立を可能にしました」
大きいだけじゃない。「過ごし方」視点で設計された窓
窓は「大きければ良い」ということではなく、その部屋での過ごし方に合わせて設計されています。

床からの設置位置が高い「腰窓」を採用
宇那木「たとえば寝室の場合、大きすぎる窓だとベッドを置いた際に落ち着かないことがあるため、床から一定の高さのある『腰窓』を採用しています。窓の位置を決める際は、ブラインドの上げ下げのしやすさや、掃除のしやすさといった、日常的な利便性も考慮していますね」
河本「一方、リビングなどにはできるだけ大きな窓を設けて、開放感と明るさを意識しています。また、階段に沿って窓を配置しているタイプでは、時間の経過とともに階段越しに光の入り方が変化するのを楽しむことができますよ」
引き戸を閉めても明るい! ガラスの間仕切り
部屋と部屋の仕切りには、ガラスの間仕切りや引き戸を活用しています。

宇那木「間仕切りがガラスなので、たとえ扉を閉めていても、奥の部屋まで自然光が届くんです。空間のつながりと明るさを感じられるところがポイントですね」
日常生活において重要度が高い水まわりは、シンプルに整えられた設計。視覚的なノイズを排除した、美しい共用廊下
共用部においても、生活感を抑えるための丁寧な設計が施されています。

宇那木「電気メーターや消火器などの設備機器は、丸見えにならないよう壁の凹凸を利用してすっきりと収めています。また、間接照明を活用することによって、高級感と特別感を演出しています」
屋上緑化でヒートアイランド現象を抑制
「ASTILE広尾」を上から撮った写真を見ると、屋上に緑が敷かれているのが特徴的です。
宇那木「これは芝生ではなく、メンテナンス性に優れたセダムという多肉植物です。水やりをしなくていいので非常に効率がいいんですよ。ヒートアイランド現象を抑制し、建物の表面温度の上昇を抑える効果があります」
グッドデザイン賞の受賞ポイントと、意外な審査員評

広尾2丁目という土地柄、比較的高い賃料設定が期待される立地において、「何かチャレンジングなことをしよう」という強い思いから始まった「ASTILE広尾」のプロジェクト。そんなプロジェクトのグッドデザイン賞受賞を受けて、二人は「自分たちが意図した設計上の工夫がきちんと審査員に伝わったことがうれしかった」と振り返ります。
宇那木「敷地に対して建物を斜めに配置することで生み出したスペースが、単なる空きスペースではなく、住環境を良くするための“意味のある余白”として評価されました。設計の狙いが伝わったのだと受け止めています」
河本「全戸住居のマンションではなくSOHOを織り交ぜた点についても、『周辺環境と親和的である』と評価されましたね。私たちは都市部における“職住近接”のライフスタイルを提案したかったので、それを認めていただけた形となりました」

また、グッドデザイン賞の基準は、単に「見た目がかっこいい」というだけではなく、「社会や暮らしを豊かにする」といった、社会的・人間的視点も重要視されます。コストが優先されがちな昨今の住宅事情において、“住む人にとっての質の高い住まい”を実現するため、あえて難易度の高い設計に挑戦してきたことが評価されたのもうれしかったですね」
グッドデザイン賞の審査員コメントの中には、二人が想定していなかったものもあったと言います。「今後、“小さな庭”の樹木が成長することで、建物の角度の振れが緩和され、街になじんでいくだろう」といったコメントです。
河本「建物を敷地から45度振って配置することは、周辺環境への不調和として捉えられるリスクもありました。しかし、審査ではその点をネガティブに捉えるのではなく、未来へのポジティブな可能性として評価していただくことができ、それが自信につながりました」
“今までにない住まい”だからこそ選ばれる
「ASTILE広尾」は、周辺の家賃相場に対し、それなりに高い賃料設定であるにもかかわらず、順調に入居が進んでいます。SOHOとして想定していた区画についても想定通り、事務所併用住宅としての利用で入居されているそうです。

河本「中でも、他よりも格段に広いテラスがあるなど、際立った特徴を持つ住戸から先に選ばれている印象がありました。どこにでもあるようなワンルームではないので、『今までにないマンション』や『探してもなかなか見つからない特徴的な物件』を求めている方に響いているようです」
宇那木さんと河本さんの二人は、アスコット社としての今後の展望についてこう語ります。
宇那木「木を活かした物件づくりにも取り組みたいと考えています。大東建託をはじめ、グループ内でのコラボレーションを通じて、新しいチャレンジをしたいですね。これまでにない、面白い物件を生み出したいです」
河本「現在、建設業界は人手不足や原材料費の高騰という課題に直面しています。そんな厳しい環境下でも、価値ある建築を維持したい。たとえ難易度が高い設計だとしても、品質を担保するプロデュース力をさらに磨いていきたいです」

広尾を彩り、街になじむ
2025年度グッドデザイン賞を受賞した「ASTILE広尾」。雁行形状により光や風を取り込み、開放感とプライバシーを両立するなど、住む人のことを考えた家づくりが高く評価されました。住み手の発想に応じて暮らし方が展開する都市型レジデンスとして、時間が経つたびに価値を更新し続ける存在になりそうです。






















「『ASTILE広尾』の特長の一つが、住戸を一直線に並べるのではなく、連続的にずらして配置する“雁行(がんこう)形状”です。この形状によって、都市計画上の高さ制限や日影規制をクリアしつつ、最大限のボリュームを確保することができます。また、隣の建物と向き合うのを避けられるため、居住者と近隣双方のプライバシーを守ることができるのもメリットです」