PROFILE この記事の登場人物

森本 和茂 President and CEO(DAITO KENTAKU USA/DK Realty Management California)
2024年1月に大東建託へ入社し、2025年4月より現職。前職では2011年に米国事業の立ち上げメンバーとして渡米。日本帰任後、2021年に再度渡米しM&A先企業や米国本社で勤務するなど、通算約7年にわたり米国に駐在した。現在は大東建託グループの米国事業を統括し、ロサンゼルスを基点に不動産の買取・再販・管理までをワンストップで推進している。
長引く円安や国内の低金利を背景に、海外不動産、特に「アメリカ不動産」を投資先として検討する動きが広がっています。アメリカの政府機関である米国国勢調査局(U.S. Census Bureau)の人口動態データなどを見ると、アメリカの南部を中心に持続的な人口流入が続いており、住宅需要が高く、インフレ環境下でも賃料が下がりにくい市場であることから、長期的な資産形成につながる投資先として評価されているのです。
しかし、その注目度の高さに対して、「実際のところ、今のアメリカ不動産市場ってどうなっているの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、大東建託USAの代表・森本和茂さんにお話を伺いました。2011年からアメリカ不動産に携わってきた森本さんに、市場の現状から日本との違い、投資の進め方まで、たっぷり語っていただきました。
大東建託は、北米事業の強化と2029年の海外管理戸数5万戸達成に向け、米国での取り組みを一層加速させています。2026年4月にはテキサス州ダラスに拠点を新設し、買取リノベ再販事業を開始。取得した戸建て住宅など7棟の販売を8月中旬より開始しました。さらに同年8月には、ロサンゼルス都市圏で資産・賃貸管理やリノベーションを手掛けるCoastlineグループの全株式取得を発表。管理機能の内製化と現地基盤の強化を進めることで、一気通貫したサービス体制の確立と北米での事業拡大を図ります(画像:2026年1月に取得した米ロサンゼルス・ノースハリウッドのコンドミニアム外観(リノベーション後))。
Coastlineグループ(米国カリフォルニア州ロサンゼルス)の株式譲渡契約を締結(2026年8月17日) 北米での事業拡大を目指しテキサス州での買取リノベ再販事業を開始(2026年7月30日)
なぜ今、アメリカ不動産なのか。大東建託USA代表が考える3つのポイント

「なぜ今、アメリカ不動産なのか」。森本さんはその答えとして、大きく3つのポイントを挙げます。
ポイント01|円安を追い風にした「ドル建て資産」への注目
森本「円安が進んでいる今だからこそ、収益が米ドルで積み上がる“ドル建て資産”を持つ意味は大きいと考えています。家賃収入が米ドルで入ってくるということは、円安局面では円換算の収益も自然と増えていくということ。為替の変動を単なるリスクとして捉えるのではなく、分散のツールとして使える点が魅力です」
ポイント02|家賃が毎年上がる? インフレ耐性が生む収益性
森本「アメリカでは『物価は毎年上がるもの』という感覚が社会全体に根付いています。長くデフレ環境が続いてきた日本とは異なり、多くの人がインフレのなかで生活してきました。ですから入居者側も、年に2〜3%程度の家賃上昇であれば比較的自然と受け入れる傾向にあります。結果として、物価の上昇に合わせて家賃収入も伸びやすい構造があり、資産としてのインフレ耐性を持ちやすい点が特徴です」
ポイント03|築年数だけでは決まらない。住宅の価値の考え方
森本「日本は新築志向が強く、築年数とともに価値が下がるという構造です。一方アメリカは中古住宅市場の流通量が非常に多く、リノベーションや適切なメンテナンスを行って運用すれば価値を維持、あるいは高められます。そこが根本的に違うところです」
日本とはここが違う! 知っておきたいアメリカ不動産市場のリアル
Daito Kentaku USA ロサンゼルスオフィス(左から:Erika Tejero、Yukiteru Hamada、Daito Kentaku USA・President and CEO・森本 和茂、Scott Greenspan、小倉 優香、谷口 祥崇)「アメリカ不動産は気になるけれど、日本の不動産とどう違うの?」という声はよく聞かれます。ここでは、日本の不動産市場との違いを踏まえながら、アメリカ不動産市場の特徴を4つのリアルに分けて整理します。
リアル01|賃貸需要が拡大。空室リスクが低い市場
日本では人口減少を背景に空室率の上昇が課題となっていますが、アメリカでは、成長地域を中心に賃貸需要が構造的に拡大しています。その理由には、大きく2つあります。
アメリカの住宅空室率の推移
住宅空室率は1986年をピークに低下。主な要因として、住宅コストや市場環境の悪化が移動を抑制しているとされている(参考:Harvard Joint Center for Housing Studies「Pandemic‑Era Residential Mobility:Examining Temporary Shifts and Enduring Trends」(2025))1つ目は、あえて“賃貸を選ぶ層の増加”です。2008年のリーマンショックをきっかけに、住宅価格の急落を経験した若い世代の間で「家を持つリスク」を意識する人が増えました。ライフスタイルや仕事の変化に柔軟に対応できる住まいとして、賃貸を選択する動きが広がったのです。特に、ミレニアル世代後半~Z世代の世帯形成が続き、賃貸需要を下支えしています。
人口増加数ランキングTOP10(2023→2024年)

2つ目は、“成長地域への人口流入の継続”。2020~2022年にかけて、都市部から郊外への人口移動が加速し、2024年に発表された米国国勢調査局のデータ※によると、アメリカの南部(サンベルト地域)では直近1年間で約180万人の人口増加が確認されています。なかでもテキサス州は約56万人増と、全米でも人口流入が多い州の一つとなりました。
この2つが重なることで、日本のように“入居者が減る前提”ではなく、成長地域を中心に需要の拡大を前提とした投資設計が可能である点が、アメリカ不動産の市場基盤を支えています。
賃貸市場が堅調な3つの理由
① 全米で賃貸稼働率が高い背景
現在の米国は住宅ローン金利が6%台で高止まりし、住宅価格も高水準にあることから、住宅購入のハードルは依然として高い状況です。そのため、「購入を見送って賃貸にとどまる世帯」が増加しています。こうした動きに加え、ミレニアル世代後半からZ世代にかけて世帯形成が進んでいることも、賃貸需要の底堅さを支えています。一方で、高金利の影響によって新規住宅開発が減速しており、供給面が引き締まりやすい構造となっています。これらの要因が重なった結果、賃料の大幅な上昇は見られないものの、空室率は低水準で安定する市場環境が形成されています。
※② コロナ後に生じた構造変化
コロナ禍以降、米国の賃貸市場には大きな構造変化が見られました。2020年から2022年にかけては、都市部から郊外やサンベルト地域への人口移動が加速。その後、2023年以降は家賃の上昇が落ち着き、横ばいもしくは調整局面に入っています。一方で、賃貸稼働率は高水準を維持しており、「価格は調整するが需要は底堅い」という状態が定着しています。さらに、2023年から2024年にかけて一時的に増加した新規供給はすでにピークアウトしており、2025年以降は竣工・着工ともに減少傾向にあります。
※③ 金利高でも賃貸需要が弱まらない理由
金利上昇は一般的に不動産需要の減退につながると考えられますが、米国の賃貸市場ではむしろ逆の現象が起きています。高金利により住宅購入を断念する層が増え、そのまま賃貸にとどまることで需要が維持・拡大しているためです。加えて、企業の立地拡大や雇用創出(特にテキサス州)も賃貸需要を下支えしています。さらに、単身世帯や転勤者、移民層の増加によって、賃貸志向が長期化している点も特徴です。こうした背景から、米国では「金利高=賃貸需要減」ではなく、むしろ需要を押し上げる側面が強い状況となっています。
※| エリア | マーケット | 空室率 | 賃料 | 傾向 |
|---|---|---|---|---|
| ロサンゼルス(カリフォルニア州)|2026年1Q | 低空室・安定型マーケット | 約5.6%(依然として低水準) | 平均賃料:約2,300ドル/月(前年横ばい) | 新規供給については、建設中の戸数が前年比で減少しており、供給圧力は限定的。一方で、家賃規制や建設コストの高さが影響し、賃料の大幅な成長は見込みにくい状況 |
| ダラス(テキサス州・DFW)|2026年1Q | 短期調整・中長期成長型マーケット | 約12.2%(供給過剰の調整局面) | 賃料成長率:▲2%程度(短期的調整) | 人口流入や雇用環境は全米でも非常に強く、中長期的な成長ポテンシャルは依然として高い。新規開発は急速に減速しており、2026年後半以降は需給バランスの改善が見込まれている。 |
森本「まとめると、米国賃貸市場は『金利高 × 住宅購入困難 × 若年層需要 × 供給減速』といった要因が重なり、稼働率が高止まりし、賃貸需要は引き続き堅調だといえます」(出典元:米国賃貸住宅市場・2026年1Q)
※リアル02|取引価格が公開される? 透明性の高い市場
日本では周辺物件の取引価格を調べるのは難しいですが、アメリカ(一部の州を除く)では過去の取引価格や賃料推移などのデータが広く公開されており、比較的簡単に確認することが可能です。
森本「客観的なデータをもとに投資判断ができるのが大きな特徴です。『昔はこの価格だったけれど、今は下がっているからチャンスだ』『平均2%ずつ上がっているから、5年後にはこれくらいになるな』といったデータを確認できるので、価格の妥当性や将来の収益をイメージしやすいんです」
さらに、取引には「エスクロー・エージェント」と呼ばれる中立な第三者が必ず介在します。契約書類の確認や権利調査などが全て完了してから資金が動く仕組みになっており、透明性の高い取引環境が整備されています。こうした仕組みにより、近年、同名のドラマで話題となった「地面師」のように他人に成りすまして金銭をだまし取るような詐欺も、第三者チェックや資金管理が働くことで発生しにくいとされています。投資家にとっては、安心感のある環境が整っているといえるでしょう。

リアル03|築年数より“住宅の状態”。手をかけるほど価値が上がる
日本は築年数が経つほど家賃が下がるケースが一般的ですが、アメリカでは物件の状態や管理状況によって家賃を引き上げることができます。
森本「私たちが手がけた第1号案件は、もともと前のオーナーが放置していた“おんぼろのアパート”でした。それをリノベーションして、家賃を月2,000ドルから4,000ドル(約60万円)まで引き上げることができました。築年数が同じでも、手を入れることで価値を高められた好例の一つです」
さらに、アメリカでは1年ごとに契約を更新するケースが多く、更新のたびに家賃を見直せます。そのため、リノベーションなどによる価値向上が比較的早く収益に反映できる仕組みになっているのです。
リノベーションして再販した物件の一例リアル04|エリアごとにルールが異なる? オーナーの権利の強さに差がある市場
家賃滞納が発生しても入居者の保護が強く、退去までに時間がかかるケースの多い日本と比べ、アメリカは契約条件によってオーナーの権利が認められやすい地域もあります。
森本「日本よりオーナー側が有利に進められるケースもありますね。例えばテキサス州北部のダラスは、手続きを進めれば数ヶ月ほどで強制退去の対応ができるとされています。ただし、全ての地域がそうというわけではありません。カリフォルニア州のサンタモニカは、オーナー側の意向だけでスムーズに退去を進めるのは難しいエリアです。こうした違いを理解せずに投資してしまうと、想定外のリスクにつながる可能性があります」(画像:Daito Kentaku USA ダラスオフィス(左から:Michiko Shimada、Mark Kieu、丹羽 亮賢、永野 卓也))

入居者保護の規制が厳しい地域や、売却時に特別な税制が適用される地域も存在します。こうした地域による違いに対応するためには、地域ごとの制度差や市場特性を理解している専門家のサポートが欠かせません。
成功のカギは「出口戦略」。購入から売却までの流れ

アメリカ不動産投資は、物件の選定から契約、運用、そして売却まで、複数のプロセスを段階的に進めていきます。ここでは、各フェーズのポイントと、大東建託のサポート体制についてご紹介します。
【選定から取得まで】スピード感が重要。競争の激しい市場で一歩リードする工夫
不動産投資の基本的な流れは「①投資方針の決定 → ②物件調査 → ③取得 → ④改修・入居者募集 → ⑤運用 → ⑥売却」と進みます。なかでも重要なのが、物件を見つけた際の初動のスピード。良い物件を見つけたら、まずは購入意向表明書(LOI)をどれだけ早く提出できるかが成約を左右します。
森本「アメリカの物件は価格が高いため『現金がないと買えない』と思われがちですが、現地金融機関の融資(ローン)を活用することも可能です。一方で、現在のアメリカは金利が高く、ローンを利用すると審査に時間がかかるケースがあります。そこで、現金で物件を即座に買い取る手法を取っています。物件を見つけてから最短5日で購入意向表明書を提出するスピード感が、優良物件を確保するうえで大きな武器になります。また、英語の契約書を理解するのは、多くの日本人にとって大きな壁です。私たちは仲介ライセンスを持ち、契約書の内容を日本語でサポートしています」
購入意向表明書が受理された後は、建物の状態や法的リスクを調べる詳細調査(デューデリジェンス)を実施し、第三者機関である「エスクロー・エージェント」を通じて決済と所有権移転へと進みます。
【運用から売却まで】プロにお任せ! 迷わず進める安心の仕組み
取得後は、改修や入居者募集といった運用フェーズに入ります。大東建託では、稼働率や家賃収入などの指標を継続的に確認しながら、きめ細やかに管理。そして、このプロセスでもっとも重要になるのが「出口戦略」です。
森本「不動産投資は、売りやすい物件を仕入れること、そして『この条件が整ったら売却する』という基準を最初から明確にしておくことが大切です。稼働が安定した、家賃収入が目標に達したなど、売却のタイミングを事前に設計しておけば、感情に流されずに合理的に判断できます」
こうした運用と売却判断を支えるため、大東建託では、現地の管理から資産運用、売却まで窓口を一本化。カリフォルニア州ロサンゼルスのような「安定市場」と、テキサス州のような「成長市場」を組み合わせてリスクを分散しつつ、日本の投資家が安心して状況を確認・決断できるワンストップ体制を整えています。
「まずは聞いてみる」から。アメリカ不動産投資の第一歩をサポート

海外不動産投資と聞くと、「本当に自分にもできるのだろうか」と不安を感じる人も少なくありません。インタビューの最後に、森本さんはそうした読者へ向けて、次のように語りました。
森本「これからアメリカ不動産投資にチャレンジする方に一番お伝えしたいのは、『分からないことだらけで当然。何でも聞いてほしい』ということです。それにていねいにお答えするのが私たちの役割ですから。日本側には専門のスタッフが16名おり、日本の営業時間中にいつでもご相談いただけます。また、現地側にはその土地で生まれ育ったプロを採用しています。長く住んでいるからこそ分かる『地の利』や市場感覚をもとにサポートします」
情報の透明性やインフレとの共存、中古物件を育てる楽しさなど、アメリカ不動産には、日本の市場とは異なる特徴とユニークな魅力があります。一方で、現地のルールや文化の理解は欠かせません。だからこそ、「現地を深く知るプロ」の存在が心強い味方になります。まずは「聞いてみること」から。あなたのアメリカ不動産投資の第一歩を踏み出してみませんか?
※本記事の内容は、掲載時点の情報です。記載されている会社名、サービス名、役職・肩書などは、現在と異なる場合があります。




















