PROFILE この記事の登場人物

三谷 彰則 代表取締役(ビー・エス・ケイ)
仮設トイレメーカー歴25年。「仮設トイレは臭くて当たり前」を疑い続け、製造コスト約8倍の「快適トイレ」を作る。建設現場・災害現場・イベント会場に快適な空間を届けることが使命。
フェスや建設現場などで誰もが目にする「仮設トイレ」。臭い、汚い、狭いといったネガティブなイメージを抱いている人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、“世界一きれいな仮設トイレ”を目指して「快適トイレ」を生み出した、株式会社ビー・エス・ケイ(以下、ビー・エス・ケイ)代表取締役・三谷彰則さんに、ケンタクアイ編集部が直撃インタビューを実施。仮設トイレの基礎知識や設備の進化、そして私たちの命を守る「災害時のインフラ」としての重要な役割まで詳しく伺いました。仮設トイレの最前線をご紹介します。
国内唯一の製法で「臭い」を防ぐ!? “仮設トイレ”の5つの疑問
意外と知られていない仮設トイレのこと。どのような種類があり、どのように設置するのでしょうか。まずは三谷さんに、仮設トイレの基本から伺いました。
疑問01. 「仮設トイレにはどんな種類がある?」
――街中やイベントでよく見かけますが、実際にはいくつのタイプに分けられるのでしょうか?
(左)ワンボックス型/(右)ユニット型疑問02. 「用途や場所で、作り方は変わる?」
――用途や場所によって使い分けられるんですね。となると、製造方法もメーカーによって異なるのでしょうか?
三谷「製造方法としては、一般的によく普及している『ブロー成形』(金型に溶かしたプラスチックを挟み、空気を吹き込んで膨らませる製法)と、『射出成形』(金型の隅々までプラスチックを噴射して作る製法)があります。『射出成形』は非常に強度が高く、表面に凹凸ができにくいという特徴があるのですが、国内でこの製法を採用しているのは、弊社だけなんです!」
疑問03. 「どんな場所で活躍してるの?」
――仮設トイレといえば、建設現場やイベント、災害時に使われるイメージが強いですが、意外なニーズもあるのでしょうか?
三谷「意外なところでは農園です。収穫時期に多くの人が集まるイチゴ農園とかですね。また、大きな工場において、常設のトイレだけでは数が足りない場合に補助として設置されるケースもあります。近年はキャンプ場での需要も高まっていますよ」
キャンプ場に設置された仮設トイレ疑問04. 「設置までの流れと導入コストは?」
――さまざまな場所で求められているんですね。実際にレンタルする場合、どのような流れで進むのでしょうか?
三谷「まず見積もりを行い、内容に合意していただいたら、設置日などを決めます。そして指定の場所にトラックで運び込み、設置します。この際、トイレが倒れないように転倒防止の処置を施すことが重要です。また、し尿(排泄物)のくみ取りは、各自治体の専門業者が行います」
――なるほど! では、1台あたりの導入にかかるコストの目安は?
三谷「弊社の高品質モデルをレンタルする場合、他社メーカーと比べるとやや割高です。しかしながら、タンク容量が大きく、くみ取り回数の削減ができることや、強度が高いため長期にわたって使用できるといったメリットがあります」
高品質モデルの導入コスト例
| 基本料(初回のみ) | 25,000円 |
| レンタル料(月額) | 35,000円 |
| 設置費 | 10,000円 ※そのほか、トラックの手配費用などが別途かかる場合があります |
疑問05. 「“世界一きれいな仮設トイレ”を目指したきっかけは?」
――三谷さんがそこまで品質にこだわり、“業界の常識を覆そう”と思った背景を教えてください。
三谷「私は別の業界から、家業を継ぐためにこの業界にやってきたのですが、当時の仮設トイレ業界は、価格競争ばかりで品質が置き去りにされていました。そこで、高品質で快適な商品で差別化を図ろうと考えたんです」
――確かに、“仮設トイレの質”についてはあまり考えたことがありませんでした。
三谷「そうですよね。約10年前、国土交通省が建設現場の環境改善に取り組んだ際、特に女性や若者が現場に来たがらない大きな理由として、『トイレが臭い・汚い』『トイレの施錠が不十分だから怖くて入れない』という声が上がっていました。そこで、国土交通省から『仮設トイレ業界を変えてほしい』とお声がけいただいたことが、快適トイレを開発する大きな原動力になりました。以来、業界全体の“仮設トイレの質”向上を目指して奮闘を続けています」
現場を劇的に変える「快適トイレ」の実力
実際に大東建託の一部の建設現場にも導入されている「ミストファン付き快適トイレ」。仮設トイレとの違いや「快適トイレ」を導入したことによる現場の変化について伺いました。
ミストファン付き快適トイレ「ミストファン付き快適トイレ」の主な性能・機能(大東建託仕様)
- 男女別・男女兼用の2タイプ
- 抗菌加工
- 防臭機能(フラッパー式)
- ソーラーパネル
- 天井LED
- デジタルロック(二重ロック)
- 換気扇
- 冷却装置(ミストファン)
- プッシュボタン式(+プッシュペダル)洗浄
- 収納ボックス(32L)
- 手洗い場
- 除菌クリーナー
- 擬音装置
――「快適トイレ」は実際に大東建託の現場にも導入されていますが、今までの仮設トイレとは何が違うのでしょうか?
三谷「気になりますよね? それでは、主な違いをまとめた表を見てみましょう!」
| 項目 | 従来型(一般的な仮設トイレ) | 快適トイレ |
|---|---|---|
| におい対策 | 気密性が低く、し尿のにおいが上がってきやすい。また、タンク内の凹凸ににおいの元が残ってしまい消えにくい | 高い気密性でにおいの逆流を抑制。タンク内に凹凸がないため、長期間使用してもにおいの元が残らない |
| 強度・構造 | 柔らかく強度が低い | 精密な設計が可能。パネルの強度が高く、重い収納ボックスなども安定して設置できる |
| 明るさ・広さ | 内部が暗く、狭くて閉塞感がある | 天井から自然光を取り込め、明るい。LEDライトを装備し、夜間でも安全に使用できる。また、広い空間を確保しているため、使用時の圧迫感が軽減されるとともに、内部に手洗いも設置可能 |
| ドアの精度 | 材質の収縮により、風などで勝手に開いてしまうことがある | 精度が高く、壊さない限り勝手に開くことはない。丈夫なロック機構を採用しており安全 |
| タンク容量 | 一般的に約350リットル | 約450リットルと大容量。くみ取り回数を減らせるためコスト削減につながる |
――見比べると、従来型の課題が「快適トイレ」で改善されているように感じます。
三谷「ありがとうございます! 現在流通している『ブロー成形』で作られた仮設トイレは、プラスチックが収縮しやすい性質を持つため、風や振動でドアが勝手に開いてしまったり、表面ににおいが染みつきやすかったりと、ネガティブな印象に直結する弱点があります」
――仮設トイレのにおいや使いにくさは、製造方法に原因があったんですね!
三谷「そうなんです。弊社の『快適トイレ』は、強度が高く気密性に優れている『射出成形』を採用しているため、においが逆流しません。さらに、長期間使用してもくみ取り時のお手入れで、においの元はきれいに洗い流されるので、タンク内ににおいが染みつきにくいのも特徴です。加えて、『快適トイレ』では天井を明るく設計し、ドアには二重ロックやデジタルロックを備えていますから、快適さと安心感が段違いです」
(左)「ミストファン付き快適トイレ」内部の様子/(右)外側のデジタルロック――すでに魅力的です! ほかにも便利な機能はあるのでしょうか?
三谷「初期モデルでは、換気扇や荷物置き用の大きなボックスをはじめ、ボタン式の水洗機能、清潔さを保つための抗菌加工、擬音装置、除菌クリーナーなどが搭載されていました。現在は、電源を供給するソーラーパネルや暑さ対策のミストファンが備わっているモデルもあります」
(左)換気扇とボックス/(右)ソーラーパネル
(左)便器周辺/(右)ミストファン
(左)擬音装置/(右)除菌クリーナー「トイレのストレス」が離職の原因に?
――『快適トイレ』は大東建託以外にも、さまざまな建設現場で導入が進んでいるそうですね。その背景には、どのような課題やニーズがあったのでしょうか?
三谷「建設業界では長らく、『仮設トイレが臭くて汚いから現場に行きたくない』という切実な声が上がっていました。“たかが仮設トイレ”と思う人もいるかもしれませんが、仮設トイレを快適に使えないストレスは離職の原因にもなり得ます。実際、現場のトイレが不快だからわざわざコンビニまで行ったり、トイレを我慢しながら作業したりする方もいたようです。それでは仕事に集中できませんよね。トイレを快適にすることは、労働効率の向上をもたらし、結果的に人材の定着にもつながる。その想いを実現するために『快適トイレ』を作りました」
――仮設トイレの進化は、建設現場の労働効率や人材確保にまで影響しているんですね!
三谷「その通りです。昔は、仮設トイレを設置(発注)する立場の人たちのなかには、『どうせ自分は使わないし、仮設トイレなんて安ければ安いほどいい』という考えの人がたくさんいました。私は、その意識を変えたかったんです。トイレ環境の改善は、そこで働く人を尊重し、最適な職場環境を提供することにつながります。働く環境が快適になればなるほど、建設現場は『誇りを持って働ける場所』になりますから」
災害時の命を守る。「トイレロス」と社会インフラとしての役割
災害が起きたとき、水や食料と同じくらい深刻な問題となるのが「トイレ」です。避難所で発生する「トイレロス」がもたらす命の危険とは? そして、仮設トイレが果たすべき社会インフラとしての役割とは? 三谷さんに伺いました。
「臭いから行きたくない」が招く命の危険
――災害時に問題となる『トイレロス』とは何か、どのような影響があるのかを教えてください。
三谷「排泄の我慢は、3時間から6時間の間隔で限界が訪れます。しかし被災地では、『臭くて汚い仮設トイレを使いたくない』という理由で、排泄を我慢するだけではなく、飲食を控える人が増えるんです。それが原因で体調を崩したり、最悪の場合、命を落とすケースもあります」
――“災害関連死”と呼ばれるものですね。
三谷「そうです。そのほかにも、避難所には和式の仮設トイレが設置されることも多く、足腰の弱い高齢者が便器や床に座り込んでしまったりすることで、感染症のリスクが高まります。また、従来の仮設トイレはタンク容量が約350リットルと少なく、災害時にくみ取り業者がすぐに来られないと、し尿が溢れて不衛生な状態で使用不能になってしまうこともあります。このように、『トイレロス』とは単なる不便さの問題ではなく、『命を守るためのインフラ』が機能していない状態のことなんです」
ビー・エス・ケイは、令和6年能登半島地震の発生後、避難所の小学校や公民館などに「快適トイレ」を設置災害備蓄の考え方を変える。「日常から緊急時へ」の転用
――それは深刻な問題ですね。緊急時にすぐ仮設トイレを使える状態にするために、平時からどのような準備が重要なのでしょうか?
三谷「緊急事態にいち早く対応するためには、特定の場所だけでなく、全国各地に拠点を持ち、連携できる体制を整えておくことが重要です。弊社は全国のパートナーと協力することで、被災地に近い場所から迅速にトイレを届けられる仕組みを整えています」
――全国規模でのネットワーク構築がカギになるんですね。
三谷「はい。仮設トイレを災害専用の備蓄品として抱え込むのではなく、『普段は建設現場などで使われている高品質なトイレを、災害時に被災地へ転用する』という考え方が重要です。普段から高品質なトイレを普及させておくことで、緊急時に『古くて使えない』という事態を防ぎ、常に即戦力として機能させることができます」
未来の仮設トイレはどう進化する?
――今後、仮設トイレはどのように進化していくと考えていますか?
三谷「利用者の“あったらいいな”という声に応える機能が、さらに標準化されていくことが予想されます。すでに一部で導入されている二重ロックや鏡付きの手洗い場、抗菌仕様、擬音装置などは、今後さらに多くの現場で求められるようになるでしょう。また、ソーラーパネルによる発電や換気扇の稼働といった、外部電源に頼らずに快適性を維持できる機能も、災害対応の観点から重要視されていくと思います」
――最後に、読者の方へメッセージをお願いいたします!
三谷「『仮設トイレは臭い、汚い、狭い』というイメージがある方でも、弊社の『快適トイレ』をご使用いただければ、ネガティブなイメージを払拭できる自信があります。『快適トイレ』を見かけた際は、ぜひ使ってみてください!」
“たかがトイレ”から、私たちの命を守る「インフラ」へ
高い気密性と防臭性を実現し、清潔な状態を長く維持することが可能にした仮設トイレは、建設現場の労働環境を劇的に改善するだけでなく、災害時には命を守る大切なインフラとして活躍しています。すべての仮設トイレが「快適」であることが当たり前になる未来。そのとき、私たちの働く環境や暮らしは、さらに豊かで安心できるものになっているはずです。

※本記事の内容は、掲載時点の情報です。記載されている会社名、サービス名、役職・肩書などは、現在と異なる場合があります。






















「一つはきっと皆さんが想像されている、独立した1棟タイプの『ワンボックス型』です。設置面積が小さいため、狭い建設現場や、多くの台数が必要な災害現場・イベント会場などで重宝されています。ほかには、部屋のようにしっかりとした作りの『ユニット型』や、ユニット型にタイヤがついたような車両とトイレが一体化した『トレーラー型』などもありますが、ワンボックス型よりも空間が広々としているぶん場所を取るため、多くのトイレが必要な場合には不向きなんです」