PROFILE この記事の登場人物

Chan Myae Khin〈チャン・ミェ・キン〉 介護スタッフ(ケアパートナー吉川)
ミャンマー・ピイ出身。2001年生まれ。ミャンマーの砂糖製造工場にて会計の仕事に就いたあと、父親の介護を経験し、介護職を志す。目標は「いつも笑顔を忘れず、明るく元気に働くこと」。

Ei Ei Thu〈イー・イー・トゥ〉 介護スタッフ(ケアパートナー吉川)
ミャンマー・ヤンゴン管区クンチャンゴン出身。2000年生まれ。ミャンマーの病院で2年間ナースエイド(看護助手)として勤務。目標は「チームの一員として、他のスタッフと積極的に協力して働くこと」。

古内 希恵 センター長(ケアパートナー吉川)
障がい者支援施設などで勤務後、2013年にケアパートナー株式会社に入社し、埼玉県にある「ケアパートナー吉川」に配属。パートタイムスタッフ、契約社員を経て正社員へ。2020年より現職。介護福祉士、ケアマネジャーの資格を持つ。
少子高齢化に伴い、人手不足が加速している介護業界。すでに多くの企業が、海外人材の受け入れに積極的に取り組んでいます。大東建託グループのケアパートナーでも、2026年4月に入国(入社)した、ミャンマーからの特定技能スタッフ(介護人材)の受け入れを開始しました。
今回は実際の介護現場を訪問し、日々業務に奮闘するミャンマー人スタッフの姿や、周囲のリアルな声を取材しました。彼らが現場にもたらすものや、大東建託グループが描く今後の展望に迫ります。
ミャンマーから来た介護スタッフの1日は?

ミャンマーから来日して2カ月のチャンさんとトゥさん。職場の近くの社宅に、二人で住んでいます。朝食を摂り、前日に作っておいたおかずをお弁当に詰めたら、自転車で出勤。8時15分頃に職場に到着します。
8時45分頃からお客さまのお出迎え。午前中は入浴介助がメイン

お客さまが続々とケアパートナー吉川に到着します。チャンさん、トゥさんは玄関へ。笑顔でお出迎えし、一人ひとりのお名前を呼びながらあいさつします。お客さまがテーブルに着いたら、お茶を出し、順番にバイタルサイン(体温・脈拍・血圧)を測定します。このとき、クイズや塗り絵のプリントを配ります。9時40分から11時頃は男性の、11時から12時頃は女性のお客さまの入浴介助です。心地よい時間を過ごせるよう、丁寧にサポートします。
12時頃から昼食。配膳と食事の介助
(左)椅子を拭き上げるチャンさん、(右)配膳を行うトゥさん 12時頃になると、センターの厨房で作った昼食を配膳し、お客さまに召し上がっていただきます。ご自分で召し上がるのが難しいお客さまのお手伝いをすることもあります。昼食後は歯磨きや口腔ケアの時間。トイレ誘導も行い、お客さまの介助をします。
午後はレクリエーションや体操を一緒に行い、お客さまと交流
14時頃からはレクリエーションやラジオ体操などの時間です。チャンさん、トゥさんも一緒に参加することで、心の距離を縮めます。

15時頃におやつを配ったら、お客さまは16時30分頃まで、カラオケなどを楽しみながら過ごします。送迎車が来たら、玄関までお見送り。朝と同じく、笑顔でお名前を呼ぶのを忘れません。
マシントレーニングで体力作りに取り組む
真剣な表情で麻雀や囲碁を楽しむお客さまのお見送り後は、翌日の準備やゴミ捨てを行い、17時30分に終業します。二人で帰宅した後は、夕食を摂り、翌日のお弁当を作ります。それからはそれぞれの部屋で思い思いの時間を過ごします。
(左)チャンさん、(右)トゥさんの手作り弁当。母国・ミャンマーの味が詰まっている 日本での介護で感じた「難しさとやりがい」

二人はなぜ、日本で介護職に就くことを決めたのでしょうか? 母国とは言葉や文化が異なる日本で働きながら、日々どんなことを感じているのでしょうか? それぞれにお話を聞きました。
介護の技術や質の高さに惹かれ、日本での就職を決意
お二人はなぜ、日本で介護の仕事をしようと思ったのでしょうか?
トゥ「私はミャンマーでナースエイド(看護助手)として働いていたので、その経験を活かしたくて介護業界に進みました。来日を決めたのは、日本の介護の技術や質がとても高く、学べることがたくさんありそうだと思ったからです」
実際に働き始めて、大変だったことはありますか?
チャン「一番苦労したのは、お客さまの名前を覚えることですね。日本語はたくさん勉強したのですが、漢字を読むのはまだ難しくて……。先輩たちがお客さまの席札にふりがなを振ってくれたので、なんとか覚えることができました」
トゥ「お客さまの話すスピードが速かったり、方言があったりすると、お話の内容がわからないことがあります。そんなときも、先輩たちが優しく教えてくれたのでとても助かりました。お客さま一人ひとりの特徴や、気をつけたいことも教えてもらいました」

チャン「家に帰ってからも、二人で『○○先輩はこう言っていたよ』『お客さまからこんなお願いがあったよ』と情報を交換し合って、できることを増やしています。支え合える仲間がいてよかったです」
ケアパートナー吉川 介護スタッフ Chan Myae Khin (チャン・ミェ・キン) 一番うれしかったのは「あなたがいてくれてよかった」という声
ミャンマーと日本では、高齢者のケアの方法に違いがあると聞きます。日本の介護現場で働く中で、驚いたことはありますか?
チャン「ミャンマーでは、お年寄りを敬愛する気持ちから、なんでも手伝ってあげることが多いんです。でも、日本ではお年寄りが長く元気でいられるように、できることはなるべく自分でやってもらいますよね。この違いに最初は驚きましたが、今は素敵だと感じています」

トゥ「日本では、お風呂に入りやすいように体を支えるリフトやリハビリ用の機械など、介護用品が充実していますよね。こうした機械があると、介護がしやすくなると実感しています」
日本で介護の仕事をしていてやりがいを感じるのは、どんなときですか?
チャン「やっぱり、お客さまが安心して笑顔になってくれるときですね。温かい気持ちになれますし、この仕事をやっていてよかったと思えます。最近は、お客さまの方から『チャンさん!』と話しかけてくれることが増えてうれしいです」
トゥ「お世話をしていて『ありがとう』『あなたがいてくれてよかった』と言ってもらえたときは、とてもうれしかったです。介護は私にとって、本当にやりがいのある仕事です。これからも一生懸命、お客さまのサポートをしていきたいです」
ケアパートナー吉川 介護スタッフ Ei Ei Thu(イー・イー・トゥ) ミャンマー人スタッフが加わってから、より明るく活気のある現場に
周囲のスタッフや利用者の方々は、ミャンマー人スタッフの仕事ぶりをどう受け止めているのでしょうか。センター長の古内さんに聞きました。
2026年4月末に、ミャンマー人スタッフが現場に加わりました。二人が来てから、職場の様子はどう変化しましたか?
古内「もともとスタッフ同士の仲がいい職場ですが、さらに和気あいあいとした雰囲気になりましたね。まだ配属されて2カ月なのに、二人ともあっという間になじみました。彼女たちが一生懸命働く姿に、私たちもいい刺激をもらっています。教えたことを素直に吸収して、どんどん成長してくれるのもうれしいです。いつも表情が生き生きしていて、楽しく働いてくれているのかなと感じています」
ケアパートナー吉川 センター長 古内 希恵(ふるうち・きえ) 二人の仕事ぶりで印象的だったのは、どんな場面ですか?
古内「配属直後は日本人でも緊張して指示待ちになってしまうのですが、積極的に動いてくれたので驚きました。コールが鳴ったり、お客さまが立ち上がったりしたときの反応も誰より速いですね。認知症状によってご自宅に帰りたがるお客さまにも、安心できるよう声をかけています。私たちが教えた以上のことが自然にできていて、素晴らしいです。登録しているお客さまは約200名いるのですが、すでに全員のお名前を覚えていたことにも感心しました。毎朝玄関に出て、一人ひとりのお名前を呼んであいさつしています」
利用者の方々は、二人が来たことをどう受け止めているのでしょうか。
古内「外国人スタッフが来るのは初めてなので少し心配でしたが、想像よりもすんなりと受け入れてもらえました。彼女たちが来る前からプロフィールを壁に貼り、文化の違いについて説明したり、ご家族にお手紙で通知したりしていたので、心の準備がしやすかったのかもしれません。明るく一生懸命働いてくれているので、お客さまからも評判です。今では、親しみを込めて名前を呼ぶ方も多く、気軽に話しかける姿も見られます」

二人と一緒に働く中で、気づいたことがあれば教えてください。
古内「二人とも、仕事に対する責任感や意欲がとても大きいんです。若くして親元を離れて外国で働けるのは、相当な覚悟があってこそだなと感じます。一方で、いつも楽しそうなのも印象的で。『楽しみながらも一生懸命やる』という姿勢は、私たちもぜひ見習いたいですね」
日本人も外国人も、すべてのスタッフがポジティブに働ける職場に
海外人材の受け入れは、深刻な人手不足に陥る介護業界を救うカギとなります。実際に受け入れを経験した古内さんが、リアルな心境や必要なサポートについて語ってくれました。
介護業界の人手不足が深刻化する中、採用にどんな難しさを感じることがありますか?
古内「介護業界は無資格でも応募できるので、その間口の広さに惹かれて応募してくる方もいます。ところが、実際に働くとなると、技術や専門性が求められる場面がたくさんあるんです。そのギャップによって、人が定着しづらいのが悩みです。とはいえ、お客さまのお世話をする仕事ですから『人が足りないから誰でもいい』とは思えません。前向きにスキルアップを目指せる方、お客さまのことを考えて動ける方に来てほしいという葛藤を抱き続けています。その点、今回来てくれたミャンマー人スタッフの二人はとてもモチベーションが高く、お客さまにも親身になって接してくれるので心強いです」

初めてミャンマーから人材を受け入れると決まったときは、どんな思いでしたか?
古内「外国人スタッフの受け入れが初めてだったので、正直なところ戸惑いはありました。文化や『当たり前』が全く違う方と一緒に働くイメージが描けなかったし、受け入れ後に日本人スタッフから『言葉が通じなくて仕事を教えられない』『指示が通らない』という声が上がったらどうしよう……と不安になってしまって。そんな中でも、本社のグローバル推進課の方が二人の日本語の習熟度を教えてくれたり、すでにほかのセンターで働いている外国人スタッフの事例を共有してくれたりしたので、最終的には安心して受け入れることができました」
二人の受け入れにあたって、どんなサポートをしていますか?
古内「日本語が堪能な方たちなのですが、漢字はまだ難しいと聞いていたので、お客さま全員分の名札にひらがなのテープを貼って読みやすくしました。また、指示の中に難しい専門用語が出てくるときは、かみ砕いて説明するようにしています。彼女たちはまだ20代半ばと若いので、メンターは子育て経験のあるスタッフにお願いしています。二人とも、業務内容の相談だけでなく『安いスーパーを教えてほしいです』といった相談もして、娘のように可愛がられているようです(笑)。ほかのスタッフとも仲がよく、手作りしたミャンマーの料理を『よかったら食べてください』と持ってきてくれたこともあります」
チャンさんが作った「ナンヂートウッ」。太い米粉麺にチキンカレーを和える、ミャンマーの汁なし麺 今後、大東建託グループ全体で海外人材が増えていく予定です。彼らとともに、どんな介護現場をつくっていきたいですか?
古内「私が目指す介護現場は、お客さまが楽しんで通える場所なんです。スタッフがネガティブな感情ばかりを感じているとお客さまも楽しめないので、日本人、外国人関係なく、すべてのスタッフがポジティブに働ける環境を整えたいです。その中でも、やはり外国人スタッフは言葉や文化の違いで壁にぶつかりやすいと思います。そんなときに、身近な日本人スタッフが『どうしたの?』『困っていることはない?』と進んで声をかけるような空気を醸成していきたいですね」
海外人材は職場に「新たな価値」を生み出す存在になり得る
意欲的な働きぶりが印象的だったミャンマー人スタッフの二人。単に人手不足を穴埋めするだけでなく、職場に新たな価値を生み出す存在として大切にされていることが伺えました。日本の介護現場がそうした人材にいっそう選ばれる職場になるためには、古内さんの語るような「日本人、外国人関係なく、誰もがポジティブに働ける環境づくり」を進めていく必要があるでしょう。
※本記事の内容は、掲載時点の情報です。記載されている会社名、サービス名、役職・肩書などは、現在と異なる場合があります。





















「父の介護を経験したことで『介護は自分に向いているかも』と感じ、仕事にしたいと思うようになったんです。日本では介護の仕事が重要視されているイメージがあったので、日本で働くことを決めました。日本のお菓子がおいしそうだったのも一つの決め手です(笑)」