PROFILE この記事の登場人物

鈴村 大介 キャリアデザイン部 部長(大東建託)
大東建託に1993年入社。本社設計部、支店設計担当として四日市支店、藤枝支店、豊橋支店に在籍。2004年からは、大東建託専用CAD開発に携わる。その後、設計部・商品開発部を経て、2019年に技術教育部長として、若手の育成および採用を担当。2026年よりキャリアデザイン部に改称し、技術系社員が「働きがい」を感じることができる職場環境創りを推進している。

増田 心吾 キャリアデザイン部 課長(大東建託)
大東建託に2002年入社。長野支店に施工管理職として配属された後、商品開発部や施工管理部など本社業務を経験、リフォーム事業の立ち上げや50周年プロジェクトリーダーを歴任し、現在はキャリアデザイン部で技術系社員が理想の将来像を描き、未来への希望を持って成長できる環境創りを推進している。
少子高齢化や働き方の変化などにより、日本のあらゆる業界で深刻化している「人材不足」。現場を支える働き手が減少する中、解決策のひとつとして「高度外国人材の受け入れ」が広がっています。大東建託でも高度外国人材の採用・育成が本格的にスタート。ウズベキスタンやインドネシアから迎え入れ、共に現場をつくり上げる挑戦を始めました。
今回は、この取り組みを推進するキャリアデザイン部の鈴村さん・増田さんにインタビュー。建設業界が抱える人手不足のリアルや高度外国人材採用の現在地、そして実際の現場事例から見えてきた「これからの多様な組織のあり方」について、お話を伺いました。
少子高齢化や働き方の変化で高まる高度外国人材の重要性。建設・不動産業界の人手不足の現状
建設・不動産業界に押し寄せる、人材不足の波。大東建託において、現在特に採用が急務となっているのが、現場を指揮・監督する「施工管理職」です。
大東建託株式会社 キャリアデザイン部 部長 鈴村大介(すずむら・だいすけ)
鈴村「現場で働く仕事は、夏の暑さや冬の寒さなど天候の影響もあり、決して楽な環境ではありません。熱中症対策が企業の義務となり、ファンが付いた空調服などで環境を整えても、そうした過酷な労働条件に抵抗感を抱く方は多いと感じます。実際の採用現場でも、エントリー数は目に見えて減ってきているんです」
そうした状況を受け、大東建託では工業高校出身者や女性の採用強化など、様々な手立てを講じてきたものの、それだけでは中長期的な人材確保が難しくなりつつあります。そこで次なる一手として着目したのが、「高度外国人材」の採用です。
鈴村「コンビニやファミレスと同じように、今や建設現場も『外国人がいない現場はない』と感じています。ただ、現在現場で働いている外国人の多くは、技能実習や特定技能といったビザで来日した『職人(現場作業員)』の方々なんです。そんな中で、現在大東建託は高度外国人材を施工管理職として採用しています。施工現場の安全や品質などを管理し、多くの業者さんに指示を出し、さらに現場近隣の方々とも対話しなければならないため、非常に高い日本語能力とコミュニケーションスキルが求められます。そのような施工管理として実務を行っていくために技術・人文知識・国際業務ビザを取得していただいています」
大東建託株式会社 キャリアデザイン部 課長 増田心吾(ますだ・しんご)
増田「技術・人文知識・国際業務ビザを持ち、施工管理職として活躍するためには、母国にいる段階ですでに高い日本語力や基礎能力を備えている必要があります。だからこそ、ただ採用枠を広げるのではなく、私たちが教育の段階からしっかり入り込んでいくような取り組みを始めました」
「日本で働きたい」思いに応える。現地の大学との育成プロジェクトで大切にしていること
大東建託では現在、インドネシアとウズベキスタンの2カ国を対象に、高度外国人材の採用と育成を進めています。
インドネシアでは、現地の大学と連携して独自の講座を開設。2年間で日本語、日本文化、そして建築技術を大学の授業で学んだ上で面接・入社するスキームです。すでに2025年8月からこの講座がスタートしており、第1期生は2027年度の入社を目指して日々学習に励んでいます。

鈴村「講座では、日本語の学習に最も力を入れています。ただ、母国を離れて仕事をするって、やっぱり寂しいときもあると思うんですよね。そんな中でも日々働いていくには、『今いる場所が好きかどうか』がとても大事だと考えています。お給料をもらえればそれでいいかもしれないけれど、それだけでは心が疲れてしまいますから。だからこそ、アニメや音楽、食文化など、日本の魅力を伝えることも授業に取り入れています」
大東建託では、2025年8月12日からインドネシアの国立大学「シンガプルバンサ・カラワン大学(UNSIKA)」にて、建設業の施工管理技術者を育成するための専門講座を開講。海外の優秀な人材を育成・確保するためのプログラム例をご紹介します。
施工管理の未来を担う人材を海外で育成。インドネシアで専門講座を開講
一方ウズベキスタンでは、現地の大学で技術分野を専攻しながら、日本での就業を目指して日本語講座で学んだ学生を採用。2024年12月に5名、2026年3月には3名を受け入れました。彼らが日本の新卒社員と合流するまでの数カ月間は、日本語の学習や生活の立ち上げに専念する期間に充てています。

大東建託が取り組んでいるウズベキスタンでの採用活動は、国内における理系学生の減少や建設業界の人手不足、働き方改革の進展などを背景に、優秀な高度外国人材の確保を目的として、2024年より開始されています。2025年は、第2期採用を継続しています。
ウズベキスタンにおける高度外国人材の第2期採用を開始
日本人と同じように活躍してほしいから。海外メンバーへのサポートは「大切な投資」
増田「また、渡航後の生活面については手続きなどを中心にバックアップしています。社宅、日本での生活に不可欠な銀行口座の開設や携帯電話の契約なども、人事部がサポートしてくれていますね。給与などの待遇は、もちろん日本人の新卒社員と同等です。さらに、就労後の大きな壁となる国家資格(施工管理技士)の取得を後押しするため、独自の学習ツール『まるごと国家資格パスグローバル』も導入しました」
「まるごと国家資格パスグローバル」は、難しい専門用語をビジュアルと共に学べる学習プログラム
鈴村「彼らには正社員の『施工管理職』として入社していただいているので、独り立ちした際には、日本人の社員と同じように活躍してもらいたい。だからこそ、ここにかけるサポートや待遇は、日本人の新卒社員を育てるときと同様、人材育成のための大切な投資だと考えています。海外から来る以上、言葉の壁はどうしてもありますが、それ以上に彼らは『日本で働きたい』『大東建託の施工管理職になりたい』というモチベーションが非常に高いんです。そんな強い思いを持っている彼らであれば、その壁も乗り越えてくれるという期待を持っています」
入社初年度から現場の第一線へ。企業のフラットな目線が壁を溶かしていく
現在、ウズベキスタンメンバーはすでに現場に配属され、所長や先輩社員とチームを組んで施工管理職としての第一歩を踏み出しています。

増田「私も現場を見に行くんですが、彼らはすでに立派な現場監督の仕事をこなしているんですよ。年の近い先輩たちと一緒にチームに入って、施工状況の検査をしたり、品質管理のための写真を撮ったり、施工記録を残したり。今後は、図面を読んで職人さんに指示を出すなど、成長にはいろいろな段階がありますが、基本的な管理業務や検査の立ち合いはすでに問題なくできています。現場でそんな彼らの姿を見ると、やっぱりうれしくなりますね」
お祈りや断食の文化も、向き合い方は人それぞれ。対話で見つける、お互いの落とし所
懸念されがちなコミュニケーションや文化の違いも、雇用側のルールを一方的に押し付けるのではなく、一人ひとりの意思や状況に寄り添いながらお互いのちょうどいい落とし所を探っています。

増田「彼らの配属時には、配属先の所長とすり合わせをして、個別に相談してもらっています。『宗教に対する信仰度も人それぞれ違うから、現場でよく話し合ってくださいね』と、彼らを柔軟に受け入れるための基本的なマニュアルも作りました」
鈴村「ラマダン(断食)の期間は水も飲んではいけないと聞いたので、面接のとき『日本の夏は暑いよ。暑くて倒れそうになったらどうする?』と聞いてみたんです。そうしたら『そういうときは飲みます』と答えてくれて(笑)。意外と現実的な話し合いやすり合わせができるんですよね」
対話を重ねて歩み寄った結果、今ではすっかりチームの一員に
鈴村「彼らは礼儀正しく、挨拶もしっかりできます。外国人だからと遠慮することなく、よく喋って周囲とコミュニケーションを取ろうとしてくれるので、現場の抵抗感もすぐに払拭されました。入社後に行った宿泊研修の朝食会場でもウズベキスタン人同士で固まらず、日本人の輪の中に積極的に入っていたのが印象的でしたね」
増田「ウズベキスタン出身のメンバーに『アルスロン』というメンバーがいるんですが、現場でも『アルちゃん』なんて愛称で呼ばれて、とてもかわいがられているんですよ。休憩中にみんなで雑談したりして、日本人同士の普通の会話と変わりません。『ぶっちゃけ』なんて言葉も使うようになっています(笑)」
大東建託で働くウズベキスタン人社員の3人に、日々の暮らしや仕事についてインタビュー。「カルチャー・趣味」「食べ物」「建物」「習慣・コミュニケーション」の4つのテーマから、気になる疑問をあれこれ聞いてみました。
日本での暮らしや仕事、どうですか? ウズベキスタン人社員に聞いた10の疑問
増田「言葉がカタコトだと、どうしても能力を低く見られがちですよね。でも、母国語で話せば彼らは本当に優秀なんです。私だったら、ウズベキスタン語を喋れるようになるまで、たぶん2、3年かかっても難しいと思うので(笑)。会社がそうしたフラットな目で見てあげることが、彼らがいきいきと現場で働いていくために大切なことだと思っています」

これからの未来を共に創る。多様な人材が活躍できる組織に
大東建託の高度外国人材の採用は、まだ始まったばかりです。今年6・7月にはウズベキスタンのメンバーたちが施工管理技術検定試験の受験を終え、2級の一次検定に2名、1級の一次検定に1名が合格しました。さらに、その結果を経て新たに見えてくる育成の壁もあるはずです。しかし、この取り組みが確かな実績となり、さらに広がっていけば、一企業の採用活動という枠を超え、日本の建設業界、ひいては日本社会全体の多様性を大きく押し広げる可能性を秘めていると、ふたりは語ります。
鈴村「まずは企業側がしっかりと、高度外国人材の教育体制や労務環境を整えていく。どうしても世間では、外国人労働者をめぐるトラブルなど、悪い側面が目立ってしまいます。でも実際には、ルールを守って真面目に働いている方々もたくさんいますよね。そのような状況が浸透していけば、真面目に頑張っている人たちがきちんと評価され、『日本人』『外国人』といった変な境目もなくなっていくのかなと思います。この取り組みが多様性を受け入れられる国づくりへの一助になればうれしいですね」
増田「現在、正社員として海外の高度な外国人材を採用し、ここまで本格的に取り組んでいる企業はまだ多くないと思います。だからこそ、私たちがこの分野の第一人者になっていきたいと考えています。『高度外国人材の育成なら、大東建託に聞けば間違いない』と業界内外から頼られる存在を目指して、これからもノウハウをしっかりと構築していきたいと考えています」
大東建託が切り拓くこの先進的な取り組みは、人材不足に悩む多くの日本企業にとって、確かな希望とひとつの解決策を示すロールモデルとなっていくはずです。社会の最前線で、国境の垣根を越えて日本の現場を支える新たな仲間たち。多様な人材が真の意味で活躍し合える未来は、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。

※本記事の内容は、掲載時点の情報です。記載されている会社名、サービス名、役職・肩書などは、現在と異なる場合があります。





















「少子高齢化で若い人が少なくなると言われ続けてきましたが、それが今、はっきりと表れてきています。加えて、働き方の価値観が以前と大きく変わったことも、人材不足に拍車をかけている大きな原因だと感じています」