
PROFILE この記事の登場人物

溝口 貴康 インターナショナル店 店長(大東建託リーシング)
2006年2月入社、いくつかの神奈川県下の店舗で担当職を実践。管理職として東海事業部内の店舗を経験し、その後グローバル事業部のインターナショナル店を拝命し現在に至る。

守本 拓 グローバル事業部 次長(大東建託リーシング)
2006年4月入社。千葉、埼玉、群馬県の店舗にてルームアドバイザー職・管理職を経験。2021年4月よりグローバル事業に従事。インターナショナル店の設立や行政連携等に携わる。2025年4月より良部屋商务咨询(上海)有限公司董事に就任。
日本で暮らす外国人が年々増加するにつれ、外国人入居可の住宅の需要も高まってきています。しかし、言語の壁や文化の違いなどの理由から、外国人の入居を断る物件や、入居できた後もトラブルが起きるケースが少なくありません。在留外国人の住まい探しには、さまざまな壁が潜んでいます。
そんな高いハードルが立ちはだかる在留外国人に対し、「いい部屋ネット インターナショナル店」では、不動産の専門知識を持つさまざまな国籍のスタッフが外国人入居者への対応に尽力しています。今回は、インターナショナル店で外国人入居者へのサポートを行っている担当者に、外国人の部屋探しの難しさや、入居後にありがちなトラブルなど、在留外国人を取り巻く3つの壁について伺いました。
【部屋探しの壁】日本に住む外国人が増え続ける一方、入居を断られるケースが多い?
引用:令和6年末現在における在留外国人数について(法務省)2025年6月末の法務省の調査では、日本に住む外国人は395万人と過去最多。この4年で90万人も増加しています。一方で、外国人を受け入れる物件はまだまだ足りていません。そんな在留外国人の住まい探しの現状について「いい部屋ネット インターナショナル店」の溝口さんと守本さんに伺いました。
そもそも、日本に住む外国人はどこの国の方が多いのでしょうか?
年々日本に住む外国人が増加しているとのことですが、移住される方の背景について教えてください。
溝口「もちろん就労目的の方もいらっしゃいますが、最近は『日本の文化が好きだから』という方が増えている印象です。そうした方はもともと日本のアニメや漫画、ファッションや音楽のファンで、好きが高じて来日されています」
守本「旅行をきっかけに日本の文化を知り、そこからアニメや音楽を『視聴する側』から『作る側』になりたいという夢を持って、日本の専門学校に進学する方も増えていますね。そのため、30歳くらいまでの若年層が多い印象です。あとは、定年退職後に『日本語を学びたい』という理由で来日される方もいらっしゃいます」
大東建託リーシング株式会社 インターナショナル店 店長 溝口 貴康(みぞぐち・たかやす)昔は、日本の賃金が高かったので海外から出稼ぎに来るケースが多かったと思います。今は日本の賃金は低下傾向ですが、それでも日本で働きたい方は増えているのでしょうか。
溝口「中華圏の方にとっては、日本で進学や就職をすることはキャリアアップにつながりやすいんです。確かに日本の給与は高くはありませんが、将来を見据えて留学したり、ファーストキャリアに日本企業を選んだりする方は多いですね」
守本「確かに以前は出稼ぎ目的で来日する方は多かったようですが、現在は技能実習や特定技能のように日本で技術を学んで、将来的には母国で活躍される方や、日本の文化や治安の良さに魅力を感じて来日される方も非常に多いです」
そうして在留外国人が増えている中、外国人の住まい探しはどのような状況にありますか?
溝口「ここ10年で、外国籍の方からの問い合わせは圧倒的に増え続けています。その需要に対して外国人を受け入れる物件も増えてはいますが、全く追いついていないのが現状です」
やはり、オーナーや管理会社によって断られるケースが多いのでしょうか?
溝口「最初から『外国人お断り』という物件もありますし、審査してみて断られるケースもあります。大東建託グループで管理している物件の約99%は外国人のお客さまがご利用いただける状態となっていますが、不動産業界全体としてはまだまだ課題があると思いますね」
守本「当社ではグループ内で連携した取り組みにより外国人の受け入れが進んでいますが、業界全体を見渡すと『外国人だから』という理由で入居が断られる実態もあります」
大東建託リーシング株式会社 グローバル事業部 次長 守本 拓(もりもと・たく)オーナーが外国人の入居を断る際、主にどういった理由が聞かれますか?
溝口「近隣住民とのトラブルを懸念されるオーナーさんは多いですね。あと、外国籍の方は期限が来たら帰国する方がほとんどなので、『長期間住んでくれないから』というビジネス的な観点から断るオーナーさんもいます」
【入居時・入居後の壁】入居が決まっても、言語や文化の違いからトラブルが起きやすい

無事に入居可の部屋が見つかったとしても、そこで終わりではありません。その後に必要となる契約手続きで審査に移行できなかったり、入居後の生活で言語や文化の違いからトラブルに発展したりすることもあります。その実態について、事例を交えながらお話を伺いました。
物件が見つかった後は、契約手続きに移りますよね。その段階で障壁となる問題は何でしょうか?
溝口「在留資格や滞在期間・滞在目的、管理会社によって必要書類が異なるため、お客さまの状況を把握したうえで説明し、取得する必要があります」
守本「例えば、新規で来日する予定の留学生の場合、進学先が決まった後には在留資格取得に向けた申請、ビザ発給手続きをし、発給できた後に初めて来日ができます。そうした来日プロセスを進めながらお部屋探しを進めていく際に、まだ在留許可が下りないことで契約ができないケースもあり、私たちも申請プロセスの進捗状況を把握しながら進める必要があります。
また、入居条件として日本人の緊急連絡先や身元保証人が必要な他社の管理会社も多数あります」
「いい部屋ネット インターナショナル店」では、緊急連絡先は日本人に限定していないのでしょうか?
溝口「そうです。母国の親族でもいいですし、学校や勤務先を緊急連絡先にすることも可能です。一般的に緊急連絡先が日本人に限定されているのは、何かあったときに、入居者と管理会社との間に通訳が必要になるためなんです。その点、当店は入居後もスタッフが通訳をするので、緊急連絡先の相手が日本語を話せなくても困らないんですよ」
インターナショナル店内のコールセンター。あらゆる言語に対応できるよう、多様な国籍のオペレーターが在籍している一般的には、言語の壁によってどのような問題が生じるのでしょうか?
溝口「言葉が通じないことで、部屋探しの条件を聞き出すのも難しくなりますし、外国人の方も不安を感じやすくなります。仮に審査が通ったとしても、契約時に必須の重要事項説明が伝わりません。ライフラインに関する説明もできないので、かなり大変ですね」
重要事項説明なんて、日本人が日本語で聞いても難しいですよね。
溝口「はい。そのため当店では、まず宅地建物取引士が日本語で説明し、それをスタッフが通訳しています」
守本「日常会話ならアプリや生成AIでも意思の疎通ができますが、賃貸契約における専門用語となると、普通の通訳さんでも難しいんですよね。当店の外国籍のスタッフは賃貸契約に関する専門知識があり、中には宅地建物取引士の資格を持つ人もいるので、通訳する際も専門的な説明が可能なんです」

契約を無事に終えて入居した後、生活する中でトラブルが発生してしまったケースはありますか?
溝口「多いのはゴミ出しトラブル。日本の分別ルールを知らずに間違えてしまう例が多いですね。あとは、音楽を大きな音で流してしまうとか、駐車場でお酒を飲んでしまうとか。彼らがもともと暮らしていた国からすると何も疑問に思わない日常的な行動や風景ですが、日本ではマナー違反になりますよね。悪気はないものの、そういった文化の違いがトラブルの原因になりやすいです」
守本「日本の部屋表記では、1階の部屋は『101号室』など、階数と部屋番号が一致しています。一方、海外では日本でいう1階をグランドフロア、2階を『101号室』などと表記する国もあり、部屋の階数の認識が異なる場合があります。そのため、お客さまが2階と思って申し込んだ部屋が、実際には日本の1階だったというトラブルが過去に発生したこともあります。こうした表記の違いによる誤解を防ぐため、契約前に丁寧な説明を心がけています」
やはり、文化の違いからトラブルが起こりやすいんですね。
守本「他にも、言語の違いでトラブルに発展することもあります。例えば、水道料金の初回の引き落とし手続きが間に合っておらず、通知に記載されている日本語が分からずに困っていたら水道が止められた…… という方がいました。
外国人の方々としても、トラブルを起こそうとしているわけではなく、日本のルールや文化を知らなかったことが原因でトラブルに発展してしまうケースが多いように感じます。ただし、実際に起こってしまったトラブルが与えるインパクトも大きく、結果的に外国人の入居可否に影響を及ぼしているのが実態だと思います」
そんなトラブルを避けるために、「いい部屋ネットインターナショナル店」ではどんな取り組みを行っているのでしょうか?
溝口「ご契約の際には母国語でご契約内容の説明はもちろん、入居のルールや過去のトラブル事例をご説明するようにしています」
実際に配布している、生活ルールや部屋の説明などを記載したマニュアル
守本「当社は新規来日のお客さまをサポートする専門部署があり、そこでは来日前にオンラインで日本の不動産に関する説明会や日本生活マニュアルをご提供し、来日する前から日本と母国との不動産に関する違いや過去に起こったトラブル、災害時の連絡先などをご説明しています」
【サポートの壁】外国人の受け入れに欠かせない住居問題。行政や自治体がすくいきれていない課題とは?

最近では神奈川県や大阪府など、外国人専用の窓口を用意する自治体が増えてきていますが、まだサポート体制は万全とはいえないのが現状。そんな在留外国人へのサポートの面では、どのような壁が潜んでいるのでしょうか。
行政や自治体で、外国人の住まい探しを支援している窓口はあるのでしょうか?
溝口「外国人専用窓口を用意する自治体も増えてはいますが、自治体の窓口の方は不動産の知識があるわけではありません。そのため、結局は提携している仲介業者に『こういう案件があります』と相談するしかないんです。きめ細かなサポートができているかというと、まだ課題は多いと思います」
守本「現在は、支援に積極的な行政や団体が増えてきている印象です。就労や行政手続き、金融など、受け入れを促進していくとたくさんの課題が発生しますが、その中でも住居は中長期的に滞在する上で不可欠な要素です。そのため、行政だけでは解決できない課題を、当社も積極的に協力しながら取り組んでいます」
入居後に外国人入居者と管理会社との間にトラブルが起きた際、ケアを行ってくれる機関はあるのでしょうか?
溝口「行政でも取り組んでいるところはありますし、入居後の対応であれば『大東建託パートナーズ』でも行っています。基本的には大東建託パートナーズで多言語対応をしている『24時間いい部屋サポートセンター』が対応しますが、それでも伝わらない場合は当店のスタッフが通訳に入ることもありますね」
住まい探しだけではなく、入居後のサポートも行っているんですね。そんなインターナショナル店が特にこだわっている部分や強みについて教えてください。
溝口「当店は外国籍のお客さまの契約件数が段違いです。蓄積してきた経験があるからこそ、『このお客さまにはこういう物件がいいのではないか』と、一人ひとりに最適な提案ができています」
守本「インターナショナル店を設立以降、他社の管理会社との連携も積極的に進めてきました。外国人の受け入れを促進していくためには当社だけではなく、受け入れにご理解をいただける会社との協力が不可欠です。そうした連携を重ねた結果、今では外国人の方がご利用いただける物件情報を多数保有している点が当社の強みになっています」
言語や文化の違いの壁を突破するために
日本に住む外国人が急増する中、外国人のお部屋探しを取り巻く状況にはまだまだ課題が多いもの。「外国人はトラブルを起こす」という根深い偏見があるものの、ほとんどのトラブルは文化の違いから起こるものであり、多くの外国人は「日本のルールを守りたい」と考えています。「いい部屋ネットインターナショナル店」では、専門スタッフによる手厚いサポートや生活マニュアルの配布で、そんな文化の違いによる摩擦の防止に務めています。言語や文化の違いがもたらす壁を取り払い、誰もが安心して暮らせる社会の実現に向けて、大東建託は歩みを進めていきます。




















「中国が最も多く、次いでベトナムと韓国です。この3カ国で、在留外国人全体の半数以上を占めています。居住地として多く選ばれるのは東京都で、続いて大阪府・愛知県・神奈川県・埼玉県に住む方が多いです」