
PROFILE この記事の登場人物

工藤 岳 施工管理部 特建工事センター(大東建託)
2017年入社。名古屋南工事部にて2年間工事課業務をしたのち、世田谷工事部に異動。世田谷工事部異動後は主にRC造の施工管理業務に従事。現職に至る。
2025年6月、企業において熱中症対策が義務化されることに。建設業は屋外作業が多く、熱中症リスクが特に高い業種の一つであるため、その対策法が注目されています。
そこで今回は進化する建設現場の熱中症対策に注目! 経口補水液や空調服、ライブカメラなど、建設現場の熱中症対策を5つ紹介します。
2025年6月、熱中症対策が“企業の義務”に

夏が近づくと耳にする機会が増える「熱中症」。2025年6月から「労働安全衛生規則」が改正され、企業における熱中症対策が罰則付きで“義務化”されます。背景にあるのは、深刻化する気候変動と、それに伴う労働災害のリスク。実際、熱中症による死亡率は他の労働災害に比べて5~6倍も高いという状況です。とりわけ、屋外での作業が多く、気温・湿度・日射しといった暑さ要因が直撃する建設現場の熱中症対策は喫緊の課題。重症化の大きな要因である初期症状の見逃しや対応の遅れを防ぐための対策が、企業に求められています。
規則改正を受けて改良した啓発ポスター。ピクトグラムを使用して、より“一目でわかる”デザインに塩飴や空調服…… 現場ではどんな対策を?
「熱中症対策が義務になる」と聞くと、これから対策が強化されるようにも感じますが、現場では規則改正以前から先んじた工夫や取り組みが導入されています。
そこで訪れたのは、東京・蒲田のとある建設現場。現場をまとめる工藤さんに、具体的な熱中症対策を教えていただきました。
大東建託株式会社 施工管理部 特建工事センター 工藤岳(くどう・がく)対策01|塩飴や塩タブレット、経口補水液
現場の作業員の方にとって一番身近な熱中症対策は、休憩スペースである詰所の横に常備された、さまざまな飴やタブレット。冷蔵庫には「OS-1」などの経口補水液もあり、猛暑日だと1日に約20本も消費されるのだとか(もちろん、塩分・糖分の過剰摂取につながるため飲みすぎは禁物です)。

このスペースには、熱中症の注意喚起をするポスターも貼られています。日本語に不慣れな外国人技能実習生のために、ベトナム語やインドネシア語での説明も用意されています。

対策02|冷却スプレーや氷のうなどの冷却グッズ
塩飴や経口補水液と同じ場所に常備されているのが、身体にかけるとひんやりするスプレーや、パンチすると瞬時に冷たくなる保冷剤などの冷却グッズ。

冷凍庫の氷をジッパー付き袋に入れて、氷のうとして使うこともあるそうです。
太い血管が通っている脇の下、首筋、股下などに当てるのがポイント
工藤「熱中症は、直接的に身体を冷やすことがもっとも効果的な対策です。冷却グッズはひんやりして気持ちいいので、みんな熱中症の疑いがなくても使っていますよ(笑)」
ひんやりアイテムとして、取材先の現場には新たに自動のかき氷機も導入されたのだとか!
食品や冷却グッズは一式、詰所の横に。体調不良者が出た場合に備えて応急セットも常備対策03|ペルチェ式の空調服
さあ、ここから少しマニアックになってきます。
現場作業員の必需品といえば空調服。ファンで風を送るタイプのものが一般的ですが、猛暑日は熱風が循環するだけで、劇的な涼しさは感じづらいのだそう。そこで近年、「ペルチェ式」と呼ばれるタイプが主流になっています。ペルチェとは両脇の下についている円形の金属素子。電源を入れるとキンキンに冷えるため、身体に当てると冷却効果が得られます。

工藤「昔はかさばるからという理由で空調服を避ける人もいましたが、みなさん一度着ると手放せなくなるようです」
見た目の暑さは2倍だが涼しさは体感約2倍大東建託では、現場作業員向けの通販サイト「すまちく建材店」で、ファンとペルチェの両方を備えた空調服を安く提供しています。
対策04|熱中症指数計「みはりん坊」
現場に必ず設置されているのが、暑さ指数(WBGT)を計測する「みはりん坊」。朝礼時には、みはりん坊に表示されたWBGT値や予想最高気温、湿度などを、作業員全員で確認しています。

「暑さ指数(WBGT:湿球黒球温度)」とは、熱中症の危険度を測る指標のこと。気温・湿度・輻射熱(日射しを浴びたときに受ける熱や、地面、建物、人体などから出ている熱)の3つの要素を考慮して算出された、いわば体感的な暑さの指標です。例えば同じ30℃でも、湿度が高く風のない日だと、体はより暑さを感じるはず。WBGTでは、そうした状況を数値で見える化。WBGTが28を超えると、熱中症のリスクが一気に高まります。(参考:環境省「熱中症予防情報サイト」、厚生労働省労働基準局)。

工藤「たとえば『今日はWBGT値が29なので30分に1回は休憩しましょう』というように、WBGT値によって休憩の頻度を変えています」
また、高所での作業中など、「みはりん坊」をすぐに確認できない場合のため、鉄骨の上部にはランプがあります。WBGT値が28に達すると点灯し、これを見て休憩頻度を増やすなどの判断をするとのこと。

対策05|ライブカメラ
全国の現場730箇所に設置されているライブカメラでは、天候や作業状況といった現場の状況がリアルタイムで把握できます。

本社のモニターでは、全国各地の現場が一覧で表示
工藤「現場にいない管理者も遠隔で危険度をチェック。見守りの目が、暑さ対策をしっかり支えています」
油断は禁物。早期の発見・対処と周知が熱中症予防に
建設現場で特に熱中症になりやすいのは、日陰のない屋外で作業する基礎工事の作業員や足場のとび職の方々。一方、屋内だから安全というわけでもありません。風が通りにくく、熱がこもりやすい屋内作業では、内装業者の方々もこまめな休憩や水分補給を欠かさないようにしています。また、普段オフィス勤務の人が夏場に屋外で作業するケースも要注意。屋外の日射しや暑さに慣れていないため、体の中に熱がこもり、熱中症を発症しやすくなるのだそう。
作業中は問題なくても、帰宅してから遅延型の熱中症を発症する可能性もあります。熱中症の発生件数は7月と8月が多いものの、実は体がまだ暑さに慣れていない5月や6月も油断は禁物。日射しを浴びた日は、冷却枕や冷却シートなどで体を冷やし、熱中症を予防することが大切です。
外部メディアでも紹介されました!
大東建託グループの熱中症対策は各種メディアでも紹介されています。下記の他、プレス関係者向けの「熱中症対策セミナー」も実施しました。
■テレビ番組での紹介
- テレビ朝日(5月14日)|【報道ステーション、ANNニュース、グッド!モーニング】「罰則付き熱中症対策義務化へ」を公開
- TBS(6月2日)|【Nスタ】企業の熱中症対策が義務に
- 日本テレビ(5月16日)|【DAY DAY】「来月から熱中症対策義務化へ 工事現場安心して仕事を」を公開
■新聞・通信社による報道
- 産経新聞(5月27日)|企業の熱中症対策、6月1日から「早期発見」義務化 対策怠れば拘禁または罰金
- 日本経済新聞(5月27日)|大東建託、冷却ベストを現場監督1500人に貸与 熱中症対策
- 時事通信(5月31日)|職場の熱中症対策、1日から義務化=罰則付き、企業の準備進む
- 朝日新聞(6月1日)|職場の熱中症対策強化、義務化スタート 空調ベストにライブカメラも
- 共同通信(6月1日)|事業者罰則きょう施行/職場の熱中症対策 義務化/労災遺族 細心注意訴え















「現場で取り揃えている塩飴や経口補水液は、作業員の方の好みをうかがいながら現場監督が用意しています。最近、特に人気なのはカリカリ梅。今日は完売していますね」