
PROFILE この記事の登場人物

近藤 佑太朗 代表取締役 CEO(Unito)
幼少期をルーマニアで過ごし、明治学院大学・クロアチア留学を経てスタートアップの現場へ。2020年に「Unito」を立ち上げ、「帰らない日は家賃がかからない」新しい住まい方を提案。大手デベロッパーとの協業を通じ、不動産業界に変革をもたらしている。サードプレイスは「渋谷スクランブルスクエア」内にある眺望のいいシェアオフィス。

大田 優磨 執行役員 ビジネス開発本部 部長(Unito)
2021年に独立後、Unitoに参画。不動産デベロッパーとのアライアンス営業を担い、事業拡大に大きく貢献。多様なステークホルダーとの連携を推進し、2024年より執行役員営業部長に就任。業界との接点を広げながら、新たな住まいの価値提案を牽引している。サードプレイスは「逗子」にあるお気に入りの美容室。

「出張で月の半分は家にいないのに、満額の家賃を払い続けている」「週末は実家に帰るから、アパートは平日しか使わない」——働き方とともに暮らし方も多様化する今、こんな「もったいない」を感じている人は少なくないはず。
従来の不動産業界の常識では解決できないこの課題に、新しいソリューションで挑む企業があります。それが「株式会社Unito(以下、Unito)」。大東建託は2025年1月からUnitoに投資し、協業を進めています。最近ではGAFA勤務の方や外国人富裕層にも注目されているこの画期的なビジネスモデルについて、そして大東建託が協業を決めた理由について、Unitoの近藤さんと大田さん、大東建託の遠藤さんにお話を伺いました。
「大東建託のアセットを最大に活かせる領域だ」と直感で走り出した協業プロジェクト
大東建託株式会社 事業戦略部 イノベーションリーダー 遠藤勇紀(えんどう・ゆうき)遠藤さんがUnitoに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
Unitoとは具体的にどのように連携されているのでしょうか?
遠藤「1つめは、当社が扱う新築の収益物件での協業です。これまでは、土地を持つオーナー様に『賃貸住宅を建てていただき、当社が35年間借り上げて運用する』という形が基本でした。ただ、近年は建築費や金利が上がり、事業の難易度が上がっています。そこで、『Unito』さんと組み、賃貸以外にもホテルの提案ができることで、当社としてオーナー様に提案できる事業の幅が広がるよう、金融機関の調整を含めてチャレンジしています。
また、私たちが自社で開発しているホテル物件に、『Unito』さんがテナントオペレーターとして入るという形も想定しています。『Unito』さんは独自の運営システムを持っていて、省人化による高収益なモデルを確立しているので、オーナー様にとっての収益メリットが大きいんです」
近藤「このモデルの強みは、観光需要が高いときはホテルに、需要が落ちたときは賃貸に切り替えられる点にあります。オーナー様にとっては、長期にわたって安定した収益を見込める資産としての価値が高いんです」
画像提供:Unito協業に至るまでの経緯を取材されたインタビューで、遠藤さんが「近藤さんの考え方が好き」と話されていたのが印象的でした。具体的にはどんな点に共感されたんでしょうか?
遠藤「一番は、近藤さんの起業家としての姿勢ですね。マーケットを冷静に見て、自分たちはニッチを狙うと明言していた。当時はコロナ禍の金融緩和の影響もあって、スタートアップ業界はどこかバブル的な雰囲気でした。とにかく『大きなマーケットを語る』『壮大なビジョンを描く』『そうすれば資金が集まる』という空気感があったんです。そのなかで、戦略が現実的で数字の出し方にも信頼感があり、会社としても『この事業には投資すべきだ』と判断できたんです」
近藤「ありがとうございます。不動産って、AIみたいにすぐ進化する業界じゃなくて、もっと長期的な目線が必要なんですよね。なので、僕はこの事業を30年スパンで見ています。だから『ロマン8割』より『ソロバン8割』で動くようにしていますね。それが結果的に“堅実な戦略”に見えたのかもしれません」
「リレントのビジネスモデルだけじゃない」大東建託オープンイノベーション推進者に聞く、「Unito」を協業先として選んだ理由)
出資決定まで1カ月半という大企業としては異例のスピードだったと伺いましたが、そのスピード感の裏ではどんなエピソードがあったのですか?
遠藤「さまざまなスタートアップ企業とお会いする機会を作り始めてから、『協業シナジー』の解像度が上がってきたタイミングで近藤さんにお会いできた記憶があります。目指すシナジーと当社アセット活用のシンプルさ、事業を取り巻く市場トレンドの波からして、絶対にこの案件は実現できると感じましたし、社内承認をもらおうとその場で腹に決めて動いたのを覚えています。出資の締め切りまで2〜3週間しかない状況で、近藤さんに『絶対進めたいので1カ月ください』とお伝えしました。
このプロジェクトを進めるなかで、チームメンバーの皆さんには多大な支援をいただき、本当に感謝しています。皆さんの意見やアイデアが私を勇気づけ、より良い決断をするための力になりました。今振り返るとかなり無謀なチャレンジだったなと(笑)。この協業を成功させるために、今後も一丸となって進めていきたいと思っています」
近藤「正直、2023年12月10日頃にお会いして、年末年始を挟むとなると『今回のラウンドに間に合わないかも』と思っていました。というのも、資金を出してくれる会社を一定期間で集める締切のようなものがあり、そのタイミングに間に合わないと出資を受けられなくなる可能性があるんです。でも遠藤さんは、意思決定も行動も速くて。『いつの間にか決まってる……!』みたいな感じで。スタートアップだと社内調整がいらない分、スピード感がありますが、大企業でそれができるのは本当にすごい。『ぶっ飛んでるな』と思いました(笑)」
遠藤「ロジックの確からしさと、なぜ大東建託が取り組むのかを明確にし“勝てる”と判断すれば『じゃあやってみよう!』とすぐに背中を押してくれる挑戦の風土が大東建託にはあると感じていて、素晴らしい文化だなと思っています」
今回の協業を通じて、Unitoとしてはどのような意味や成果を感じていますか?
近藤「私たちのビジネスは、物件があって初めて成り立つモデルです。大東建託さんは日本一の賃貸住宅管理戸数を持つ企業。これ以上ないパートナーといえます。例えば、他の投資家からより大きな出資額を提示されたとしても、私たちは『一緒に事業を動かせるかどうか』、つまり“シナジーがあるかどうか”を最優先に考えました。単なる資金提供ではなく、現実の物件運用を通じて成果を一緒に生み出せるパートナーだからこそ、協業の意味があると判断しました」
大東建託株式会社は、週刊全国賃貸住宅新聞(2024年8月5日発刊号)で発表された、「2024年管理戸数ランキング」において、28年連続となる第1位を獲得しました。2024年7月末時点では、当社グループの居住用の管理戸数は1,270,049戸、事業用も含めると1,304,110戸となっています。
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協業スタートから現在までの成果と、今後の展望について教えていただけますか?
遠藤「現時点では、グループ全体で複数のプロジェクトがすでに動いています。開発物件としての手応えは大きく、今後もこの流れをさらに加速させていきたいと考えています」
近藤「さらに、今後に向けてホテルブランドの共同立ち上げ構想も進んでいます。既存のブランドとは別で、大東建託さんと一緒に新たなブランドをつくる予定です。フランチャイズのように、私たちがつくったブランドや運営の仕組みを、大東建託さんの物件で展開していくような形をイメージしています。これからすごく楽しみです!」

日本の“住まい選び”は、もっと自由になる
最後に、この事業が社会に与える影響について、どのようにお考えでしょうか?
遠藤「私たちの協業は、単なる新サービスの提供を超えて、不動産業界の新しいスタンダードを築こうとしています。当社の強みである管理戸数を武器に『需要』に合わせた『収益機会の最大化』を実現することができ、住む人にも貸す人にもメリットをもたらすこの画期的なモデルは、今後の不動産投資の新たな選択肢となると思っています」
近藤「日本の不動産は法律的に『長く住むこと』が前提になっていて、住まいの流動性がすごく低いんですよね。借地借家法があることで、簡単に家賃を調整したり、入れ替えを促したりできない。一方で、欧米では家具・家電付きの物件が多く、ライフスタイルに合わせて住み替えるのが当たり前。流動性が高い分、賃料も柔軟に調整できます。日本でもいずれ『2年契約で縛られる』『初期費用で50万円かかる』といった、これまで当たり前に受け入れていた不便さがなくなり、より自由に住まいを選べるようになると思います。
住む人にとってはライフスタイルに合わせて気軽に住み替えることができ、不動産オーナーにとってはよりリスクの少ない運用ができる。その文化が広がれば、人の動きが活発になって市場にも変化が起きるはずだと思っています。私たちが始めた革新が、社会全体に波及していくことを期待しています」






















「『Unito』さんの初期のCMで、若手会社員が『平日は都心暮らし、週末は実家で過ごす』っていう映像があって、それを見た瞬間に『これは来そうなビジネスモデルだな』と感じていました。その後、現職への転職が決まり、不動産業界の課題や新規事業を考えていく中で、この事業モデルを当社でも実現したいと感じるようになったという流れですね」