
PROFILE この記事の登場人物

鈴木 将粋 浜松販売所(ガスパル)
2021年4月、株式会社ガスパルに入社。浜松販売所にて勤務。

神永 紗緒里 保安管理部 次長(ガスパル)
2013年4月、株式会社ガスパルに入社。西東京販売所、戸塚販売所を経て、本社に異動。TQM課、人事企画課、採用課、広報課などを担当。2024年4月より現職。
昨今、ガスの価格高騰がたびたびニュースで取り上げられています。ロシアのウクライナ侵攻や円安の影響を受け、政府が補助金制度を導入するなど、ガスをめぐる状況は大きく変化しています。調理やお風呂、暖房など、ガスは私たちの日々の暮らしに欠かせない存在。しかし、その役割や安全対策について、意外と知らないことも多いのではないでしょうか?
そこで今回は、大東建託グループで、ガスの販売事業を展開する「ガスパル」の神永紗緒里さんと鈴木将粋さんに、ガスの基礎知識や最新の動向、安全に使うためのポイントなどを教えていただきました。
値上がりが気になる…… 私たちの生活を支える“ガスの今”
昨今のガス価格の上昇にはさまざまな要因が影響しています。まずは業界全体の動向と、私たちの生活にどのように影響しているのかを掘り下げてみましょう。
近年のガス価格の動向について教えていただけますか?

「家庭でのガス使用料はお湯が大半を占めているので、冬場は特にガス代が高くなりがちです。ガスコンロと比較すると、お風呂やシャワーのお湯は比べ物にならないほどガスを使いますが、そこを節約するのはなかなか難しいですよね。だから、湯船に蓋をする、給湯の温度設定を少し下げるといった、ちょっとした工夫がガス代節約のコツです」
昨今の電気・ガス料金の高騰に対し、政府は2025年1〜3月の使用分に対して、料金負担軽減のための支援策を実施しています。この支援策の特徴は、家庭や企業が特別な手続きを行う必要なく、電気・ガス会社からの請求時に自動的に割引が適用されること。具体的な値引き単価は以下の通りです(参考:電気・ガス料金支援(経済産業省 資源エネルギー庁))。
時期 | 電気 | ガス |
---|---|---|
2025年1・2月使用分 | 低圧2.5円/kWh 高圧1.3円/kWh |
10.0円/㎥ ※家庭及び年間契約量1,000万㎥未満の企業等が対象 |
2025年3月使用分 | 低圧2.5円/kWh 高圧1.3円/kWh |
5.0円/㎥ ※家庭及び年間契約量1,000万㎥未満の企業等が対象 |

ガスは電気・水道と並ぶ主要インフラの一つですが、他のエネルギーと比較した際の強みは何でしょうか?

「ガスは船などで輸入されて、トラックで各地域に運ばれます。そのため、大容量のエネルギーを移動させることができるというのが大きな強みです」

「LPガスは都市ガスより高出力なので、飲食店のような火力が求められる場でも役立ちます。他にも、コインランドリーなどに設置されている乾燥機にもLPガスが使用されているのですが、電気に比べてふわふわな仕上がりになりやすいように感じます。さらに、石油よりもガスのほうが、圧倒的にクリーンな状態で燃焼ができるんです」

ガスには「LPガス」と「都市ガス」の2種類がありますが、一体何が違うのでしょうか? LPガスはプロパンやブタンを主成分とする液化石油ガス(LPG)で、各家庭にボンベなどの容器を設置して、国土面積のほぼ全域に個別供給されるのが特長。都市ガスはメタンを主成分とする天然ガスで、地下のガス管を通じて国土面積のおよそ6%に集団供給されます。都市ガスは、ガス管を通じて直接届けられるためボンベを運ぶ手間がなく、物流コストを抑えられることから料金が比較的安くなります。ただし、郊外や山間部、離島などでは、ガス管の整備が難しいこともあり、個別供給式のLPガスが使用される地域も多いです。
突然の災害が発生! ガスは止まる? それとも使える?
災害時にガスがどの程度使えるかも気になるところ。ここからはガスの利便性や安全性について教えてもらいました。
災害が起きたとき、LPガスと都市ガスはどのくらい復旧に時間がかかるのでしょうか?

「大規模な災害でインフラが破壊されると、地下で広範囲につながっている水道や都市ガスは、つながっている全ての設備が復旧しないと供給を再開できません。そのため、長いときでは数か月かかることもあります。一方、LPガスは容器に充填すれば手軽に持ち運びができ、家庭や施設ごとに供給する設備であるため、数日から1週間程度で復旧するケースが多いです。最近の例でいうと、2023年7月に発生した福岡県の集中豪雨で、久留米市が浸水被害に遭いました。その際、当社はまず社員の安全を確認し、翌日には被害地域の約90戸の設備復旧作業に着手。結果として、2日間でガスの復旧が完了しました」

LPガスの手軽さが、災害時にも活かされるということですね。

「そうですね。ただ、2011年に発生した東日本大震災では津波の影響により多くのガスボンベが流されてしまい、危険な状況になりました。それまでは、地震などの揺れに備えてチェーンで固定するといった転倒防止措置はあったものの、水の力で流出してしまったんです。そのため、現在では収納庫に入れたり、チェーンを二重で掛けたりするなど、洪水が起きても流出しにくい措置が強化されています」



「また一般的に、住宅のガスメーターには安全装置が付いており、震度5相当以上の地震を感知すると自動でガスが止まります。さらに、当社の場合は、そのガスメーターに通信機能も備わっているため、停止と同時に販売所へ情報が届き、担当者が24時間体制で設備の損傷や配管の漏れ、ガスボンベの設置位置などが確認できるようになっています」

「ガス機器は年々改良されていますが、自動で止まる機能が強化され始めたのは昭和50年以降です。以前にあった、関東大震災の大きな火災の影響で『地震だ! 火を消せ!』という印象が強く残ってしまい、大地震が発生すると『ガスを止めなきゃ!』と焦る方もいらっしゃるかと思いますが、真っ先に心配する必要はありません。まずは落ち着いて、自分の身をしっかり守ってください」
「ガスの価格は需要によって変動しますが、特に気候や世界情勢の影響を大きく受けるのが特徴です。ここ数年はロシアによるウクライナ侵攻の影響もあり、世界的にガスの需要が急増し、価格高騰につながっています。特に日本はガスの原料をほぼ100%輸入に頼っているので、国際価格の変動がダイレクトに影響するんです」