
PROFILE この記事の登場人物


西尾 貴志 人事部 人材開発課 課長(大東建託)
2011年入社。支店で一般事務の仕事(業務課)を経て、2017年人事部に異動。人材開発課育成チームにて、能力開発や組織開発など、社員の育成と働きやすさ・働きがいに関連する業務全般を担う。自身も能力開発には貪欲で2024年には3年間通学したビジネススクールを自費で卒業しMBAを取得。現在は中学生・高校生の子供と一緒に英語を学習中。習得後はコーチングや心理学を学習する計画をしている。
人的資本経営が加速する今、社員一人ひとりの「学び」と「挑戦」が、企業の未来を左右すると言っても過言ではありません。大東建託では、2020年に始動した社内の新規事業創出プログラム「ミライノベーター」を、2025年春に「HIRAKU(ヒラク)」として刷新。これまで事業戦略部が運営を担ってきましたが、人事部とタッグを組み、より実践的な学びを支える仕組みへリニューアルしました。
なぜ今、「HIRAKU」なのか? 進化の背景と新たな挑戦について、ミライノベーターを支えてきたイノベーションリーダーの遠藤勇紀と、「HIRAKU」に参画する人事部 人材開発課 課長の西尾貴志が語ります。
応募は毎回100件以上。挑戦の風土は根付いた一方、“スキル不足” の課題に直面
2020〜2024年まで実施していたミライノベーターは、どんな制度だったのでしょうか?
大東建託株式会社 事業戦略部 イノベーションリーダー 遠藤 勇紀(えんどう・ゆうき)5年間で6回の実施。どのような成果があったのでしょうか?
遠藤「毎回100件以上の応募があり、多いときには400件を超えることもありました。現時点で約10%の社員が参加しており、社内の新規事業提案制度に対してここまで提案件数が多いのは、数ある大企業を見渡しても、なかなか見つからないのではないでしょうか。確実に挑戦を支える風土が醸成されていると実感していますね」
参加者にとっても多くのポジティブな影響があったようですね。
遠藤「はい。参加したことで転職を思いとどまったり、中途入社の方が新規事業の取り組みを知って当社に関心を持ったという声もいただきました。キャリアに対する意識や会社へのエンゲージメントが向上していると感じています」
一方で、課題点としてはどのようなことが見えてきたのでしょうか?
遠藤「ミライノベーターを通じて誕生した事業は多くあり、例えばペットとお住まいの賃貸住宅ユーザーに向けた保証事業は一定の成果を挙げています。一方、会社の次の柱となる事業の創出というミッションに対しては、まだ追いついていないのだと痛感しました。というのも、会社の本業と肩を並べる規模の事業を創るのは並大抵ではなく、それなりの投資も必要です。しかし、『この人になら大規模な事業投資を託してもいい』と会社が認めるだけの経験値やスキル、そして熱量を提案者が持ち合わせていなければ、意思決定には至りません。ここに、理想と現実のすさまじいギャップがあることに気づいたんです。会社の次の柱となる事業の創造を本気で目指すためには、私も含めた社員の新規事業スキルの底上げが不可欠。そう感じ、制度の刷新を考え始めました」
学びの楽しさを広め、社員一人ひとりの成長を支援するため「人事部」と連携
その結果、刷新後の「HIRAKU」では人事部とタッグを組むことにしたんですね。
西尾「遠藤さんから、『社員のスキルを底上げしたい、そのために共に何かできないか』とのご提案があり、そのビジョンに共感して協力がスタート。『HIRAKU』の誕生につながりました。実は私自身、以前に第5回ミライノベーターの応募者として参加していて、その時のメンターが遠藤さんでした。
そのご縁で人材育成について意見を交わすようになり、『新規事業を生み出すためのスキルアップ』という共通課題に行き着いたんです。もともと人事部には、『新規事業創出アカデミー』という能力開発の研修制度があったのですが、より裾野を広げた育成の必要性を感じていました。部門を超えて連携できれば、“学びの文化”を醸成できる、そんな想いがありましたね」
「ミライノベーター」の実績と課題を受けて刷新された大東建託グループの新制度「HIRAKU」。特長的なのは、制度設計の段階から事業戦略部と人事部が連携し、「挑戦を支える学び」や「実践に近い育成の場づくり」に重きを置いている点です。新規事業の創出そのものだけでなく、そのプロセスで得られる学びや経験の蓄積を“長期的な人的資本への投資”と捉えています。
大東建託株式会社 人事部 人材開発課 課長 西尾 貴志(にしお・たかし)その“学びの文化”とは、どんなイメージでしょうか?
西尾「全員が“受動的”ではなく、“能動的”に学べる状態をイメージしています。当社にも人材育成制度があり他社と比較しても充実していると考えていますが、社員自らが自主的に学ぶ意欲には伸び代があると感じます。会社から与えられた研修を受動的に受けるだけではなく、今の自分に必要なスキルは何かを自ら考え、それを習得するための行動を自発的に起こす。そしてそこでの学びが、現場での課題解決につながっていく。そんな成功事例の共有が社内で飛び交い、相互に刺激し合いながら成長できる組織になれたらうれしいですね」
令和5年の調査によると、創業に何らかの関心がある層は、起業家教育だけでなく、キャリア、金融、情報、知財・イノベーションに関する教育など、さまざまなジャンルに関心が高いことが明らかになっています。また、日本では創業への関心は若年層ほど高い傾向がある一方、『スキル不足』や『家族の理解不足』が課題に。大企業の社内ベンチャー制度は、こうした課題を乗り越えやすい環境を提供している点で注目されています。家族や周囲の評価が創業意識に大きく影響する一方、ソーシャルメディアやインターネット、社内コミュニティを通じた情報収集も増加。多様な学びや経験の機会が、社員の挑戦意欲を高める一因となっています。
より安心してチャレンジできる制度に進化。乗り越えた経験が個人と組織の価値を加速させる
「HIRAKU」の由来は、大東建託のパーパス「託すをつなぎ、未来をひらく。」だそうですね。具体的にどのような点が新しくなったのでしょうか?
遠藤「応募のハードルを下げる仕組みや、成果に結びつけやすい施策を盛り込みました。具体的に進化したポイントは、次の4つです。挑戦の希望を持ち続けていただける制度設計を目指して、引き続き毎年改善をしていこうと思っています」
新プログラム「HIRAKU」 進化した4つのポイント
- 充実した研修制度を提供し、社員が自由に学べる環境を整備
- 審査プロセスを短縮し、挑戦しやすい流れを構築
- 挑戦意欲が高まるよう、インセンティブを魅力的に設計
- 成果過程の評価を大切にし、社員の成長につながる仕組みを確立
挑戦者にぜひ伝えたい、「HIRAKU」のイチオシポイントを教えてください。
西尾「人事部主導で進めてきた新規事業創出アカデミーでは、新規事業開発に必要なスキルを約1年かけて学べます。実際に事業アイデアをまとめて提案するまでのアクションラーニング形式で、実践的な学びを得られることが大きな魅力です」
実際のセミナー資料。外部講師を招き、実践的な学びの場を提供している
遠藤「セミナーも有料級の豪華な内容をそろえており、過去には今をときめく有名起業家にご登壇いただいたりと、大いに盛り上がっています」
「HIRAKU」で目指す育成フェーズ。ミライノベーターの経験を活かし、スキルアップメニューを拡充したのがポイント
遠藤「個人的に最大の魅力だと感じるのは、一般的な企業と比べて、金銭的なリスクなしに新規事業開発にトライできること。スタートアップを起業する場合、成功すれば大きなリターンが得られますが、失敗すれば報酬がゼロになる可能性もあります。対して、大企業にいながらの新規事業創出は、給与や評価が保証されている。そういった点で、一歩を踏み出しやすい環境を提供できていると思います」

「HIRAKU」を通じて、どんな変化を期待していますか?
西尾「繰り返しになりますが、学びの文化の醸成を期待しています。そのためにも、『HIRAKU』に参加した社員のキャリアパスの可能性を具体的に示し、導けるよう、私たち運営チームも全力を尽くしていきます」

遠藤「数百億の事業は、数百億の予算がなければ現実的に生まれません。ですが、そうした規模にすぐには届かなくても、事業家としての成功体験を積む場所になることで、将来的に事業の責任者や立ち上げ者として活躍する未来が拓けてくると思っています。これも、『HIRAKU』の存在意義の一つですね。新規事業開発で幾多の困難を乗り越える経験は、必ずその人を大きく成長させると信じていますし、そのために制度を設計し、全力で運営しています」

最後に、挑戦を考えている人に向けて、どんな言葉をかけたいですか?
西尾「“人間は、イメージできることは実現できる”と言われています。まずは自分の可能性を信じて、一歩を踏み出してみてください。その勇気さえあれば、提案までの道程は運営側が用意しています。そして結果がどうであれ、必ず成長につながります。共に学び、共に成長しましょう!」
遠藤「ぜひ、『HIRAKU』というチャンスを活かしていただきたいです。自らの可能性を広げ、挑戦を楽しんでいただけたらと思います!」





















「『あなたも社長になれる!』をキャッチコピーに掲げた新規事業創出プログラムで、2017年に発表された当社グループの『新5ヵ年計画(当時)』の達成と、グループ全体の持続的成長の実現を目的にスタートしました。当社グループの従業員であれば誰でも応募でき、ワークショップや個別相談会といったサポートのほか、事業化のステージに応じたインセンティブも用意されていました」