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誰もが安心して働ける社会のために。「障がい者雇用」の制度や対象者、企業に求められる義務について解説

2025.05.01
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誰もが安心して働ける社会のために。「障がい者雇用」の制度や対象者、企業に求められる義務について解説

PROFILE

辻 庸介

辻 庸介 品川サービス部(兼)雇用推進室(大東コーポレートサービス)

精神保健福祉士。大学で心理学を専攻し、卒業後、障がい者の福祉作業所で勤務。そこで、障がい者が社会で活躍することの重要性を知る。企業で障がい者が活躍する現場を求め、2008年大東コーポレートサービスに入社。

近年、多様な働き方が注目される中で、「障がい者雇用(障害者雇用)」も大きなテーマの一つとなっています。企業の社会的責任(CSR)やダイバーシティ推進の観点から、障がい者の雇用促進に取り組む企業が増えているものの、「障がい者雇用って具体的にどう違うの?」「法的にはどんなふうに整備されているの?」といった疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。

この記事では、障がい者雇用の基本から、制度の対象者、一般雇用との違い、関連する法律と支援制度について詳しく解説します。

そもそも「障がい者雇用」とは?

障がい者雇用(障害者雇用)とは、心身に障がいのある人が働きやすいよう、企業の労働環境を整えたうえで雇用することを指します。

障がいのある人は、その状態・特性などにより、障がいのない人と同様の勤務形態や仕事内容で働くことが難しい場合があります。また、これまで障がいのある人は雇用の機会を得られても賃金が低かったり、不安定な雇用だったりと、長いあいだ「働きづらさ」に直面してきました。障がい者雇用は、そうした状況を改善し、誰もが働きやすい環境を整備するための制度です。

障がい者雇用は単なる「義務」や「CSR」だけにとどまりません。近年では、ダイバーシティ(多様性)の実現や、障がい者の能力を活かした組織力の向上といった積極的な意義も注目されています。実際に、業務を明確に分担したり、サポート体制を整えたりすることで、障がいのある人が戦力として活躍している事例も多くあります。つまり障がい者雇用は、「社会的な責任を果たすため」だけでなく、「企業の競争力を高めるための取り組み」としても捉えられており、その重要性はますます高まっているのです。

障がい者雇用の対象者は、身体・知的・精神に障がいがある人

障がい者雇用の対象となるのは、原則として、障害者手帳を持っている人です。障害者手帳には3種類あり、それぞれ条件を満たすことで交付されます。

障がいの種類 障がいの特徴 交付される障害者手帳
身体障がい者 視覚障害、聴覚障害、肢体不自由などの身体的な障がいを持つ人。全盲や弱視の人、補聴器を必要とする人、歩行補助器具を使用する人などが当てはまる。 身体障害者手帳
知的障がい者 同年齢の人に比べて、認知や言語などに関わる知的機能の発達に遅れがあり、日常生活や社会生活において支援が必要な人。 療育手帳
精神障がい者 統合失調症、うつ病、発達障害(自閉スペクトラム症、注意欠如多動症など)といった疾患や障がいがあり、日常生活やコミュニケーションに支障がある人。 精神障害者保健福祉手帳

障がい者雇用で働くとはどういうこと? 一般雇用とは何が違う?

障害者手帳を持っている人は、必ずしも障がい者雇用の求人に応募しなければいけないわけではありません。一般の求人と障がい者雇用の求人、どちらにも応募することができ、一般雇用の場合は自身が障がい者であることを開示するかどうかも本人の自由です。

障がい者雇用で働くことは、障がいがあることを企業にオープンにして働くということ。一般的に、障がい者雇用は一般雇用より求人が少なく、職種も限定される傾向にあります。しかし、障がいの状態や特性も含め、得意なことや難しいことを周囲に理解してもらうことで、体調や仕事内容の面で配慮を受けやすくなり、安定して仕事に取り組みやすくなるというメリットもあります。そのため、障がい者枠で就職した従業員の定着率は、一般枠で採用された場合より高いといわれています。

求人種類別にみた職場定着率の推移と構成割合 求人種類別にみた職場定着率の推移と構成割合(出典元:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター「障害者の就業状況等に関する調査研究

また、もう一つの選択肢として「特例子会社」での雇用があります。特例子会社とは、障がい者の雇用を促進するために設立された企業で、親会社とは別に独立した形で運営されながらも、障がいのある人が安心して働ける環境が整備されています。業務内容や職場体制が障がいのある人に配慮されている点が特徴で、企業グループ内での安定した雇用機会を提供する仕組みとして注目されています。

最大限に能力を発揮できるよう、企業のサポート体制も必須

最大限に能力を発揮できるよう、企業のサポート体制も必須

企業には従業員数に対して一定の割合で障がい者を雇用する義務があり、障がいのある人が最大限に能力を発揮できるよう、以下のような職場環境の整備や配慮が求められています。

雇用形態

従業員の集中力や疲労度合いを考慮し、短時間勤務や在宅勤務といった柔軟な働き方が推奨されています。

職場環境

バリアフリーのオフィス環境の整備、車いす対応のエレベーターやトイレの設置、視覚・聴覚支援ツールの導入など、障がいのある人が不便さを感じずに働けるような設備投資が求められています。また、業務指示やスケジュールの明確化、わかりやすいマニュアルの用意など、ソフト面での環境整備も重要です。

サポート体制

企業側が専門のジョブコーチを配置したり、定期的なカウンセリングを行ったりすることで、従業員のメンタルケアや業務適応をサポートすることが求められています。

【法律】障がい者雇用に関して、企業にはどんな義務がある?

【法律】障がい者雇用(障害者雇用)に関して、企業にはどんな義務がある?

障がい者雇用に関する法律は、以下のようなものがあります。企業はこれらの法律に基づき、障がい者が働きやすい環境を整え、社会的な役割を果たすことが求められています。

障害者雇用促進法(正式名称:障害者の雇用の促進等に関する法律)

障がいのある人の雇用安定化を図るため、企業に対して一定の割合以上の障がい者を雇用することを義務づける法律です。高度経済成長期の1960年、国際的な流れを受けて制定された「身体障害者雇用促進法」を前身としており、この法律で初めて事業主が雇用すべき障がい者の雇用率が定められました。1987年、身体障害者雇用促進法は現在の「障害者雇用促進法」として改正され、その後は身体に限らず知的・精神の障がい者も制度の対象となるなど、度重なる改正が行われてきました。

法定雇用率

障害者雇用促進法では、従業員が一定数以上の規模の事業主に対して、従業員に占める身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者の割合を「法定雇用率」以上にする義務を設けています。民間企業の法定雇用率は2.5%であり、2026年7月には2.7%に引き上げられる予定です。厚生労働省の「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業で働く障がい者の数は、令和6年時点でおよそ67万7,400人。21年連続で増加傾向にあるものの、実雇用率は2.41%で、未だ民間企業の法定雇用率を下回っています。

法定雇用率の推移
期間 民間企業 国・地方公共団体 都道府県などの教育委員会
2021年3月1日〜2024年3月31日 2.3% 2.6% 2.5%
2024年4月1日〜 2.5% 2.8% 2.7%
2026年7月〜 2.7% 3.0% 2.9%

障害者雇用納付金制度

法定雇用率を達成できていない企業には、「障害者雇用納付金」と呼ばれる納付金の支払いが課せられることがあります。
納付金の金額は不足1名に対して月額5万円で、徴収された納付金は法定雇用率を達成している企業に分配されます。

障害者差別解消法(正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)

障がい者に対する不当な差別を解消し、誰もが共に生きる社会を目指すことを目的として、2013年に制定された法律です。行政機関や民間企業に対して、障がいを理由とした不当な差別的取扱いの禁止と、個々の障がいの特性や状況に応じた合理的配慮の提供が法的義務として課せられています。具体的な例を挙げると、採用選考において障がいを理由に不採用とすることや、障がいのある従業員に対して適切な配慮をせずに業務を行わせることは、不当な差別的取扱いに該当する可能性があります。また、障がいのある人が円滑に社会参加できるよう、バリアフリー化、情報提供の工夫、意思疎通の支援などを実施することを、合理的配慮といいます。

障害者総合支援法(正式名称:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)

障がい者の日常生活および社会生活を総合的に支援することを目的とした法律です。この法律に基づき、障がいのある人が地域社会で自立した生活を送れるよう、さまざまな福祉サービスが提供されています。

【社会制度】障がい者雇用を支える社会の仕組みとは?

最後に、障がいのある人が働く際に活用できる代表的な支援機関・制度について見ていきましょう。

就労移行支援

就労移行支援は障害者総合支援法に基づく福祉サービスで、一般就労を目指す障がい者に対して、職業訓練やビジネスマナーの習得、職場体験の機会を提供します。支援期間は原則2年間で、個々の障がい特性や希望に応じた支援計画が組まれます。

ハローワークの就労支援

全国の公共職業安定所(ハローワーク)は、障がいのある人向けの専門窓口を設け、求職申込から職業相談、企業紹介、応募書類の作成支援、面接対策まで、幅広いサポートを提供しています。就業後も定着支援が行われ、希望すれば専門スタッフ(ジョブコーチ)によるフォローも受けられます。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が運営する機関で、障がいのある人の就職支援や職場定着を専門的に行っています。職業評価や職業準備支援、ジョブコーチ支援など、より専門的・実践的なサポートを受けられるのが特長です。

障害者就業・生活支援センター

障がいのある人が地域で安定して働き、生活していくために必要な支援を、就業面と生活面の両方から提供するのが「障害者就業・生活支援センター」。福祉と労働、医療、教育など複数の機関と連携しながら、日々の暮らしや就労に関する悩みをワンストップで支援します。継続的な相談や情報提供、家族へのサポートなども行われています。

【まとめ】障がいのある人を理解し、特性を活かした働き方に

障がい者雇用は、障がい者の社会参加と自立を支援する重要な仕組みです。企業や社会が障がい者の能力を活かせる環境を整えることで、多様な働き方が実現し、よりインクルーシブな社会の実現につながります。今後も、障がい者雇用の制度や支援策を活用しながら、すべての人が自分らしく働ける社会を目指していくことが重要です。

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