PROFILE この記事の登場人物
櫻井 正雄 商品開発部 課長(大東建託)
2020年よりスタートした企画型商品「シエルシリーズ」の第1号商品「シエルコート」と、当社初の長期優良賃貸住宅「シエルパティオ」の商品開発を担当。その他、約30商品の開発に携わる。商品開発歴22年。
永井 千尋 商品開発部 商品開発課(大東建託)
新卒として入社後に商品開発部へ配属される。大東建託の高付加価値商品シリーズ「シエルオーナー」「シエルガレージ」などの商品開発に携わる他、環境配慮型商品「ニューライズ」の意匠も担当。商品開発歴4年。
創業50周年を迎えた、大東建託の商品開発の歴史を振り返る連載シリーズ「温故知新 ~未来へのバトン~」。商品開発の最前線で戦い続ける社員とともに時代の変遷を辿りながら、これまでの大東建託のあゆみや、商品開発における想いをひも解いていきます。
第2回では、「2×4工法」による商品の歴史に注目。大東建託初の「2×4工法」による商品開発や、大ヒット商品となった「ニュークレストール24」の開発秘話などを聞いた前編に続き、後編となる今回は、現在の2×4工法商品を代表する「シエルシリーズ」の生みの親である、商品開発部課長の櫻井さんが登場。後輩社員の永井さんが話を聞きました。
(本メディアのリニューアルに伴い、2024年11月30日に編集しています)
バトン4 企画から始まった新たな挑戦「シエルシリーズ」
永井「櫻井さんは2000年から大東建託で働かれていますが、当時は賃貸効率の高い『基幹商品』の開発が主軸だったそうですね。櫻井さんが開発に携わる『シエルコート』のような、入居者さまの多様なライフスタイルに合わせ、さまざまな高付加価値を持った賃貸住宅を提案する『企画型商品』は、どのような流れで作り始めたのでしょうか?」
櫻井「過去にも“〇〇を超える賃貸”をコンセプトに、主力商品よりワンランク上の商品を作ったこともありました。この時は素材や広さなどの“住まい”視点で、生活の豊かさを表現しており、“ライフスタイル(暮らし)”視点でコンセプトを立てる今の企画型商品とは、ちょっと異なるものでした。
その後、暮らしの在り方の多様化によって、より細分化されたライフスタイルが生まれるようになり、賃貸住宅に求められることも“住まいのグレード”ではなく、“ライフスタイルにどれだけ寄り添えるか”に変化してきています。そこで、企画型商品に着手することによって、こうした市場の変化に合わせた柔軟な商品開発ができるようになりました」
「『シエルコート』は、企画型商品のテーマである“高付加価値”や“ライフスタイル”をキーワードに、“セキュリティ”に着目したのがきっかけです。一般的なアパート※1の場合、住居へは直接玄関から入るため、マンション※2にあるようなオートロック機能の付いた建物はまだ数少ないのが現状です。そこから、『マンションと同じような安心感を提供できるオートロック型の2階建てアパートが作れたら、これまでにはない新たな付加価値を持った賃貸住宅になるのではないか』と考えました」
「確かに、セキュリティ面はアパートとマンションとで違いが出ますね。デザインの面はどう考えたのでしょうか?」
「当社の商品開発は、近年の賃貸住宅ニーズの高まりに合わせ、モダンデザインが主体となっています。その一方で、『ニュークレストール24※3』以降続いてきた外国様式の邸宅風デザインも、『大東建託のアイデンティティとして継承してほしい』という声が社員から上がっていました。そうした背景から、このシエルコートでは、今の時代に合わせた新たな外国様式の外観デザインを追求していくことにしました」
「第1号商品は、“セキュリティ”と“外国様式の邸宅風デザイン”の2つを軸にイメージを膨らませていったんですね。参考にしたイメージはあったんですか?」
「2年前の海外視察で訪れた、各地の街並みや建築様式です。もちろん、『シエルコート』のような外観デザインの建物があったわけではないですが、特に印象に残ったフランス郊外の住宅が、『シエルコート』のアイデアのヒントになりました。また、さまざまな国を巡るなかで、国や文化の違いによって異なる様式や考え方に触れられたことが、これまでにない“セキュリティ”の着想につながりました」
「『ニュークレストール24』のように、シエルコートもその時のアイデアがもとになって誕生していたんですね。視察は、フランス郊外ではどんな場所を訪れたんですか?」
「海外視察は4つのグループに分かれ、それぞれの視察ルートで計11か国を約15日間で周りました。この視察を通して異文化を実際に“体験”することで、住まいの新しいヒントとなる新商品の“種”を発掘し、次世代の新商品開発に活かすことが目的です。戸建住宅や集合住宅を巡るほかにも、寺院などの歴史的建造物の見学や、先進の建材・資材や環境などの情報収集も行いました。この視察で得たアイデアから、シエルコートのほかにも『コッティ』『ビオーラ』『アシェイド』といった新商品開発、さらには『CLT※4工法』の開拓にもつながっています」
「海外視察は、当社の商品開発においてとても大きな役割を担っていたんですね。『シエルシリーズ』は、今後どのようなシリーズとして展開されていくのでしょうか?」
「『シエルシリーズ』は、時代のニーズに対する当社の考えを反映した新しい賃貸住宅の在り方を提案することで、入居者さまの多様な嗜好に合わせた市場競争力の高い商品を創り出すことを目指しています。“いままでにない賃貸住宅”をテーマに、今後も全商品をコンセプト設計から作り上げる企画型商品シリーズとして新たな挑戦を続けながら、さらなる商品ラインナップの拡充を図っていく予定です」
「櫻井さんが商品開発されたシエルシリーズの第1号商品『シエルコート』には、入居者共用のエントランスゲートや中庭、そしてその中庭を囲うようにコの字型に建物を配置するなど、これまでの大東建託にはない“新たな挑戦”がたくさん詰まっているのを感じます。企画するにあたっては、どこから着想を得たのでしょうか?」