
PROFILE この記事の登場人物
2025年4月13日から開催される大阪・関西万博では、会場内の20施設の設計を若手建築家20組が手がけています。建築家の桐圭佑さんが設計した「ポップアップステージ(東内)」は、仮設性を重視し、大東建託が提供するCLT材を使用するほか、人工の霧が生み出す「雲の屋根」によって、ステージの下に日陰をつくることをテーマにしています。未来の社会を提案する「万博」という場で、こうした作品を発表することの意義とは。着想に至るまでのプロセスや実現までの創意工夫、「未来の建築」のあり方について、桐さんに伺いました。
法解釈にもチャレンジ。万博という場を生かして今までにない提案を
ポップアップステージ(東内)には、大東建託が提供するCLT材を6面に使った箱型のキャビンも3つ設置されます。CLTキャビンは、倉庫や楽屋として使用され、会期後は大東建託の現場管理事務所として再利用される予定です。客席となるウッドデッキにも、大東建託が提供する杉材を使用。会期が終わったあとは、大東建託オリジナルのリサイクル材であるリサイクル・パーティクルボードの製造に使用し、住宅の壁・床・屋根の下地材として再利用することも検討しています。
ポップアップステージ(東内)とCLTキャビンCross Laminated Timberの略称で、ひき板を並べた後、繊維方向が直交(クロス)するように積層接着した木質系材料です。強度が高く、重さもコンクリートの約1/5。建築の構造材の他、土木用材として橋にも使用されています。大東建託は、独自に開発した金物とCLTとを組み合わせる「オリジナルCLT工法」によって、CLTを活用した中層建築物の建築を可能にしました。耐震性と耐火性だけでなく、断熱性や遮音性にも優れているのが、この工法ならではの大きな魅力です(引用:CLT工法 – 大東建託の賃貸住宅ブランドDK SELECT)。

桐「CLT材は、断熱性や耐火性もある優れものです。会場にはトラックで運び込まれ、外形の寸法はトラックに荷台の寸法から割り出しています。また、会期後にはトラックで運び出して、そのまま再利用できます。CLTは2016年に建築でも一般利用できるようになりましたが、これまでは製造できる加工業者や工場の少なさやコスト面などの課題があったように思います。ただ、認知は広がってきていて、今後はより広く使われる材料になるだろうと考えています」

桐さんは、藤本壮介建築設計事務所で担当した展示会「HOUSE VISION 2」で大東建託の木材を使用。また、大東建託が開発し、桐さんがデザインを担当した可変性家具「HiNGE(ヒンジ)」では、2022年度グッドデザイン賞を受賞するなど、大東建託とコラボレーションを続けてきました。また、再利用先が決まるメリットもあることから、大東建託のCLT材を使用することに決めたそうです。
桐「通常はRC基礎を打設するか鉄骨に緊結する必要がありますが、いわゆる基礎が必要になるとどうしても大掛かりになってしまい、仮設性も薄れてしまいます。でも、CLTキャビンの底面を基礎として扱うことができれば、そのまま地面に置くだけで使用することができます。このアイデアを実現するために、建築確認申請において、いくつかの申請機関とやり取りをしてきましたが、CLT板を構造として利用する以上に、CLTの底板を基礎として扱うことができる種別として見てもらうことは難しかった。そこで、CLTの箱の内側に柱梁構造をつくることで、当初の予定通り“地面に置くだけ”を実現しました」
建築を通じて“隔たり”をなくせば、社会を自分ごと化していくきっかけになるかもしれない

万博を通じて、建築の可能性を広げる桐さん。これからの建築には何が求められるのか、今考えていることを伺いました。
桐「世界では戦争や自然災害などが絶えません。建築業界だけでも、人手不足や資材の高騰、空き家問題など、手に負えないくらいたくさんの課題がある。もちろん、具体的にアクションを起こせる問題ばかりではありませんが、何をするにしても、身の回りのことを自分ごとと思えるかは、すごく重要なんじゃないかなと思うんです。
建築物の多くは、壁や天井や床をつくって空間を囲いとるものなので、どうしても街や自然との隔たりを生んでしまいます。なので、誰もが自分ごとと思える領域を外側に広げていけるように、建築を通じて、《建物と街》、《建物と自然》、《建物と使う人》の間にある“隔たり”をなくしていくことが大切なのかなと考えています」
桐さんがデザインした店舗併用住宅「バルコニーズ」の模型桐さんは、今回のポップスアップステージでも、隔たりをなくす工夫をしていると言います。
桐「ステージというのは、本来であれば、客席よりもステージの位置が高くなるようにつくるものですが、それだと《観る側と演ずる側》の間に隔たりが生まれてしまうんです。そうではなく、観る側、演ずる側が一体となってその場をつくってほしいと思いました。だから、今回の建築では、ステージを高くつくるのではなく、客席の方を凹ませることで、ステージへの視認性を確保しながら、周囲の地面とステージを地続きにしています。雲の屋根についても、雲が頭上にあって日陰をつくってくれるというのは、万国共通で平等なので、今回の雲の屋根を見た人たちが、自国や住んでいる地域に帰ってからも、世界はつながっていることを実感できるひとつのきっかけになってくれるとうれしいですね。
通常の建物についても、路面店のように人通りがあって、いつも街に開けて地続きになっていると、周辺環境を自分ごととして捉えられるようになるんじゃないかなと。この事務所も路面店なので、事務所が外側まで拡張されているような感覚で仕事をしています。実際に、散歩している方や子どもが立ち止まってガラス越しに模型などを眺めているので、中にはいってもらうこともあります(笑)。1歩先の道とどういう距離感で建物をつくるか、そういうちょっとした配慮を積み重ねていけば、ひょっとしたら、自分ごとの領域をもう少し外側に広げていけるのかなと思っています」


























