
PROFILE この記事の登場人物

植木 秀典 技術開発部 次長(大東建託)/取締役(大東カナダトレーディング)
2017年7月入社。2018年4月から技術開発部に所属し、支給資材の購買、物流を担当。当社構造材のメインとなるランバー材の調達会社「大東カナダトレーディング」設立にも尽力し、現在は2024年物流問題への当社対応策を検討中。
住宅価格が高騰している要因のひとつといわれている「ウッドショック」。そもそもどういった原因で起こったのか、数年たった今でも続いているのかどうかはこれからマイホームを購入する人にとっては気になる問題かと思います。
この記事では、ウッドショックが発生した原因や、日本の住宅業界への影響、今後の見通しについて解説していきます。
世界的な木材価格の高騰「ウッドショック」とは?

ウッドショックの「ウッド(wood)」は木材、ショック(shock)には打撃や衝撃といった意味があります。数年前から「ウッドショック」という言葉を耳にする機会が増えてきましたが、そもそもどういう状態なのでしょうか。
まずは、ウッドショックの定義や発生時期について見ていきましょう。
ウッドショックの定義と発生時期
ウッドショックとは、世界的な木材価格の高騰のことで、木材需要の増加など、さまざまな要因によって引き起こされています。日本では2021年よりウッドショックの影響が表面化してきましたが、実は1990年代と、2006年頃にもウッドショックが起こっており、今回は3度目となります。
1990年代は北米などで発生した天然林保護運動によって木材の供給が少なくなり、2006年にはインドネシアで伐採規制が強化されたことで同じく木材の供給が減少し、木材価格が高騰しました。木材の需要と供給のバランスは、ウッドショックに大きな影響を与えているのです。
1990年代、2006年に次いで3度目となるウッドショックは、供給量の減少以外にもさまざまな要因が重なり、木材価格の高騰につながっているとされています。その主な要因については、次のブロックで詳しく解説していきます。
3度目のウッドショックの原因
2021年3月頃から表面化した、3度目のウッドショックは、過去のウッドショックと違い、新型コロナウイルスの流行や世界情勢など、さまざまな要因が関係しているといわれています。3度目のウッドショックが起こった主な原因について、詳しく見ていきましょう。
原因01:新型コロナウイルスによる影響
新型コロナウイルスの影響で、外出規制や都市や港のロックダウンが起こり、経済活動の停滞を余儀なくされました。その結果、木材の供給不足につながり、ウッドショックを加速させる事態になったとされています。
また、木材を多く輸出している北米では、木材を輸入するために必要な労働力がコロナ禍によってストップしてしまい、供給不足を引き起こしたともいわれています。

原因02:アメリカの住宅需要の急増
3度目のウッドショックは、アメリカで住宅需要が急増したことも要因のひとつといわれています。急増の原因となったのは、コロナ禍によって自宅で過ごす時間が増えたことです。自宅をリフォームしたり、郊外に戸建てを建てたりする人が増え、木造の需要増加につながりました。この動きは、アメリカだけでなく世界中で同じ現象が起こったことから、世界的な木材供給不足に陥ったとされています。
日本の住宅メーカーでは、北米から輸出された木材を使用するケースが多いため、日本へ輸出できるだけの木材が十分に確保できず、ウッドショックを加速させる事態になってしまったようです。

その他の価格高騰要因
木材価格の高騰にはこの他にもいくつかの外部要因が考えられます。それぞれの詳細について見ていきましょう。
コンテナ不足と海上輸送の混乱
新型コロナウイルスの影響で、物流の停滞や労働力不足に陥り、コンテナの輸送が円滑に進まない事態が発生しました。また、オンラインで買い物をする消費者が増加していることから、流通が圧迫してコンテナ不足が発生し、その影響で木材の供給にも影響が出ることになったのです。
さらに、大型コンテナ船の座礁事故や、船舶の航路変更などの影響により、輸出コストが高騰する事態に。世界的なコンテナ不足は、2025年現在でも完全に解消されているわけではないため、今後も木材供給に影響が出ることが予想されます。
カナダ・ロシアからの供給減少
カナダは、国内産業保護の観点から、木材の輸出を制限しています。そのため、木材をカナダから輸入している住宅メーカーなどは、安定供給が難しいという課題があります。また、2022年にロシアは日本がウクライナ侵攻に対して制裁措置をとったため、日本を非友好国とし、木材の輸出を制限することになりました。
ロシアからの供給減少は、合板や丸太の価格の高騰につながり、ウッドショックに続いて「合板(ベニヤ)ショック」と呼ばれることに。日本の住宅業界では海外産の木材に頼っている状態が続いているため、海外からの木材供給が減少すると、日本の市場にも影響が出てしまうのです。
木材不足や住宅価格…… ウッドショックによる影響

ウッドショックは、特に木材を取り扱う住宅メーカーに大きな影響を与えています。具体的にどのような影響を及ぼしているのか、日本の建築業界と一般消費者それぞれへの影響について見ていきましょう。
日本の建築業界への影響
ウッドショックによって、日本でも木材の不足が起こり、建築工事の見送りや、着工自体を見送るケースも発生しました。ウッドショックのピークだった2021年には、国土交通省が中小工務店を対象にウッドショックの影響調査をした結果、「木材の供給遅延が発生している」と回答したメーカーは9割以上(2021年5月~7月時点)という結果になっています。
木材の高騰や供給不足に加えて、物流コストの増加などにより、資材の安定供給や調達にも影響が広がりました。2025年現在はピーク時よりも供給遅延は少なくなっているものの、木材価格に関しては不安定な状態が続いています。
日本の一般消費者への影響
ウッドショックで木材が高騰するということは、それに合わせて住宅価格も値上がりするということです。そのため、住宅購入を考えている一般消費者が、価格の高騰を理由に住宅購入やリフォームを見送るケースもあったといいます。また、契約時には木材の値上がりを理由に急な値上がりを告げられて困惑したり、資金計画の大幅な変更から消費者と住宅メーカーの間でトラブルが発生したりする事態も発生しました。
せっかく着工しても工事が遅れたり、引き渡し時期が大幅に遅れることもあったそうです。ウッドショックは消費者にも大きな影響を与え、住宅業界への信頼の低下を招きました。また、ウッドショックを機に、できるだけ国産材を利用するべきという声も高まっています。
ウッドショックにどんな対策をした? 大東建託の取り組み例

木造やRC造を得意とし、建築物の約9割に木材を使用する大東建託では、ウッドショックの対策として、「国産材」への対策と、「輸入材」への対策を行いました。それぞれの主な取り組み例について紹介します。
国産材への対策
ウッドショックでの木材高騰を受けて、大東建託は住友林業との業務提携に合意し、国産材の利活用拡大と持続可能な森林経営の実現を目指すことに。実は、日本は国土の7割以上が森林という森林大国でありながら、木材自給率は約40%と、国産材の利活用が進んでいないのです。
このような背景から、林業活性化に向けた取り組みを推進することで、国産材の利活用を拡大し、ウッドショックなどの外的要因に左右されない安定した木材の供給・調達を進めるべく、今回の業務提携が結ばれました。伐採と再植林で森林を若返らせることができれば、脱炭素社会の実現にも貢献します。
住友林業と大東建託は、2025年2月13日に両社の企業価値向上と脱炭素社会の実現に向け、森林から住宅・不動産まで国内外の幅広い事業分野で業務提携することに基本合意しました。提携の第一弾として、大東建託が住友林業子会社の株式会社木環の杜(こわのもり)に出資します。地域のステークホルダーとも協働し国産構造用製材の安定した供給・調達体制を構築し、国産材の利活用拡大と付加価値の最大化を図ります。
住友林業と大東建託 国産材利活用など広範な業務提携で基本合意また、2024年には大東建託のグループ会社である大東バイオエナジーが、国内の森林資源を有効活用してエネルギー(電気)に変える「朝来バイオマス発電所」の運転を開始するなど、循環型社会にも貢献しています。
輸入材への対策
大東建託が提供する賃貸住宅の9割以上が、木造2×4工法の建物で、木材のほとんどはカナダから輸入していました。しかし、カナダで発生した山火事や伐採制限により、2×4工法に適している木材の供給が減少し、さらにウッドショックによる供給不足が不安視されることに。そこで、大東建託はカナダに現地法人「大東カナダトレーディング株式会社」を設立し、資材の安定供給を図ることを発表しました。
新会社の事業は2024年1月より開始し、現地での安定的な木材調達と、新規取引先の開拓を進めています。2030年までに、持続可能な木材調達費100%を目指しており、木材を適正価格で安定的に調達できるよう取り組んでいます。
大東建託は、2023年9月に2×4用木材を安定調達するための新会社「大東カナダトレーディング株式会社を設立し、2024年1月15日より事業を開始しています。豊富な森林資源を持つカナダ、ブリティッシュコロンビア州の最大都市、バンクーバーに設立された新会社は、現地製材所との連携などを通じ、安定的かつ適正価格での木材調達をすることを目的としています。
カナダに2×4用木材安定調達のための現地法人を設立ウッドショックの今後の見通し
2021年のピーク時よりは木材価格や供給不足は落ち着きを見せているものの、まだまだ不安定な状況が続いているのも事実です。現在は、円安ドル高で輸入木材の価格が高止まりしている状態が続いており、国産材へと展開する住宅メーカーもあります。しかし、日本では林業従事者の減少や森林の管理不足といった課題があり、国産材の安定供給への道のりは遠いといわれています。
木材の高騰は、今後も高止まりが続いていくと予想されており、ウッドショックの影響は2025年以降も続いていくとされています。木材の価格がいつ下がるのか、それとも今後さらに価格が高騰するのか、住宅需要の動向を見ながら注視していく必要があるでしょう。これからマイホームの購入やリフォームなどを検討している方は、ハウスメーカーの担当者から情報収集したり相談したりしながら、資金計画を立てる必要があります。
【まとめ】今後も木材価格の推移に注視し、ウッドショックの影響を回避へ
木造住宅の購入を考えている方は、ウッドショックの影響による、工期の遅れや住宅価格の急な値上がりに注意が必要です。今までも何度もウッドショックの影響を受けてきた建築業界ですが、輸入材や国産材の確保と安定供給に向けて、すでに対策を講じているメーカーもあります。
今後は、住宅メーカーも消費者も、情報収集しながら木材価格の推移にも注視し、ウッドショックが与える影響に備えていくことが求められるでしょう。





























