
PROFILE この記事の登場人物

三木 理福 人事部
2017年入社。人事部人材開発課に所属し、主に新卒採用を担当。第一子の誕生後、2025年4月から1カ月半の育児休業を取得。育休取得をきっかけに、時間効率を意識した働き方を実践し、自身のキャリアにもプラスの影響があったと感じている。

仲村 友宏 流通設計部
2012年入社。これまで複数の支店で設計業務に従事。2025年6月、第二子から約10年ぶりとなる、念願の第三子の誕生にあたり、1カ月半の育児休業を取得。育児休業取得時は流通設計部で図面のチェック業務などを担当し、現在は実施設計課で設計業務を行う。第一子・第二子の時代にはなかった育休制度の進化と、自身の意識の変化を実感している。

纐纈 大地 ダイバーシティ推進部
2018年入社。入社後、支店での営業業務を経て、2022年よりダイバーシティ推進部に所属し、男性育休の推進を担当。「育児・介護応援手当」をはじめとする諸制度の設計に携わり、社員が気兼ねなく休める風土づくりを目指している。
世の男性の中には、「育休は取りたいけど、同僚に迷惑がかかるかも……」 という申し訳なさを感じて、一歩を踏み出せない人も多いのではないでしょうか。
そんな中大東建託では、育児や介護で休む本人だけでなく、その仕事をサポートする周囲の従業員同僚にも手当が出る「育児介護応援手当」を、2025年4月よりスタートしました。
今回は、この制度が始まってから実際に1カ月以上の育児休業を取得した男性社員2名と、制度の仕掛け人であるダイバーシティ推進部の纐纈(こうけつ)の3人で座談会を開催。「休んでみて、ぶっちゃけどうでした?」「実際、職場の雰囲気って変わりました?」など、 リアルな本音を語り合ってもらいました。
育休は「取れる」だけじゃ足りない? 当事者の声から見えた実情
最近、「男性育休」という言葉をよく耳にするようになりました。 「男女共同参画白書 令和7年版(内閣府)」によると、2023年度にはその取得率は30.1%(民間企業の場合)。数字だけ見れば「ずいぶん浸透してきた」と感じるかもしれません。しかし、その実態を見てみると、多くは数日間だけの取得にとどまっており、1カ月以上の長期で取得した男性は、全体の半数にも満たない41.9%※1というのが現実です。
大東建託では5日間の育休取得を義務化していますが、より長い期間の取得となると個々の事情や職場の環境に応じた調整が求められます。ですが、今回1カ月以上の育休を取得した仲村さんと三木さんは「5日間では、育休本来の目的は果たせない」と口を揃えます。
※1
人事部 人材開発課 三木 理福(みき・まさよし)——お二人が考える「理想的な育休期間」とは、どれくらいでしょうか?
仲村「私は今回1カ月半取得してみて、理想は1年間だと感じました。子どもが保育園に入って、妻が復職するまでの1年間を、夫婦で一緒に乗り越えるのが本来の姿ではないかと。もちろん育児はその後も続きますが、最初の一年を一緒に乗り切れば、その後は『今日はどちらが休む?』という形で協力し合える。少なくともそこまでは、しっかりサポートしたいという気持ちがあります」
流通設計部 仲村 友宏(なかむら・ともひろ)——とはいえ、世間では1カ月以上の長期取得者はまだ半数未満です。お二人が取得する上で、ためらいや不安はありませんでしたか?
三木「もちろん、ありました。一番は『生活・お金』に関する不安です。それに、業務面の不安も大きかったですね。1カ月半も職場を離れるのは初めてだったので、業務がうまく回るか、スムーズに復帰できるか不安でしたね。 ただ、そこは準備で乗り切れました。休む前に詳細なマニュアルを作って引き継いだところ、復帰時には担当者が『逆引き継ぎ書』として進捗をまとめてくれていて。おかげで驚くほどスムーズに復帰できました」
仲村「私も、三木さんと同じく引き継ぎが一番の不安でしたが、結果的にはスムーズに進み、杞憂に終わりました。 ただ、まさに今、その不安に直面しています。 10月から部署が異動になり、常にお客さまとのやり取りが発生する、引き継ぎが難しい業務になったんです。来年4月に妻が復職するタイミングでまた育休を取って家庭をサポートしたいとは思うのですが、今の業務状況を考えると、まさに引き継ぎの不安が原因でためらってしまいますね」
纐纈「職場の空気にもよりますが、例えば『こういう事情で、3時や4時に急に帰らなければいけない日もあります』と事前に上司に相談し、認識を共有しておけば、いざという時に帰れる環境は作れると思うんです。つまり、『休むかもしれない』という前提が本人と周囲で共有されていることが鍵なのではないでしょうか」
ダイバーシティ推進部 纐纈 大地(こうけつ・だいち) ——制度そのものも大事ですが、それ以上に「休んで当たり前」の空気に、周りの意識を変えていくことが重要なんですね。
纐纈「おっしゃる通り、男性育休の取りやすさは、職種や上司の考え方によって差があるのが実情です。業務の代替が難しく、かつ長期的なスケジュールが組まれているような職種などは、長期の休みを調整しづらいという声も聞きます。制度を整えるだけでなく、こうした現場ごとの事情に寄り添いながら、休みやすい風土をどう作っていくかが、私たちの大きな課題ですね」
「男性は休まないだろう」の空気を、制度の力でどう変える?

前のパートで見えてきた「風土(空気)づくり」という課題。大東建託は、こうした目に見えない「空気」の壁を、具体的な「制度」の力で乗り越えようとしています。

——2025年4月にスタートした「育児介護応援手当」はどのような制度なのでしょうか。
纐纈「この手当の最大の目的は、休む人を『みんなで応援しよう』という空気をつくることです。「周りに迷惑をかけるから休めない」という声が現場から非常に多く寄せられたため、休むご本人だけでなく、その業務をカバーする周りの従業員にも手当を支給する形にしました※2。この制度をきっかけに、部署内で『どうやって休業する人の仕事をサポートしようか』という前向きなコミュニケーションが生まれ、チーム全体で業務を調整・協力する文化が育てばと考えています」
三木「そうした制度があること自体が『会社は育休取得を応援してくれているんだ』というメッセージになり、休む側の心理的なハードルを下げてくれると感じました」
——手当は「支える側」に向けたものですが、一方で「休む本人」が上司に言い出しやすくなるような空気も大切ですよね。
纐纈「はい。そこも重要なポイントです。子どもが生まれる予定の社員には、上司との面談を必須にしています。その際、休業期間の希望や業務の引き継ぎについて話し合うための『プランニングシート』を活用してもらいます。直接、言葉にして伝えるのは心理的に難しいという人も、このシートをきっかけに上司と具体的に話を進めることができます」
実際に活用されている「子育てプランニングシート」。希望の取得日程や勤務時間の記入欄を設けることで、言い出しにくい項目も伝えやすくするのが狙い
三木「そのシート、私も書きました。面談では、シートの記入内容だけでなく、統括部長(役員)からの『ぜひ育休を取ってください』というビデオメッセージを上司と一緒に見るんです。役員クラスの人たちがこれだけ強く後押ししてくれているんだなと実感できるのは、安心につながると思いました」
——制度(手当)と、仕組み(シート)の両面でサポートされているんですね。とはいえ、先ほどのお話であったような「男性は休まないだろう」という空気そのものを変えていくのは、また別の難しさがありそうです。
纐纈「おっしゃる通り、根深い意識や文化を変えるのは、一朝一夕にはいきません。だからこそ、地道な取り組みが重要だと考えています。現在は、管理職向けの研修を継続して開催するほか、社内SNSで育休取得者の体験談を発信し、『自分も取れるかも』『こんな風に過ごしたんだ』と知ってもらうきっかけをつくっています。こうした発信を続けることで、『育休を取るのが当たり前』という空気を醸成していきたいです」

育休は「ブランク」ではなく「プラス」。取得者が語る、仕事と意識の変化

「休むと申し訳ない」という壁を、制度や仕組みで乗り越えようとする大東建託の取り組み。しかし、文化を根底から変えるには、もうひとつ大切な視点があります。
それは、「育休を経験したことが、その後のキャリアにとってもプラスになった」という、取得者自身のポジティブな実感です。育休は、キャリアの「ブランク」になってしまうのか。それとも、新たな視点をもたらす「プラス」になるのか。1ヶ月以上にわたる育休を経験したお二人に、仕事や意識にどのような変化があったのかを伺いました。

——育休を経験したことで、ご自身の仕事への向き合い方に変化はありましたか?
三木「はい、仕事の効率が格段に上がりました。育休前よりもメリハリをつけて働くようになり、残業時間がかなり減っています。やはり『早く家に帰って育児に参加したい』という強い動機があるからですね。また、私は新卒採用を担当しているのですが、学生に自身の育休体験を話すと、非常に反応が良いんです。若い世代がワークライフバランスを重視していることを肌で感じますし、自分の経験が採用活動という仕事に直接活きていると実感しています」
仲村「私も、仕事の進め方に対する意識が変わりました。育休中、ふと『日本のサラリーマンは時間を売っているが、欧米では成果を売っている』という言葉を思い出しまして。『まさに自分は時間を売ってきたな』と痛感したんです。育休をきっかけに、業務が属人化しないよう、誰がやっても同じ成果を出せる仕組みづくりが重要だと改めて感じました。これが実現できれば、誰もがもっと休みやすくなるはずです」
——仲村さんは第一子・第二子の頃は取得されず、今回が初めての長期育休だったそうですね。
仲村「ありきたりな言葉になってしまいますが、本当に、取得して良かったです。子どもと密な時間を過ごせたのはもちろん、精神的にもすごくリフレッシュできました。『育休制度があって良かった』と改めて思えましたし、『よし、この子が成人するまであと20年頑張るか』という気持ちにもなれた。会社にとっても、社員がそう思えることは悪いことではないのではないでしょうか」

——最後に、これから育休が「当たり前」の文化として根付いていくために、何が大切だと思われますか?
三木「何より、実際に育休を経験する社員が一人でも多く増えることだと思います。私自身、育休中は大変さもあるもののそれ以上に毎日が楽しく、『一緒に育てている』という実感が何よりの喜びでした。この経験は仕事への活力にもなります。迷っている人には『絶対に取った方がいい』と伝えたいです。こうしたポジティブな経験をする社員が増えることが、会社の文化を少しずつ変えていくのだと信じています」
仲村「こうした取り組みを地道に続けることだと思います。折れずに発信し続けてほしいです。かつて、私の上司が『自分は育休を取れなくて後悔している。だから、仲村は絶対に取った方がいい』と強く背中を押してくれました。それがどれだけ救いになったか分かりません。今度は、自分がそういう上司になる番だと思っています。『育休? いいね、どんどん取って』と、未来の後輩たちに自然に言える。そうやってバトンをつないでいくことが、企業としての文化をつくるのだと思います」
纐纈「お二人のような声が、本当に私たちの力になります。育児や介護に関わる期間は、長い人生の中で見れば、ほんの数回しかない、かけがえのない時間です。その瞬間に『仕事を理由に我慢する』という選択肢を、私たちはなくしたい。すぐに全員が1ヶ月休めるようになるのは、業務の都合上まだ難しいかもしれません。ですが、まずは『1ヶ月以上取りたい』と願う人が、誰に気兼ねすることなく、気持ちよく休める会社にする。その実現に向けて、これからも制度と風土の両面から、地道な取り組みを続けていきます」

この記事でも紹介した「育児介護応援手当」について、執行役員でHR統括部長の湯目由佳理が語ったインタビュー記事が「PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)」で公開中です。ぜひ併せてお読みください。
「育業推進を通じて強い組織づくりへ」大東建託が打つさらなる企業成長への一手



































「当社の制度では最大3年間まで取得できるので、その期間まるまる取れるのが一番だとは思います。それが難しいとしても、少なくとも1〜3カ月は欲しいですね。というのも、私自身が1カ月半取得した経験から強く感じたことですが、最初の数日間なんて、妻から言われたことをこなすだけであっという間に終わってしまいます。育児の当事者として主体的に関わるためには、少なくとも1カ月はないと難しいというのが実感ですね」